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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
アメリカン・シービルウォー《上》
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超電磁砲を攻略せよ 10

 要塞の中は上下左右がデタラメになっていて、どう進んだら良いのかがまるで理解出来ないぐらいぱっと見だけは分からない。

 何より面倒なのは上空に進んでもどこか適当に進んでしまうだろうという事である。

 ヒーリングベル曰くそれもドアを造ることでここは外に繋がっているという印であり、ドアが繋がっている先は必ず現実と同じ場所になっているだろうと。

 目に見えるような大きな歪みは何処に繋がっているのかというのは全く保証できないが、少なくともこの要塞の外に直接飛ばされると言うことはあり得ない。

 この歪みは壁のような物で囲まれた中やその外からは出ることは出来ないとハッキリと告げるヒーリングベル、しかし、要塞の端っこから要塞の中をジッと見つめてみるのだが、中には工場地区のような場所から高層ビル群まで様々存在していた。

 で、問題はどこにこの歪みの中心があるのかと真っ直ぐ指さされると、要塞の中にある一番ど真ん中に色々なビルが突き刺さるようなオブジェ、そこの中心こそがそうである。


「とりあえず目の前の歪みに進んでみましょう…」


 アンヌ達は意を決して前へと進んでいくのだが、いざ歪みの前に立つと正直恐怖しか無い。

 前に進むという行為自体に躊躇いがあり、前に進むという気持ちを何時だって躊躇させるが、そんな時歪みの向こう側から機械の音がハッキリと聞こえてきて全員でダッシュで近くの建物の物陰へと隠れていく。

 ゴミ箱の後ろに隠れて息を潜めていると、歪みから長く太い機械の両腕を持って居るゴッツい男が左右を確認する素振りを見せながら姿を見せた。

 背中にはパイプのような物が飛び出しており、顔はガスマスクで覆われているのだが、それ以上に体中に伸びている青色の太いコードが彼を人間には見せていない。


「何処だ? 侵入者が現れたという話だが? クソ! 何処だ!?」


 アンヌ達を探しに現れたというのは間違い無いが、その風貌から正直まともな生命体じゃ無い事ぐらいはなんとなく推測できる。

 ジッと見つめていても体の構造を把握できるわけでも無く、ここで調べられるわけでも無い。

 しかし、こうしてみていると彼が人の言葉を喋っていて、それでいてある程度自分で考えて行動しているのは探す仕草からも良く分かる。

 そんな探す仕草を見ているとエアロードが小さく呟いた。


「なんか…あまり賢くなさそうだな…」

「そうですね…貴方やダルサロッサと良い勝負かもしれません」

「失礼な!」

「エアロードさんやダルサロッサさんはバカなの?」

「アカシ!? ヒーリングベル! 貴様のせいでアカシは余計な知識を身につけただろうが!」

「私の所為ですか!? 貴方達がバカなのは周知の事実でしょう? 今更隠す事じゃありません。それと…」

「お前が言いふらさなければバレないだろうが!」

「叫んでいるとバレますよ」


 ヒーリングベルの今更のツッコミに全員がエアロードの口を閉ざすのだが、巨漢の大男はアンヌ達が隠れている方面をジッと見つめ始める。

 アンヌ達の脳裏に無理矢理でも強行できるか?

 そんな考えが過ったのだが、巨漢の大男はゴミ箱の中身を勢いよく開けて金属製の蓋を完全に破壊し中を確認する。

 アンヌ達は「中に入らなくて良かった」と安心し、身を屈み更に低く隠れていると大男はその壊した蓋を片手で振り回して反対側の建物の窓ガラスを完全に破壊した。


「クソォ! 何か音が聞こえた気がしたのに!!!」


 全員がハッキリと分かった…「この人…馬鹿だ」と、実際その奥を調べて居れば解決するかもしれないのにそのまま反対側を探し始め、道路中をウロウロしていた。

 どうやらこの道路一帯に居るという事は分かっているようで、反対側の建物の中に入って行き室内を探し出す姿が反対側から窓越しにもハッキリと分かる。

 しかし、立ち位置がどうも悪くここから出て行く姿を見られる可能性が非常に高い。

 別に歪みに入るのに中心に行く必要があるわけじゃ無いが、歪みに入るには物陰から出て行く必要はどうしてもある。


「どうしましょうか? いっそこの路地裏の歪みに入ってみますか?」

「そうですね…あの大男があの建物から出て行くとは限りませんし…ここで待っていてバレる可能性を考えればあそこの歪みから出て行った方が良いかも…」

「でもさ…あの大男が出てきたって事は少なくとも危ない場所には繋がっていないって事じゃ無い? 少し危ないかもしれないけどあの歪みに入るべきじゃ…」


 もう一度皆で大男の方をジッと見つめるのだが、やはり大男は建物から出てくる気配を見せない。

 それどころか先ほどから道路の方を何かと気にしている。


「無理ではありませんか? 結構用心深い人間のようですし…人間だと良いですね…」

「ぱっと見は人間に見えなくは無いな…」


 この状況下でも冷静なヒーリングベルとシャドウバイヤ、しかし彼女達の言うとおり大男は人間のような容姿をしているが、背中から伸びている機械の太いパイプのような物からは蒸気が出ているし、体中に伸びている青色のコードは光り輝いている。

 人間じゃ無いとハッキリ断言されると信じたくなる容姿、しかし所々見えている生身の部分は普通の白人という感じであった。


「でも生身の部分もありますし…あの機械も何かの兵器なのでは?」

「……だと良いですけど。現状を考えるとあの大男と戦うと十中八九大騒ぎになりますよ。絶対に応援を呼ばれます」


 海の言うとおりで最悪はここで作戦が失敗する可能性がある。

 やはりここはバレないように進む必要があるとアンヌ達は路地裏の歪みへと向かってコソコソと進み始め、何度も後ろから大男がやって来ていないことを確認の上歪みの中へと消えていく。

 現れた先は病院の出入り口のような場所であり、中へと入っていくと誰も居ない薄暗いロビーがアンヌ達を出迎えてくれる。

 海が後ろの歪みを確認して大男が追いかけてきていない事を何度も確認してから改めて移動していく。


「あれって人間なのかな? 人間ならキメラと同じって可能性はある?」


 レクターの一言に全員が黙り込みしばし考え込むのだが、ここで素直に「それは無い」と否定しきれないアンヌ達。

 明確に人間を辞めていないのだが、もし体の中に人間以外の部分を入れているのならそれはキメラと入っても過言では無いのかもしれない。

 しかし、明確にそう断定できる要素が無いのも事実。


「今は先に進んでみましょう。ここから別に歪みがあるかもしれません」

「なら地下へと進んでみませんか? もし地下駐車場みたいな場所があればそこから外へと繋がる場所に歪みがあるかもしれませんし…」

「そうですね」


 廊下を進んでいき下への階段を発見した一行は階段を降りていき地下駐車場を発見した。

 地下駐車場の中へと進んでいき車の隙間を通っていきながら外への道を探し出し、車が出入りするスロープを見つけ出した。

 スロープに向かおうとエアロードが羽ばたかせて飛んで行くと、スロープ前で天井を突き破る形で何かが降りてくる。

 さっきも見た大男がスロープ前に立ち塞がり、ガスマスクから激しい呼吸音を鳴らしながらもマスク越しにも分かる睨みを真っ直ぐにアンヌ達に向けた。


「お前達…侵入者だな!」

「いいえ違います!」

「ぬ!? そうなのか?」


 一瞬で騙された大男はスロープを上ろうとして振り返り怒りをアンヌ達へと向ける。


「嘘をつくな! 一瞬騙されただろうが! もう許さんぞ!」

「その程度の嘘で騙されるんなら本気で騙せばなんとかなりそうな気がするけどなぁ…」


 大男は大きな両腕でスロープの壁を粉砕し怒りをぶちまけながら走り出した。


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