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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
アメリカン・シービルウォー《下》
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竜達の戯れ 7

 しかし、俺には一つだけ不思議な事があるのだ。

 それは何故この子はパパやママという言葉を知っていたのかと言うことで、その答えは意外とあっさりしており、この子は命令系統を理解するためにいくつかの言語能力を入力されていてその中に日本語やガイノス語と言う言葉も入っているのだろう。

 それを少し遠くで看板のような物を持って言葉を教えているエアロード、ニヤニヤしながら教えて居る姿を見て俺は全てを確信した。

 いつからだろうか…きっと割と最初の方から見ていたのだろうが…あいつは楽しんで教えて居たに違いない。

 その隣ではため息を吐き出しながら呆れているシャドウバイヤとヒーリングベル、どうやらここに居ないと言うことはダルサロッサはずっと暖炉の所で大人しくしているのだろう。

 俺はシャドウバイヤに目で「連れてこい」と指示し、シャドウバイヤとヒーリングベルはエアロードを両脇で拘束して素早く俺の元へと連れてきてくれた。

 怒りの表情で見下す俺とそれを俯いて若干反省した素振りを見せるエアロード、こういう素早い行動はむしろ反省していないというわかりやすい合図。

 こいつは絶対に反省をしてしない。


 半年以上の付き合いになったこいつが無駄に学んだ学習能力、俺が怒ったら素早く謝れば許してくれるという考え。


「お前…頭を下げれば許してくれるわけじゃ無いからな。なんでそんな無駄な事に素早く動きを見せる?」

「だって…面白そうなことしているし……」

「だからと言って無駄な事を教えるんじゃ無い!」

「良いじゃん。その女の子どうせお前の事を親だと本気で思っているんだから…本当の事を教えて何が悪い!?」

「開き直るな! 誰もお前を許していない! 反省しろとは言わないからお前も父さんとレクター同様ガチで説教するからな」

「ええ!? あの二人と同レベル? あり得ないでしょ」

「同レベルだ! 全くの差など存在しない!」


 エアロードがぶー垂れているを完全無視し、改めてこの子に向き直る。

 相も変わらず俺の服の裾を掴んで離さないこの子、何時までも「この子」という名前では可哀想だろうという事で俺達で名前を決める事に。

 多分だけど、この子には名前が無いと思う。

 兵器として作られたのならこの子には名前なんて無いだろうし、それでは可哀想だと皆で考えたが上の結論。

 無論父さんとレクターとエアロードは素早く戦力外通告を出してその場から離脱させた。


「何かアイデアある人居る?」


 俺のその言葉に全員が黙り込み、隣で父さん達が五月蠅かったが全て無視する。

 ジュリも少し真剣に考え込んでみるが、これと言って中々良いアイデアが浮かんでこないまま少し唸る一同、ブライトが青く綺麗な髪色を見ながらぼそっと呟いた。


「アクア」


 この子が反応してブライトの方へと顔を向けるのだが、どうやらこの子的にはありな方らしく、俺は視線をこの子に合わせて尋ねた。


「アクア…君の名前で良いかい?」

「…………コクン」

「じゃあ…君は今日からアクアだ。宜しく」


 アクアの表情がほんの少しだけど明るくなったような気がした。



 アクアを連れて一旦下がろうかとも思ったが、あの超電磁砲を無視して引く事なんで出来ないし、何よりもアクアを街に連れて行ってパニックになる可能性が高いと言うことで一旦俺が立てたテントの周りへと戻ることに。

 そして、技術大国と魔導大国の研究部隊が到着次第少しだけアクアには我慢して貰い、体を調べて貰うが、この子には能力を持っているという点以外では普通の女の子であることが分かった。

 薬品で無理矢理成長させられた痕跡はあるが、寿命問題は他のキメラと比べても問題は無いとの事。

 強いて言うならやはり思考能力が非常に低く、人間としての最低限の思考能力も持っていないのだが、流石にこの二大国でも今すぐこの思考能力を手に入れさせることは出来ないと言われた。

 俺に懐いているのでこのまま俺達と一緒に行動させるしか無いし、下手をすれば相手がアクアを奪い返すために戦力を寄越しかねない。


「で? 先ほど俺が戦った兵器は何なんだ? どうせ技術大国が何かしたんだろうけれどさ…」

「それがねソラ君。技術大国は知らないって言っているの。今残骸を調べて居るところだけど…確かに機体の装甲などの技術には身に覚えがあるらしいけど、あんな機体を作っていたって話は聞いていなくて…今本国のデータベースに問い合わせて調べて居るけど」

「寄せ集めのパーツとか?」

「それもどうだろ。海君の意見だったら誰かが横流しされたパーツを無理矢理くっ付けたって事になるけど…それでソラ君が苦戦するスペックを出せるかな」

「俺も同意見だな。あれは完成された機体だ。試作機とか比べるべくもない」


 あの子の能力があったのだろうが、それを抜きにしても機体そのものが非常に優れていると言ってもいい。

 魔導機を搭載し、装甲そのものの強化や無理な可動領域を確保されており、何よりも下手に銃火器を搭載するのでは無く、あの素早い動きと強固な装甲を使った近接戦闘は正直あまり戦いたくない。


「明らかに量産されていても問題ないクラスの兵器だ。コストを抑えられるならどこかの国が量産体制を造ってもおかしくない」

「そこまでですか…」

「勿論パイロットは選ぶだろうが、それを入れても十分驚異的な兵器だと思う。慣れれば師団クラスぐらいだと崩壊させる事が出来るかもな」

「う~ん。だとしたらガイノス帝国が情報を手に入れていてもおかしくないし…それならやっぱり寄せ集めという可能性は低いな…」


 アクアが俺の服を何度も引っ張って俺を喚び、俺は屈んでアクアに合わせるとアクアは気になる言葉をそっと吐き出した。


「メクラス……」

「メクラス?」

「……うん」


 メクラス…何を言いたいのだろうか?


「メクラスってどんなモノなんだ? あんな感じの奴?」

「ううん。仮想……演算……処理…?」

「仮想演算処理……スーパーコンピュータ見たいな装置と言う事か? それなら仮想というのはおかしい気がするが…」

「だね。仮想だから原則としては存在しないスーパーコンピュータなのかな? ならどうしてメクラスって名前が付いているんだろ」

「仮想…存在しない……竜結晶…」


 海がブツクサと何かを呟いているのだが、ゆっくりと自分の腕に付けている魔導機を見つめだした。


「西暦世界との交流で高度な演算処理機が皇光歴世界にも流れるようになりましたよね?」

「ああ。ジュリのタブレットもその副産物と言ってもいい」

「だね。私のタブレットがその結果と言ってもいいわけだし…」

「そうやって高度な演算処理コンピューターと魔導機のミックスが生まれて、それが竜結晶によって更に拡大していったら…竜結晶が発する…粒子は一種のネットワークになるんじゃありませんか?」

「そうか……それはきっとただのネットワークでもなく、ただの演算処理コンピューターでもない。制約が存在しない一種の無限の可能性を内包した存在しないスーパーコンピュータだね。正しく仮想演算処理コンピューター…メクラスって名前は本人が付けたのかな?」


 ならこの子を造ったのも…あの兵器を造ったのも恐らくはそのコンピューターなのだろう。

 だが、そのコンピューターは一体どこにいて何がしたいのだろうか?

 正しく時代の申し子のような能力、時代を先取りした…と考えたところでその正体とこの子の存在理由が分かった。

 俺はこの子に目線をしっかり合わせて真剣な顔を向ける。


「……聞こえるんだな? メクラスと名乗る存在が…君は仮想演算処理コンピューターが俺達とコミュニケーションを取るために造ったコミュニケーションツールなんだな?」

「…うん」


 俺達は試されいたんだ。


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