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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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薬品管理センター攻防戦 1

 俺達のいる教育省ビルにも届くほどの爆音が窓ガラスを振動し、その振動の音に奈美とイリーナが飛びついて覗き込む。


「この音の方角から考えて第七島の北東にある政府が管理している薬品管理センターですね」

「そこって?」

「政府が制限している危険な薬品が管理されています。勿論呪術に使われるような薬品も。かの外相もそこで薬品の管理と研究をおこなっていました」


 となると襲撃したのは間違いなく分派の連中の可能性が非常に高いだろう。

 こうなると俺達が直接動いた方が良いし、これ以上ここにとどまる事は本流に危険が及び可能性が高い。


「俺達はその薬品管理センターに行ってみます。あなたは避難勧告をお願いします。ここから先は俺達の仕事ですから」

「私達は避難誘導を優先して行いますが、出来る事なら皆さんも非難の方を優先していただけませんか?あそこには本流のメンバーも潜入しております」


 俺は黙って頷くとドアを両手で開けて出ていった。



 第七島はあっという間に避難する学生や教師などの人々で溢れかえり、俺達はその流れに逆らうように問題の渦中へと走っていく。

 正直に言えばここで走っていては間に合わないだろう。

 どこかで乗り物を借りる必要性があるだろうと考えていた所で一台の車が逃げようとひっしになっていたバイクを突き飛ばした。

 ジュリが風の障壁を展開しバイクの運転手を受け止める。


「大丈夫ですか?バイクや車での移動は危険です!なるべく歩いて逃げてください」

「すみません。この車をお借りしてもよろしいでしょうか?俺達はこの先にある薬品研究センターに用事がありまして」

「しかし、あそこは……」

「俺達は国から依頼を受けている者です。もし破損させてしまった場合は……国に請求してください」


 そう言ってバイクが衝突したことで前方部分がへこんだ車に全員が乗り込み、俺はアクセルを前回まで踏み込んで阿鼻叫喚な道路を走り出していった。


「ねえお兄ちゃん車を運転した事ってあるの?」

「無い」


 断言するがそんな不良生徒と一緒にしてほしくは無い。

 曲がりくねった道が無いだけまだ走りやすいように見え、同時に真正面から突っ込んで来ようとする車やバイクを避けて前に進んで行く。


「よくそんな器用に避けることが出来るね。ソラ君って運転が得意だっけ?」

「前に酷い運転を見ているからな。あれを反面教師にすれば大抵の運転は出来そうな気がするよ」


 レクター辺りが口を抑えながら父さんの酷い運転を思い出していた。

 俺も少々辛いものがあるし、吐き気を抑えながら真直ぐ突っ込んでくる車を左側によけながらガードレールに車体側面を擦りつけながら強引に曲がる。


「きゃあ!お兄ちゃん!もう少し安全運転できないの」

「相手の車に言え!真正面から突っ込んできたらああして回避するしかないだろ」


 俺が運転している車は今頃左側面に擦れた傷痕が残っているに違いない。

 しかし、そんなことを一々気にしている場面ではない、最悪国や教育機関が何とかしてくれるはずだ。

 俺達の目の前、視界の中に微かに薬品管理センターが見えてきた。

 島が変な形になっているせいもあるのだろうが、薬品管理センターと思われる場所からは大規模な火災と連続で爆発する音が聞こえてくる。


「ねえ!すごい爆音がしているよ!間に合う?」

「間に合わせる。全員シッカリ掴まっていろよ。このまま一気にスピードを出そうとする」


 更にスピードを出していくと車内から大きな悲鳴が響き、俺はそんな声を聞き流しながら車体を更に大きくすり減らすような音を鳴らしながら強引なカーブを曲がり始める。

 俺はサイドミラー越しにこの車とほぼ同じ速度で追いかけてくる車を見つけ出した。


「誰でもいいから後方から追いかけてくる車をよく見ていてくれないか?」


 レクターとケビンが窓ガラス越しに後方の車を覗き込む、するとレクターは後方の車を見ると同時に大きな声を上げた。


「ボウガン!?それに………あの時の奇妙な模様の男」

「バウアーだったか?あのジャン・バウワーの名前に似ている男か?確かバウアーとかいう名前の」


 俺の距離からだと良くは見えず、辛うじて今ボウガンの横顔が見えたぐらいだ。

 ボウガンは助手席から身を乗り出し、右腕に付けた魔導シューターを俺達の車体へと向ける。

 レクターの「避けて!」という声に俺は素早く車体を左側に回避するのだが、俺の前方に真っ赤な模様が描かれる。

 模様が発行していき、大きな熱量が竜巻のような勢いで襲い掛かってくる。


 ジュリが前方に氷結させた風を叩きつける事で炎のトルネードがタダの強風へと変貌する。

 後方から連続で地面に今度はオレンジの模様が叩きつけられる。


「爆弾!」


 レクターの言う言葉は正しく、アスファルトの地面がオレンジ色の強烈な発光現象を放ちながら今にも爆発しそうになっている。

 俺は車体を浮かせるためアスファルトでできた地面にある車線を区切っているガードレールに車体をぶつける。

 ガードレールにジュリは魔導機を使って足元に風の破裂魔導を展開させ車体をガードレールを上手く活用し反対車線へと逃げ出す。

 反対車線へと逃げ出すことに成功し、反対車線では合計四回の爆発で飛んできた破片が俺達の窓ガラスにぶつかる。


「誰でもいいから反撃してくれ」

「奈美ちゃんお願いできる?イリーナちゃんも!私は防衛に集中するから、レクター君とケビンさんは近距離でしか戦えないから」

「え?でも戦闘手段は私の魔導機には戦闘手段は無いよ」

「入れておいた。ただし無理をするような戦闘手段は禁止だ。イリーナは歌声の衝撃波を定期的に浴びせてくれ。攻撃の感覚ごとに奈美が攻撃を与えてくれ」


 俺は後方か浴びせられる電撃の攻撃を左右に大きく避け、ジュリが後方からやってくる電撃の攻撃を同じ電撃属性の衝撃で受け止める。


「で、出来ないよ!私戦えないよ!無理………だよ」

「出来るよ。私も一緒に戦う」


 俺が声を掛ける前にイリーナが既に声を掛けていた。

 イリーナは優しくジュリの右手を握りしめ優しく微笑みかける。


「イリーナ………やって見るね」


 イリーナが窓をゆっくり開けて大きく口を開け、肺に空気を一杯になるまで吸い込み窓の外へと大きな歌声を向ける。

 歌声は衝撃波のような勢いで後方の車を襲い掛かるが、車は素早く窓ガラスを閉じて歌声を回避して一旦距離を取り始める。


「奈美。風邪の弾丸で行け。牽制さえできればいい」


 奈美は黙って頷き魔導機を操作し始め、俺が運転する車の後方に風の弾丸が三発出現して放たれる。のだが、風の弾丸の圧縮具合が少し弱い。

 実際着弾した瞬間に風の弾丸は特に周囲への影響を与えないまま霧散する。


 奈美の表示に暗い影が落とす。

 自信を無くしているのだろう。

 しかし、敵はイリーナに歌声を放つ時間を与えないまま、運転席に座っているバウアーがアスファルトの車道に何か缶のような物が落ちていく。


 俺はサイドミラーから覗き込むのだが、雷がオオカミのような形になり素早く俺の来る前へと追いかけていく。


「ジュリ!あれを側面に付けたくない!何か嫌な予感がする」


 ジュリが雷の壁を作り出し、壁を地面にたたきつけるようにオオカミをサンドイッチに変えようとするが、オオカミはジュリからの攻撃を紙一重で横への大きな跳躍で回避しそのまま一気に距離を詰めてくる。


「無理………だよ。私には出来ないよ………」


 イリーナもどうやって奈美を元気づけたらいいのか分からずにおり、イリーナは口を紡いでいる。


「出来る。出来るというイメージが重要なんだ。奈美は心の中で出来ないと思い込んでいるから出来ないんだ」


 俺達の目の前に薬品管理センターが見えてきた。


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