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ロンドン・ダウン 8

 俺は師匠の部屋から出て行って自分の自室へと向かっていくと、少しだけ開いているドアの隙間から光が漏れており、俺は覗くのもおかしいと思いそのまま通り過ぎようとした所で隙間から声が漏れ出てくる。

 ダルサロッサとブライトとアカシの声が微かに聞こえてきて、俺はその声を気にしないようにして歩いて行くと、「良いぞ! 良いぞ!」といダルサロッサの声が聞こえてきた。

 どうやら撮影会をしているようで邪魔しては悪いと思って俺はそのまま黙って通り過ぎたところで、中からエアロードの「その派手な衣装はいるのか?」と訪ねる声がハッキリと俺の耳元に届いたところで歩く足を一旦止めた。

 俺の興味が物凄い所で引き寄せられ、後ろをそっと振り返ってからジッと隙間を見つめると、その隙間から更にブライトの照れているような声がハッキリと届く。


「こんな…派手なの無理だよ…」

「僕は余裕でいけるけど。ブライトは気にしすぎだよ」

「その通りだ! 水着という着物よりマシなものだ」


 一体君たちはどんな衣装で撮影をしているのかと思ったが、元々露出度も何も裸で行動している奴らなので俺は気にしないようにして再び足を踏み出そうとしたとき気になる一言を耳にした。


「無理だよ……何でそんな衣装を持って居るの? それって…バニーガールって言うんでしょ?」


 何でそんな衣装が飛空挺に乗っているのかと疑問になって中々足が先に進まないのだが、そしてダルサロッサは一体写真家として何処に向かっているのだろうか?

 いっそのこと覗くか、それとも自制心をフルに稼働させてここは通り過ぎるかと葛藤が俺の脳内で繰り広げられ、一通り悩んでからトドメとなる一言を聞いて俺は振り返った。


「やだよ……止めてよ…グス」


 俺は限界だった。

 スタスタと来た道を少し戻り部屋のドアを開けて「その辺にしてやれ」と言うと、ブライトは俺を発見して涙目になって俺に突撃をかましそのまま腰回りに隠れる。

 ダルサロッサが舌打ちをして残念そうな顔をし、アカシはバニーガールの衣装を着たままノリノリで撮影に臨んでおり、エアロードもその隣で同じ衣装で付き合っている。

 なんだかんだ言って君はノリが良いですねエアロード。


「どうせ竜は裸みたいなものなのだし気にしなくても良いだろう。さあ…これを着て…」

「じゃあ今度から僕はキチンと服を着て過す! そんな派手そうな服絶対に着ないで済むように着衣という事を覚えるもん!」

「ブライトも撮ろうよ。面白いよ!」

「面白くない! 僕は恥ずかしいから嫌だ! ソラ…行こう」


 俺に向かって涙目を向けつつブライトはこの部屋からの退出を望んでいるようで、俺はそんな顔をされたら否定することは出来ない。

 俺は他の面々に「残りでやりな」と言って部屋から出て行くと、部屋の中から「じゃあヒーリングベルでも誘うか」と恐ろしい事を言い出した。

 あれが参加するとは思えないし、最悪ここに居る全員が説教されるだけだと思ったがそれがマイナスになるとは思えないので俺は無視する事にする。


「酷い目に遭ったよ。最初は簡単な撮影だったのに…するとその後「今度は体を鎧に替えてみてくれ」とか言い出して、それを熟すと「メイド服を」とか「女王様衣装を」とか言い出して…」


 本当に何処に向かっているんだ?

 俺はこの際だから気にしないことにしておき、俺は自分の部屋まで戻る為に部屋のドアに手を掛けるのだが、その瞬間ドアが勢いよく開いて中からアクアが飛び出てくる。

 アクアは俺の手を引っ張って中へと招き入れるのだが、俺はアクアと部屋を別にしていたと記憶していた。

 また勝手に部屋の鍵を開けたのか。


「パパ! あれ? ブライトお兄ちゃんはどうしたの?」


 俺はベットに腰を落としながらザッとアクアに説明すると、アクアはあっという間に着せ替えに興味を抱いたのかブライトを着せ替え人形代わりにしようとした。

 着せ替えに恐怖を覚えたのか、「嫌だ」の一点張りで俺は流石に可哀想になり「衣装もないからまた今度」と言って一旦落ち着かせた。


「パパはドイツって言う所に行くんだよね? アクアも行きたい!」

「そりゃあ俺だって連れて行きたいけど、直ぐ戦闘になるかもしれないし…」

「パパの邪魔しない! 連れて行って! お願い!」


 アクアが俺の服の裾をしっかり掴んで離さずそのまま引っ張ってだだをこね始め、俺は腕を組んで悩んでしまう。

 正直これ以上危険な事に巻き込みたくないが、それを言い出したらそもそもこの飛空挺が安全であるとも言い切れない。

 しかし、連れて行くよりはマシだろうし、と言って説得してもアクアは納得しないし、後になって付いてきていると分かったらそっちの方が大変だ。

 それに俺達の戦いにアクアを連れていっても、今度ばかりはあまり役に立たないような気がする。


「失礼します。ここにアクアちゃんはいますか?」

「いるよ。アクアお客さんだぞ」


 俺はラッキーという気持ちで入ってきたアンヌとケビンの方へと一旦アクアの意識を向けさせ、アクアは少し抱け不貞腐れながらもそっちの方をジッと見つめる。


「実はですね。アクアちゃんに協力して欲しい事があるんです」

「? アクアに?」

「ええ。アンヌとも今話したのですが、アクア。貴方に『玄武』捜索を手伝って欲しいのです。と言うのも、玄武は特殊な能力故に隠れるのが上手いらしく、捜索は困難だろうと、私たちだけで敵勢力を相手にして、その上捜索は厳しいと」

「はい。本来ならレインちゃんに頼むのが効率が良いとは分かっているのですが、あの状態のレインちゃんを連れ回す訳にも行かないですし…竜の皆さんも捜索となると話が別だと仰って」


 それもそうだろう。

 隠れる事と見つけると言うことは別の才能だし、レインちゃんの『力の流れが見える能力』は確かに隠れている存在を見つけるのにはうってつけだろうが、今のレインちゃんにそれを強要する事は無理だ。

 同じ能力を持っているわけではないが、電子機器の申し子と言ってもいいレインは周囲の電子機器へのクラッキングなどが出来るし、捜索ならアクアにでも十分手伝える。


「分かった。アクア。付いてきてもいい…」


 俺の言葉に少し抱け綻ぶアクアだが、その後に俺が続けた言葉に唸る。


「俺に付いていくか、アンヌ達に付いていって役に立つのかはお前が決めるんだ。どっちが良い?」


 真剣な素振りでそっと見つめてみて、アクアは俯きながら足をブラブラさせて考えていた。

 ここで我儘を言うことは簡単だし、それを俺が諭すのも多分出来る。

 だが、ここで考えることを止めさせたらアクアは一生俺に考えを委ねるような気がした。

 どっちが正しくて、どっちが結果的に良いのかをアクアには判断出来るはずなのだ。


 誰かの役に立てる人間になって欲しいし、それこそが俺が自らの子として迎え入れたアクアに臨んでいるたった一つの『将来』なのだから。

 十分悩んで決めたアクアの結論。


「アクアはアンヌ達に付いていく! 手伝いする!」

「アクアが例え俺達と離れていても、俺達はアクアの側にいる。その証拠として…」


 俺は宝石のような綺麗な石で作られたペンダントを首から掛けさせる。

 その時、俺はその石に俺自身の『ラウンズ』の出入り口と『異能の盾』を発動出来るようにしておいた。

 何か異変が起きても、アクアだけならこの石に入っている異能が守ってくれるだろう。

 だが、所詮は普通の石今回限りの切り札のようなもので、そんなに回数を守ってはくれないだろうが、俺がいない間は守ってくれるはずだ。


「これで俺がお前を守る。絶対だ! いつでも俺とジュリがお前の側にいる」


 アクアは良い笑顔を俺に向けてくれた。


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