英雄集結 4
ジルという女性を素体としてこの世に生まれた死霊は体を灰になって崩れていき、俺達は地面に着地するとその体が完全に崩れていくのをしっかりと見届け、俺は灰の中から壊れた指輪を二つ手にしてそれを今度こそ完全に破壊するため異能の具現化を行って巨人に破壊して貰う。
竜達にもう効果が無い事をしっかりと確認したのち俺は少し息を漏らしながらその場で尻餅をつく。
ギルフォードが「やれやれ…」と言いながら右肩を軽く回し、ジャック・アールグレイはポケットからタバコを取り出して火を付けると、闇竜ダークアルスターが同じようにタバコを吸い始める。
タバコを吸う竜とはどうなのだろうと思うが、まあ本人の好き勝手だと思うのでツッコミもしない。
アンヌはレクター達の方へと近づいていき治療をしようとするが、海はともかくレクター達はニヤニヤして気持ち悪いので要らないと思う。
ジュリとアクアが俺の方へと近づいていき、アクアが「パパ!」と俺にタックルを決めてくれる。
そんな光景にアンヌとギルフォードが意外そうな顔をするが、ケビンとジャック・アールグレイが普通な顔をしているので気にしないことにした。
もうすっかり皆慣れたことなのだろうと俺も気にしない。
「パパ…ゴメンナサイ」
「良いんだよ。むしろ持ってこなかったら大変なことになったはずだ…言えなかったのも俺達を混乱させたくなかったからだろ? だったら良いさ…」
「その通りです。アクアは決して悪くありません。あそこでタバコを吸っている闇竜という存在が全て行けないのです」
ケビンの言葉に全員が闇竜ダークアルスターを見るのだが、本人は流石のこの視線は耐えられなかったのかジャック・アールグレイの後ろに隠れてしまう。
するとヒーリングベルが代表して文句を告げる。
「これを切っ掛けに少しぐらい反省しなさい。それともガルーバのようにいっそ消滅しますか? 反省しなさいと言っているだけですよ。もう…貴方が行動を省みないのは分かりましたから、せめて反映しないで良いので反省する素振りぐらいしたらどうですか? 毎回毎回…あなたがトラブルを持ってくることが多いことぐらい自覚しなさい」
「……はいはい」
全く反省する素振りを見せないあたり流石は闇竜と言ったところだろうか、ブライトもジト目を向けるので流石に耐えられないようで一言だけ「すまん」とだけ謝る。
しかし、これで聖竜と闇竜、光竜と影竜という四大竜が揃った事になる。
「でも…全員が始祖の竜の役目を知らないんだよな?」
「「「まあな」」」
どうしてそこまで無駄に胸を張って居られるのだろうと少し不思議に思うのだが、まあこいつ達にこれ以上無駄な質問をしても無駄だと思うので何も言わない。
すると俺の隣にエアロードがやって来て「全くお前達は」と言うが、誰もが「エアロードにだけは言われたくない」と思ったに違いない。
ブライトがいつもの定位置に入って行くのを俺は黙って見守ると、改めて彼女が持って居た道具が気になり灰の中を探ってみる。
すると見つけたのは案の定HDDだったようで、俺はどうしても気になってジュリに渡しジュリはそれをタブレットに繋いで中を解析して貰うことにした。
その間俺達は少しの間暇になったので、改めて軍本部へと連絡を飛ばして応援を寄越して貰おうとした。
「しかし…どうしてこうトラブルがやってくるノですか?」
「と言われてもな……どちらかと言えば今回はトラブルへと俺達が突っ込んで言ったんじゃ無いか? 何か分かるって全員分かっていたわけだし…」
ケビンの言葉にそう返しておいた。
今回は何か起きるとある程度は分かっていたわけだし、こればかりは全員の行動に責任があると思うのだが。
するとジャック・アールグレイはタバコを捨てて足で踏むことで鎮火させつつ俺の言葉に意見を挟む。
「私とお前達を一緒にするな。そもそもこの街の人間がどうなろうと私は構わなかったのだからな」
「お前のそういう所が正直嫌いなんだが?」
「ギルフォード…ここに居る人間で多分こいつのことを好んでいる人間は居ないと思うぞ」
全員が俺の言葉に「うんうん」と答えてくれる。
真面目にこいつを好んでいる人間なんてそうは居ないと思うし、少なくともこの場にいる人間にこいつを好む要素を持って居る人間はいない。
断言できる。
ギルフォードは「確かにな…ツッコムだけ無駄か」と言いながら諦めた顔して距離を開ける。
するとジュリの作業を見ていたケビンが「出来ましたよ」と俺達に声を掛けてくれたので、俺達で覗いてみると小さな少年が写った古い写真のデータ。
お爺さんと思われる男性とお祖母さんと思われる女性に挟まれている少年、写真の古さを考えると多分この少年は…。
「ノックスの幼少期だろうな…建物の前で撮っているようだが…これは?」
「多分ですけど…ケネディ宇宙センターじゃ無いでしょうか? 見た感じ正面玄関の用ですね。その前で撮っているようですが…」
ケビンが言うのだからそうなのだろうが、どうしてそんな写真がこんなHDDの中に入っていたのかと聞いていたら、他にも古い写真などが入っているらしく、それと同時にロックの掛かっているデータも入っていたとの事。
データも軍の重要なデータまで様々だが、このHDD事態は比較的最近の物との事。
「多分だけどあそこに預けた人が居るんじゃ無いかな?」
「カジノに? 普通銀行とかに預けないか? 何でわざわざカジノに…」
「カジノなら政府の手が入らないって感じたんじゃ無いか? 銀行なら政府とか軍が介入すればあっという間に差し出しそうだし」
ギルフォードの言葉に俺は考え込むが、まあその辺りは考えても答えが出来ない気がするのでこれ以上考えるのか止めた。
中に入っているデータも元々は書類の物をスキャナーでデータとして無理矢理落とした物であると判断された。
「ケネディ宇宙センター……やっぱり言って見るか…父さん達はどこに居るんだろう」
「それだが夕方には要塞とワシントン攻略戦を始めるそうだ。正直中国軍とロシア軍がやってくるのも時間の問題らしい」
「ギルフォードがそう言うのですからそうなのでしょう…作戦までまだまだ有ります。不安材料があるのならこの際解消しておきませんか?」
アンヌの言葉に俺が「うん…」と頷くのだが、ジャック・アールグレイは「お前達の好きにすれば良いさ…」と言うのでいっそ清々しいまでの身勝手さ。
「それにこのデータを取りに行かせた人間が果たして誰なのか私も気になりますし…多分ノックスでは無いでしょう? らしくありませんし…」
「ケビンの意見に一票だな。話を聞く限りそんなタイプに見えない…両親か?」
「かもしれませんね。聞いた話では今のノックスのやり方に反発しているという話ですし…」
「アンヌはこれをどう使うと思う? 俺にはそれがどうしても考えが及ばないんだが?」
「………そうですね…ご両親が反発されているのならもしかしたら説得がしたいのではありませんか?」
「説得ね…まあデータも正直今使えるような物じゃ無いし…両親がノックスを止めようとしているならそれが妥当か…これで止まると俺は思わないけどな」
思い出の写真を見せたところで止まる人間とは思えないが、そんなあり得ない答えに頼りたいと思うほどに両親としては思い詰めているのかもしれない。
「なら一つ聞いてみたい話ではあるな…ノックスがどうしてこんなことをしようと思ったのか…それこそがジルという女がこんな矛盾に満ちた行動に走らせたきっかけだと思うし…」
俺の言葉に全員がそっと視線を灰の方へと向ける。
彼女の矛盾した気持ち、ノックスを狂気へと走らせる理由を知るため俺達はケネディ宇宙センターへと向かうことになった。




