ラスベガスの戦い 2
これでカジノに入れると意気込んで俺達は元々のカジノへと向かって移動していると、カジノ出入り口で見知った人を発見した気がした。
少し背が低く白銀の髪をなびかせ、黒いスーツに身を包んだケビンであり俺達は心の中でずっと思っていた事を素直に呟いてみた。
『何をしているんだろう…あの人は』
素朴な疑問を抱きながら俺が代表して話しかけると、先にシャインフレアが俺の存在に気がついてケビンを引っ張る。
ケビンは顔を真っ赤にしながら俺達に気がついて一瞬で表情が笑顔に戻るのだが、一体何を起こっていたのかと聞いてみたところ、ここのカジノにノックスの副官の男が隠れているらしく話を聞きに来たとのこと。
ケビンはニューヨークの事件の後ワシントン一帯で探っていたらしいのだが、今現在ワシントンは結界のような物に囲まれており、容易な侵入は不可能であるらしい。
それでなんとか入る方法を探っていたところ、ここに副官が隠れていると聞きなんとか話を聞けないかとやって来たのだが、ドレスコードが必要だと言われてエージェントであることを笠に着てなんとか入ろうとしたが頑固な警備員はそれを全て一蹴されてしまった。
それで怒っていたのだが俺からすればそれは普通の事であり、警備員は仕事をして居るだけだと思うと言って見ると、やはり怒った手前怒りを収めるのが恥ずかしいだけだったらしい。
シャインフレアが大きくため息を吐き出して改めてブライトの方へと顔を向ける。
「貴方が新しい聖竜ですね。親よりは素直そうですね」
「本当!? やったー! ソラ褒められたよ!」
親が馬鹿にされたんだと思わない辺り流石と言うべきか、俺は敢えて何も言わないで居るとシャインフレアとケビンは俺とジュリに手を繋がれているアクアに目線を向けた。
一体この二人の脳裏に何が過ったのか、数秒だけ思考してシャインフレアが「どこで拾ったのですか?」と訪ねてきてケビンが頷く。
するとアクアは二人に対して「パパとママの子供のアクアです」とこれはまた綺麗な自己紹介をしてケビンを驚愕させた。
中々見れる顔では無いケビンの驚愕の顔、シャインフレアだけが少し考え込む顔をしたのち冷静に思考する。
「どうせ拾った際にエアロードが余計な事をしたのでしょう?」
「何故分かった!? 私が余計な事をしたのだと!」
「あなた以外にいますか? で…その子は一体どうしたのですか? それとケビンはそろそろ元に戻りなさい…」
シャインフレアは常に冷静だなって思いながら俺は二人にアクアの正体を冷静に語って聞かせ、割とこの子はマジでこの世界の未来を占う存在である。
この子の成長次第では世界にどんな悪影響があるか分からない。
「ソラ…あなたはまたそんな世界を占うみたいな存在を引き受けて…そんなにトラブルを集めたいのですか?」
「周囲が勝手にトラブルを集めてくるんだろ!? 俺の所為みたいに言うなよ! それとそこで爆笑している馬鹿レクター! 半分はお前が持ってくるんだぞ!」
あのトラブルメーカーは自分が問題を作って俺に持ってくると言う自覚は無いのか?
とりあえず中に入るという目的自体は同じなのでケビンとシャインフレアには正装してもらい、俺達は改めて家事の中へと入って行く。
ケビンは赤いドレスを選びこれまた綺麗な服であるが、これまた値段が目玉が飛び出る級である。
中に入っているとケビンが俺に尋ねてきた。
「あの…大統領は?」
「ああ…手術自体は終わったと聞いたよ。今は再生治療器の中に入って治療が続いているらしい」
「そうですか…少しだけ安心しました。助かるかどうか分からないと言われて心配して居たんです」
「その割にはずっと行方不明だったけど?」
「大統領が大丈夫だって信じて私たちはノックスを捕まえるために動いていたんです。そう言えば途中でワシントン一帯でジャック・アールグレイを見ました。何をしていたのかまでは分かりませんが…」
そう言えばジャック・アールグレイは会社事潰されたと聞いたが、ノックスを討つために動いているのだと良いが、最悪敵側に回ることを考えた方が良い。
こう言いたくは無いがあの男だけはいつでも敵に回る可能性を考える必要がある。
カジノの中はスロットなどで埋め尽くされており、正直非常に音がうるさいので出来ることなら俺達はこのままUターンしたい。
そういうわけにも行かないので俺達は中を入って行き、探っているとケビンが探している副官の人物はどうやらVIPルームに入って出てこないらしく、中に入るには俺達もVIPルームへの入室条件を満たす必要がある。
入るためには一定のお金を稼ぐ必要があるのだが、まあお金なんてそんなに持ってきているわけじゃ無い俺達からすれば簡単に集められるきがしない。
とりあえず手持ちの金のいくつかをチップに変えてからそれぞれ散ることにし、ジュリはアクアや他の竜達と一緒に行動する事とした。
俺はスロットで簡単に稼いでみようと思ったが、面白いようにお金がこの箱の中へと消えていくのだ。
その割にはまるで儲からないこの不思議な箱を恨みたくなる。
日本円で考えて二万ほど使った所でスロットを止めたと俺はルーレットへと向かった。
赤と黒だけ狙いを絞って戦えば多少は儲かるのではと考えたのだが、正直に言えば多少は勝てるようにはなったが些細なさである。
プラスとマイナスの境を行き来するだけの儲け、これではVIPルームに入るのには時間が掛かって仕方が無い。
再び立ち上がって歩き回っているとバッタリとケビンと海と合流した。
俺は二人に「どうだ?」と訪ねたが表情からあまり上手くいっていないという事が分かった。
「駄目ですね。トランプ系を攻めてみましたが……」
「僕の方はテーブル系を一通りしてみましたけど中々……これ無理なんじゃ」
「俺も同じ事を思ったよ。いっそ暴れて中に入った方が…」
「それアクアに悪影響なんじゃありませんか? 何か裏技みたいな方法は無いんですかね? そう言えばレクターはどうしたんですか?」
海に言われて俺達は周囲を探っていると少し遠くでポーカーをしている背中を発見して俺達は歩いて様子を見てみることにした。
すると顔面蒼白のディーラーと周囲で戦っている金持ちの男性と女性、一人勝ちをしているレクターは恐ろしい数のチップを稼いでいる。
もう…こいつだけで言い気がする。
なんとか稼いでいるがVIPルームに入るにはまだ足りない、一旦ジュリ達と合流しようと居ると言っていた場所まで移動すると、近くのスロットで馬鹿騒ぎを発見し俺達は覗いてみるとアクアとジュリが他の竜達を引き連れて一人勝ちをしている姿があった。
その儲かり具合はレクターの一人勝ちが霞むレベルで、俺達は心に思ったことをそのまま素直に呟いた。
「「「負けたよ…」」」
少し場所を再び移動して椅子に座って一旦落ち着くと俺達はジュリから話を聞いてみることにした。
詳しく話せば長いが、アクアが単純にカジノに興味を示し、エアロード達も見てみたと言うので最初は簡単な気持ちで適当にスロットに金を入れてみたところ馬鹿儲けできたと言う事らしい。
因みに選んだのはアクアである為、メクラスの演算処理システムを最大限活用したのだろうと思うが、最初っから頼れば良かったと反省した。
とりあえず俺達はなんとかVIPルームに入るために必要なチップを稼いだのだが、少し疲れたからという理由で一旦お休みしてから行こうと言うことになった。
しかし、こうしてみるとメクラスの演算処理は大した能力であり、このまま技術が進んでいけば間違いなく世界最高峰となるだろう。
今でもヤバい気がするのに。




