表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
アメリカン・シービルウォー《下》
611/1088

誇りと夢 1

 ダルサロッサの証言ではやはりシールドは全方位に張られているようで、推測では地下にも張り巡らされているだろうと言われ、俺は確認の為にシールドの元へと移動していき、まるで境目のように隔てられているシールドにそっと触れる。

 俺の異能殺しが微かに反応するのだが、それ以上の速度で回復していくためあまり意味は無い。

 そっと手を離して来た道を戻ろうと歩いて行くのだが、そんな時俺は神経を研ぎ澄ませていたのが幸いしたのか、何かが引きずる音を遠くから聞いてしまった。

 引きずるというよりは何かを抉りながら移動している音、俺は耳を研ぎ澄ませていると抉っている音はかなり大きく重たい物であると推測できる。

 これを確認するべきかと少しだけ悩むのだが、移動している距離なんかを考えると避難場所に向かっているとは思えない。

 さてさて…どうした物だろうか。


 無視しても良さそうだし、ここで体力を消耗したくない。

 シールド発生装置を破壊するのにさほど時間が掛かるとは思えないので黙って上に戻ってノックスの元へと向かう準備でもして居た方が良いような気がする。

 酷く悩むが急遽進路を変更して避難場所へと向かう可能性も否定しきれない。


「仕方が無い…様子を見てみるか…」


 ため息を吐き出してそっちの方向へと歩き出していくと、アッという間に対象が移動している場所まで辿り着いた。

 すると覆面を付けた血のベットリと付いているホラー演出マックスの超ガタイの良い大男、もう人ぐらいだったら簡単に真っ二つに出来そうな大きな両刃斧。

 正直近付きたくは無いのだが、一帯何処のホラー世界からいらしたのかとお聞きしたい。

 襲わないのならそれで構わないのだが、一体この歩くホラー世界は何故徘徊して居るのか。

 体を出してみて様子を見ようと大男の前に姿を現し、少し様子を見るが俺をガン無視して歩き去って行く。


 どうしようと悩んでいると、大男はようやく俺の方をジッと見つめて歩き出す。

 あの大斧を振り下ろされたら反撃しようと警戒心を高めていると、大男は俺の顔を覗き込んでジーっと見つめてくる。

 正直に言おう。

 滅茶苦茶怖いです。

 しかしこいつ…瞳だけは滅茶苦茶綺麗だな。


 済んだ青色の瞳をしており、俺をジッと見つめているその姿を俺に見せつけ大男はそのままの状態で歩き去って行った。

 何でこの場所を徘徊して居たのかと思って俺は大男が歩いていた先へと向かって移動する。

 階段が下へと続いておりその階段を音を立てないように降りていくと、そこにあったのは古くさい汚い部屋だった。


「なんだここ……かなり古いな」


 そう思って足を踏み込むのだが、すると足下に何かの新聞紙が部屋中に貼られていて、その記事もよく見ると皆同じ事件の記事だった。

 英語がちゃんと読めるわけではないので俺はスマフォを取り出し、翻訳アプリを通じて内容をしっかり確認しているとどうやら一人の少女が行方不明になったという記事で、内容を考えると十年以上前の話だった。


「十年前…あの大男はその父親? 今でも娘を…いいやだったら斧を持って歩かないだろう」


 俺は記事をもっと見ていると俺は犯人に心当たりがあった。

 恐らく財団が実験体のために確保した後殺したのだろう。

 彼が地下を徘徊して居るのも恐らくは財団を滅ぼそうとしての行動で、未だに財団が滅ぼされたという事に気がついていない。

 それにここは攻撃が直撃した場所のはず、大分下にあるのでダメージは無かったのだろう。


 俺はいても経ってもいられなくなり走り出して大男を追いかけ、なんとか追いつくと大男は俺を完全に無視して歩こうとするので前に移動して立ち塞がる。


「財団なら潰れたよ。だから…もう復讐なんて考えなくて良いんだよ…もう背負わなくても良いんだよ…」


 大男は覆面越しに涙を流して居るのがハッキリとわかり、大斧を落として俺に近付いてくる。

 念の為にと翻訳アプリを使って会話をしてみたので伝わっていると思う。


「ほ、本当か? もう…私は…」


 翻訳アプリが彼の英語をキチンと翻訳してくれる。

 俺は黙って頷きその証拠である財団跡地が廃墟になっている写真をキチンと見せ、財団跡地で回収したデータを見せた上げた。

 するとようやく現実として受け入れることが出来、涙を流してその場で蹲った。



 俺は大男の名前を聞き『ジャック』と言う名前の大男に避難場所まで案内すると、避難場所に入ると同時に先ほど助けた少女が駆け寄ってきた。

 どうやらここで少し過して精神的に落ち着いたらしい。

 最初こそジャックに驚いた素振りを見せたが、ジャックの優しさ(怖いので覆面は回収した)に触れていく内に受け入れられてきたのか、ジャックと遊び始めた。

 ジャック自身も娘のように彼女を大切に思うようになり、恐らくは死んだ娘と重なる物を感じて居たに違いない。


 するとダルサロッサがカメラをぶら下げて姿を現し俺の隣に留まって二人の写真を撮る。


「あの大男は誰だ?」

「財団という組織に不幸にされた人…かな。でもあの二人なら大丈夫そうだな。それよりシールドはやはり強引な突破は無理そうだな」

「フム…エネルギーを供給しているからな、やはり発生装置そのものを完全に破壊しないと効果は無いだろう」

「やっぱりそうなるよな…しかし避難場所が狭くなってきたか? やはり少し無理があったか?」

「まだ大丈夫だろう。割とテントの中は空いているからまだ大丈夫そうだぞ。それより…あれをなんとかしてくれ」


 ダルサロッサが指さす場所に顔を向けると、レクターが子供相手に遊んでおり、俺はため息を吐き出しながらレクターへと近付いていく。

 握りこぶしを造りながらレクターの頭を殴りつけて子供達から引き離す。


「お前はここで遊んでいる場合か? さっさと避難を続けろよ」

「この辺りは大丈夫だもん! 俺はやるべき事はやったもん」

「だったら別の場所に移動して次の避難誘導しろって…やるべき事は多いだろ」

「ええ!? チマチマして俺向きじゃ無い…」


 また本末転倒な事を言い始める。

 だったら戦場へと向かって突撃して敵の数を減らして来いよ…それにだからって子供達と遊び始めるな。

 別に子供達を喜ばせるのは良いとして、周りは避難しに来ているのであった遊びに来ているわけじゃ無い。


「中には子供達が騒ぐと迷惑する人だって居るだろ? 今夜中だぞ…皆こんな怖い想いをしたことが中々無いから寝れない人だって居るのに」


 俺の言葉にレクターは周囲を見回すと、暖炉代わりにしている焚き木の周りで憂鬱げにしている人達。

 精神的にはあまり良い状態とは言いがたい。

 正直に言えばこの状況が続けば間違い無く暴動にだってなりかねない危うさがある。


「そんな状態でお前が騒ぎを起こすなよ。ほら…ダルサロッサと一緒に外に出るぞ」


 俺はレクターを連れてダルサロッサと一緒に外へと出て行こうとすると、先ほどダルサロッサが助けた少女は造った紙の花をダルサロッサの頭に付ける。

 ダルサロッサは少女に笑顔を向けた。


「ありがとうって」


 俺が翻訳アプリを通じてお礼を送り、少女も「サンキュー」と笑顔で答えてくれた。

 きっとジャックがいればもう大丈夫だろうと確信しレクターを掴んで避難場所へと移動していく。

 終始レクターが「あの子誰!?」としつこいので外に連れ出してから話すことに。


「ダルサロッサが助けた女の子だよ。虐めてやるなよ」

「虐めないよ! 失敬な! 何で紹介してくれないわけ?」

「なんでお前に紹介しないといけないんだ? 私は道案内をしただけだ…それに本当の意味で助けたのはソラだ」

「それだってダルサロッサが案内してこなかったらあの子の命は無かったんだろ? 俺は格好いいと思うよ」


 ダルサロッサは「フン」と言いながら立ち去っていく。

 照れているなと思いながら俺は黙って見送った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ