ラスベガスの戦い 10
至近距離でお互いに切りつけ合うような形になった俺達の間に強烈な破裂音と共に空気が弾け、俺とジャック・アールグレイはお互いに距離が出来てしまう。
それが誰が邪魔をしたのかと俺とジャック・アールグレイが周囲を見回すと海が刀を鞘に収めている姿が見え、隣ではケビンがホッと安心したように息を漏らしている。
よく見ると建物の中が軽く壊れているのが見えたが、俺達としてはこのまま続けたいという気持ちが高く俺とジャック・アールグレイが再び戦い始めようと思っていると、後を追いかけてきたレクターがゲップと共に現れた。
現れた瞬間俺達の中にある戦うという気持ちが一気に萎え、内心どうでも良くなってしまった。
だから俺とジャック・アールグレイはお互いに武器を納め、竜を回収しようとするが、そんな事で一旦ヒートアップした両者が簡単に引くわけが無い。
ブライトは闇竜ダークアルスター相手に一歩も引かない舌戦を繰り広げており、その内容も正直酷い。
お互いがお互いに挙げ足取りばかりをしているのだが、それが徐々にヒートアップしている姿は聞いている俺達がもう争うのは馬鹿らしいと思えるほど。
「ジャック・アールグレイ。お金なら今回の作戦に参加していただければ没収した分に依頼金を含めてお支払いいたします。ですので協力していただけませんか?」
ケビンの初めて見る大人らしさに驚く俺達、ジャック・アールグレイが俺の方を一旦見つめるとため息を吐き出して「仕方が無い」と協力態勢を取ることに。
お互いに竜を一旦引き取り、至近距離で言い争いをする両者をなんとかいさめる。
俺はポケットからあめ玉を取り出してブライトに渡すと一気に戦う気持ちが無くなったらしく、それを口の中に入れて楽しみ始め、ダークアルスターはジャック・アールグレイから報酬金の話を聞いて一気に大人しくなった。
俺達は目的地まで一気に辿り着こうと歩き出し、目の前にある鉄製の大きなドアをなんとか開いて中へと入って行くと埃とコンテナの山が積み重なっており、そのコンテナも木箱のようなタイプから金属タイプまで様々。
埃っぽく俺達は中へと入って行く事に躊躇してしまう。
「フン。こんな場所に隠すとはな…出し入れする以外に特に管理もして居ない場所…酷い物だな」
ジャック・アールグレイが近くの木箱のコンテナを開けて中をチェックし始め、俺も少し離れた場所にある金属タイプのコンテナを開ける。
中には古い部品などが沢山入っており、入れられてしばらく経っているように思えるので、恐らくは中に入れて会社が倒産でもしたか、個人が忘れてしまったのだろう。
「こっちはカジノで使われるような古いゲームが入ってる! 奥には…大金!?」
「ああ。多分ですが違法な金を持ち出す際に隠して忘れていったのでしょう。まあ…忘れるなと言う話ですが…そこ! 商人は隠されている金に手を出さない! それは後で警察を呼んで回収して貰います。ここに隠すと言うことは違法な金です」
「違法な金なら私が貰っても別に問題は無かろう。回収させて貰う…」
「させません! さっさと向こうのコンテナを探りなさい。あちらを探していたでしょう!?」
「レクター…今ポケットに入れた金。コンテナに返せ。見ていたぞ」
レクターがお金をコンテナにしっかり入れるのを確認し、ジャック・アールグレイとレクターが離れた隙に俺とケビンでコンテナにしっかり鍵を掛ける。
全く油断も隙も無い奴だな。
海と一緒に金属製のコンテナを開けると中からパソコンの部品を見つけ出し、俺達で一個ずつ取り出して確認する。
「どんなのか分からないから確認に時間が掛かりますね…何か手掛かりがあれば良いんですか…最近のコンテナばかりを探しても、他のコンテナに隠していたら意味が…」
「ああ…コンテナ以外にも事務所みたいな場所があるな…向こうも調べてみるか…海」
「ええ。こっちは任せてください」
「レクターもしっかり監視していてくれ。何をしでかすか分からないからな」
俺は二階の事務所みたいな場所へと入っていき、以外と清掃が行き届いている広い事務所、棚から調べて最終的に棚の裏までしっかり調べてみるのだが、見つからない。
そこまできてやはりコンテナなのかな?
そう考えていた時、ジュリとアクアが「パソコンは?」と聞いてきた。
『その部屋には真新しいパソコンが混じったりしてない?』
「一個だけ混じっているけど? これか? て言うか…これ電源は居るのか?」
俺は不安に思いながらそっと起動ボタンを押してみると、パソコンの画面が起動し始める。
とりあえず一安心して俺はそのまま操作しようとしたら案の定パスワードが居るという事になった。
ですよね…普通パソコンにはパスワードをしっかりしておきますよね。
『ま、まあ…指紋認証とかじゃなくて良かったね。パスワードだけなら数撃てば当たるよ』
「あのさ…十文字入力だよ? 何通りあると思っているわけ? それにこれ…三回ミスったらデリートだよ?」
この中に鍵があるのなら致命傷と言っても良いだろう…ショックとか言う話では無い。
俺はヒントも存在しないこのパスワードと睨めっこをしていると、アクアが「私に見せて」と言うので俺はテレビ電話でパソコンを見せてやる。
すると今度は部屋の中を見たいと言い出し、俺は先ほどまでの場所を含めて中を調べて見せてやるとアクアがハッキリとした口調で喋り始める。
「パパ! そこの言葉は『KNOX198704』だよ」
アクアに言われた通りにパスワードを入力してみると、一発で突破する事ができた。
「どうして分かったんだ? アクア」
『だってその部屋にそのパソコンはおかしいでしょ? ならそのパソコンは持ち込まれた物だからぁ~さっきの女性が残しそうなパスワードを調べてみたの。メクラスがノックスて言う人の情報を調べて演算したの』
メクラス恐るべし…やっぱりコンピューター系統では最強と言ってもいい強さを誇る。
パソコンを起動して中を調べて居るとそこには大画面一杯に移されているノックスの顔、俺はこの画面に拳を叩き込もうとするが、通信機越しにジュリが静止する。
なんとか自分の気持ちを抑えるのだが、画像をいっそデリートしてしまおうかと思っているとアクアが「それが鍵だよ」と言ってくれた。
そっか…これが鍵なのか……もう正面突破で良いんじゃ無いかな?
「ソラ君…気持ちは分かるけど止めてね。ブライト…私の言うとおりにして」
「はぁい! ジュリから貰ったUSBを差し込めば良いんだね」
納得できない部分が多いのだが、ここは大人しくしていることにし俺はブライトが画像をコピーして居る間ジュリ達と適当な雑談をして居ることに。
「なんで画像が鍵なんだ?」
「恐らくだけど顔面の情報で鍵が開く仕組みなんだと思う。だから鍵はノックスの顔」
「だったらそれをケネディ宇宙センターに置いておく必要は無くないか?」
「それも予想にはなるけど…単純にノックスの顔写真が残っている記録をあの人は本来削除する予定だったんじゃ無いかな? パソコン事…やっぱりケネディ宇宙センター一帯には何かノックスに関わる情報があるんだと思う」
「パパ! 私も同じ意見!」
「やはり一旦ケネディ宇宙センターに言って見るか」
何が待ち受けているのか…それこそノックスの真実に触れる必要があるのは間違いの無いことで、それを誰が知っているのか…それをどうしてノックスが黙っているのかを知る機会になるだろう。
それでも…俺は絶対にノックスを許すことだけは無い。
それだけは絶対なのだ。




