ラスベガスの戦い 9
俺はハンバーガーを食べきってから一旦立ち上がりその場を後にしようとしたところで、レクターが急に制止してくるので何事かと振り向くと、そこには両手から溢れるばかりのハンバーガーとナゲットをお盆の上に置いて食べている存在がいた。
俺どころかケビンまでもがドン引き状態であるが、その隣でエアロードとダルサロッサとシャドウバイヤが同じように食い意地を張っている姿を見るとどうでも良くなる。
しかし、こんな所で時間を無駄にしたくないのでできる限り素早く動き出したいが、レクター達の状態を見ればこいつが簡単に譲らないのは間違い無い。
俺が「早く食べろって」と言うのだが、中々食べるスピードが上がる訳がなく、俺達は待つかどうかで少し悩む羽目になってしまった。
ジュリとアクアを置いて俺達は一旦お店から出て行き、ケビンと海を引き連れてお店から出て行き、写真を元に周囲から聞き込みをしてみると、ジルという女性が東側の大きな建物へと入っていったのが分かった。
建物としては少し複雑に出来ており、三階建ての少し横長の建物で倉庫のような中身をして居るらしく、勿論正面玄関には鍵がしっかり掛かっている。
壊しても良いが破壊した音を聞かれたくないので一旦他のアイデアを考えることに。
広場に出入り口があるので間違い無く周囲に聞かれることは間違い無いのだが、それにこの正面玄関辺りでウロウロしていると怪しまれてしまう。
駅前は特に帰れない人でごった返しているし、観光客がこの辺をウロウロしているだけでも目立つのに、これ以上目立ちたくない。
「窓は全部下がっているし…二階から上も基本は出入り口は無しか。この辺りの建物から入る方法があれば良いが…ジュリその辺はどうなんだ?」
『えっと…駅の地下鉄の路線から入る道があるみたい。そこから入ってみてくれる?』
「分かりました。ジュリさんのお陰でなんとか入れそうですね」
「でも少し気をつけておいた方が良いかもしれません。他にも入ろうとしている人達がいるかもしれませんし。僕たちも少し警戒するぐらいが丁度良いと思います」
先ほど痛い目を見ているので流石に警戒している海とケビン、俺達は地下鉄へと再び入って行きジュリの導き通りに辿り着いた貨物船の行き着く先へと辿り着き、そこから大きな金属製のドアを潜って倉庫の中へと入って行く。
レンガで出来た建物の地下、誇りや蜘蛛の巣などがあちらこちらに目立つ明らかに使われていない建物というイメージが強い。
「使われていないという感じですね。最も最近は空港から荷物を入れますし…他にも貨物を下ろすための場所を作ったと聞いたので単純に使う機会が無くなったのでしょう」
「鍵も掛かっていないし…単純にそうなのかもしれないな。海?」
「……一部埃が無い場所が…誰かが来ているんじゃありませんか?」
薄暗い場所、エコーロケーションを使って居ないので警戒を自然と上げて俺は緑星剣と星屑の鎧を展開し、海も刀に手を掛け、ケビンも銃を両手に握って上へと登っていこうとスしたところで、俺は少し上の方からハッキリと感じ取った殺気に緑星剣を素早く振る。
視界一杯に写る俺の一番嫌いな男の一人であるジャック・アールグレイ、あちらも俺の方を睨み付け、俺達は予想外の人間に驚く時間も無い。
至近距離で一旦ジャック・アールグレイを蹴っ飛ばして距離を開け、俺は緑星剣を地面に突き刺すとジャック・アールグレイの周囲から何本もの剣の束が襲いかかっていくが、その攻撃が真っ黒な球体によって削り取られる。
この感じ…闇竜か。
「フン。まさか貴様達までもがここに来ているのか…ここに隠しているという『鍵』が目的だな」
「闇竜…まさかここで出会うとはな…どうしてお前達が鍵を求める?」
「決っている…要塞を越えないとワシントンまでたどり着けない。そうしないとあのノックスを殺すことも出来ない。あれは私の獲物だ」
俺はその言葉にムッとくると文句に対する開始文句で「あれは譲らない」とハッキリと返した。
ジャック・アールグレイもまたノックスを目的に動いており、恐らく要塞に入り込むためには鍵が必要だとここまで辿り着いたと言う事か。
「お前の部下が殺されたっていうのが関係しているのか?」
「……関係は無いさ。私の会社を壊し、金を奪い取った奴には制裁を与えなければならない」
「ならどうしてそこまでしてノックスや不死の軍団にこだわる? それはお前が…」
「くだらないやりとりは止めよう。お前と俺はではどうやら対峙する理由はあっても、わかり合う理由はないはずだ」
ジャック・アールグレイがレイピアを俺に向かって突き出すと真っ黒な一撃が俺の喉元を襲いかかるが、俺はそれをギリギリで回避して距離を潰してから風の一撃をジャック・アールグレイへと向かって飛ばす。
ジャック・アールグレイは闇竜に攻撃を弾かせ、俺はそれを見届けると先に闇竜を仕留めようと俺は懐に隠しておいたブライトにバレないように声を掛ける。
「竜撃! 闇の型! 闇の太刀!」
周囲の影から鋭い一撃がジャック・アールグレイへと襲いかかり、ジャック・アールグレイへの攻撃を闇竜が打ち消そうとするが、その一撃は聖竜ブライトが属性反転を利用して光り属性へと変えてしまう。
闇竜の一撃ではその攻撃を防ぐことは出来ず、ジャック・アールグレイと闇竜はその攻撃を素早く逃げる形で回避するが、俺はその進路を予測しジャック・アールグレイへと強烈な一撃を叩き込もうとする。
しかし、ジャック・アールグレイはその攻撃をレイピアで受け止めるのだが、俺はそんなジャック・アールグレイの脇腹を思いっきり蹴っ飛ばす。
「貴様! 懐に何を隠している!」
「ジャック。あれは聖竜だろう…死んだはずだが子供を残していたか!」
「僕…あなた嫌い! お父さんも嫌っていたよ!」
「フン! 子供との格の差を見せてやる!」
「やってみろ! 闇竜! この子を攻撃するなら先にお前を始末する!」
「させるとおもうか…先ほどの一撃倍にして返してやる!」
ジャック・アールグレイは吐き気を耐え抜き、俺の顔面を鎧とマスク越しに強烈な奴をたたき込み、視界が揺らいだ所でかかと落としの容量で叩き付けてくる。
ブライトは地面との接触だけは防いでくれ、俺は闇竜の追撃を素早く立ち上がって回避し、緑星剣をジャック・アールグレイへと投げ付ける。
ジャック・アールグレイはそれを片手で弾き落とし視界が一旦塞がれてしまうが、俺はその隙に一気に距離を埋めてジャック・アールグレイの顎をアッパーカットで打ち上げつつレイピアを足で蹴っ飛ばす。
その状態で俺は師匠の大剣を呼びだして一気に斬りかかるのだが、それを闇竜が周囲の物体を使って防ぎに来て、ブライトはそんな俺の一撃を強化するために周囲の物体を風化させる。
「この子供め! ガキは大人しくしていろ!」
「やだね! 僕はソラの役に立つんだ! 貴方みたいに役目を放棄した人と一緒にするな!」
「貴様が何を知っている!?」
「貴方が…役目を果たすことを…命との距離を埋めようとする事を恐れていたことぐらいは分かるさ! この臆病者!」
「言ったな! 闇竜の咆哮!」
「聖竜の咆哮!」
俺とジャック・アールグレイの間で聖竜ブライトと闇竜がお互いの咆哮攻撃をぶつけ合い、俺はそんなブライトの咆哮を俺の異能殺しでサポートし、ジャック・アールグレイも闇竜に何か告げ口をしている。
すると、ジャック・アールグレイの姿が消え気配が完全に消えたが、俺はエコーロケーションで索敵すると真後ろを陣取っていることがわかり、そっちに大剣を振り下ろす。
ジャック・アールグレイもレイピアを拾い直しそのまま突き刺そうとする。
どっちが早いかのギリギリの勝負。




