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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
アメリカン・シービルウォー《上》
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キメラ達の居場所 5

 難民キャンプの様子を一通り見守った後、俺達は最前線へと向かって道路まで出て行く。

 そこで車に乗って最前線に置かれている司令部へと向かって走っていく車、窮屈にならないようにとバスクラスの乗り物を用意して貰い、俺達は乗り込むのだが、案の定グリフォンが大きすぎて邪魔という話になった。

 しかし、この辺はまだ敵勢力圏が近いので下手に飛空挺を飛ばしていると住民達に被害が出る可能性があるため呼べない。

 ギリギリのところがあの国有林である。

 仕方が無いので俺達はトラックとバスで二つに分けて運ぶことにし、俺は改めてジュリに鵺達がの体について聞いてみることに。

 ジュリはタブレットを握りながら少し俯き、ゆっくりと話し始める。


「薬品を使って無理矢理体を成長させて、その上遺伝子を無理矢理組み換えて…相当無茶な実験を繰り返していたんだと思う。餌も相当薬品が強いモノを使って居たかもしれない。だからこそグリフォンはソラ君に懐いたんだと思うよ」

「真っ当に育てられなかったと言う事か…多分彼らにとってキメラ達は生物じゃ無くて平気だったのかもしれないな」

「かもしれないね。あくまでも天竜のような存在を作り出す実験兵器で、今思えばこの鵺も電力供給という側面があったのかも」

「電力を大量に供給するにはそれに見合うだけの図体が必要だったからあの大きさになったんだろうな。しかし、となるとこのグングニルという兵器相当の出力兵器という事になる」


 キメラ達に居場所なんてきっと今は存在しないのだろう。

 この書類を見てハッキリとそう思ってしまった。

 人間達の身勝手で作り出され、振り回される存在でしかないキメラ達に俺達人間が居場所を与えてやる必要があるのだろう。

 所で父さん達は今どこを拠点にして居るのだろうとジュリに聞いていると、地図を開いてここだという場所を教えてくれた。

 コロラド州にあるデルバーと呼ばれている場所、そこそこ大きな都市らしく、今はそこに拠点があるらしい。


「ふうん…付いたら父さんを説得するしかないな…ジュリもグリフォンの体について詳しく調べてくれないか? 多分研究チームがどこかに拠点を置いてあるはずだから」

「分かった。付いたら一旦別行動だね」

「だな。多分ギルフォードが一緒にレインの体を一旦預ける場所へと移動するはずだから、ギルフォードと一緒に行動して欲しい。俺達はグリフォンを連れて父さんの所へと向かうことにするよ」


 デルバーと呼ばれている場所を調べてみようとスマフォを動かしていると、ブライトとアカシが俺がスマフォを動かしている姿を見て懐へと入ってくる。

 デルバーを調べてみたが、どうやら西部開拓時代からの大都市で、今では通信産業が発展しているらしい。

 結構いいところのようだし、こんな状況でも無ければ観光して回るのだが、残念な事にそういうことをしている場合じゃ無い。

 しかし、ブライト達は完全に観光気分になっており、俺のスマフォを通じて「あそこ行きたい」や「ここに行きたい」など言いたい放題。

 無論そんな暇は無いと一蹴して俺達はデルバーへと辿り着いた。

 研究部隊が拠点にしている病院ではギルフォードと一緒にジュリが降りていき、俺達はそのままの勢いで父さん達が拠点にしている通信施設へと入っていく。


 中へと入っていくと中では今まさに引っ越し作業のまっただ中で、正直後ろめたさがあるのだが、そんな中でも自分を見失わないアンヌは素早く手伝いに入っていく。

 俺と海も見習って入っていき、ブライトやアカシも入っていくのだが、そんな状況でもエアロードとレクターだけは物凄い嫌そうな顔をし、その隣でその二人を鬱陶しい顔をしている二人。

 シャドウバイヤが「お前達な…」とあきれながら離れて俺の元へと向かって近づいてくる。

 一通り玄関口一帯が使えるようになったところで俺達は父さんの場所を聞き出して、司令室の一番奥へと向かって進んでいく…グリフォンと共に進んでいく。


「ねえ…ソラ。周囲の目が痛い」

「僕も一緒です。凄い目で見られている」

「? そうか? 俺とアンヌは気にならないが…」


 確かに周囲にいる人間が離れている傾向があるのは確かだが、きっとグリフォンの大きさに驚いて道幅を譲ってくれているだけだろう。

 因みにさっきからエアロードだけがグリフォンに対して物凄い嫌悪感をあらわにしており、グリフォンはそんなエアロードにだけ何故か見下すような目で見つめている。

 全員でそこだけが唯一の謎だったりした。

 父さんの居る司令室のドアを開けてみると、真っ赤なカーペットに少し金のかかった感じの豪華そうなテーブル、その上では様々な書類が載っており父さん達はその書類を見守りながら俺の方へと一旦振り向く。

 そして、俺達を見て内心「なんだ」と思ったつかの間、二度見をしてグリフォンを見て驚く。


 全員の顔が何故か「何だあの生き物は?」と言っている気がする。


「どうした? その………なんだ?」

「グリフォンなんだ。実はさ…」


 俺とアンヌが代表してこのキメラ達の詳細を話して説明し、父さん達はなんとなく納得してくれたらしく俺達が手渡した書類を見て再び検討し始めた。

 そこで、俺がグリフォンを連れてきた事を改めて訪ねてきた。


「この子を飼いたい。良いでしょ? 餌もするし散歩もするからさ」

「ソラ。この子を散歩したら帝都が混乱するのではありませんか?」


 アンヌから的確なツッコミがやって来たが、なんとなく大丈夫な気がするのだ。

 何せ周囲にレクターがいる上、基本騒ぎに事欠かない父さんが親なのだから、きっと何だあの家のペットかと思ってくれると思う。

 まあ、それも問題なのだが…。

 俺はこの子に居場所を与えてあげたい。


 因みにグリフォンは先ほどから後ろから抱きつこうと試みるレクター相手に警戒心を増加させていく。

 父さんが何を言うのか期待半分、心配半分の表情で見守っていると皆は「まあ、駄目だろうな…」と思われるような表情をしていた。

 父さんはずっと考え込み、グリフォンへと近づいていく。

 このままグリフォンがレクターへの警戒心を父さんに向ければきっと父さんは「駄目」と言うに決まっている。

 俺はなんとかグリフォンへと俺の気持ちを向けて飛ばしてみるが、そんな気持ちに敏感な訳がなくグリフォンは近づいてきた父さんの方へと顔を向けつつ飛びついてきたレクターを蹴っ飛ばす。

 ジッと目が合うグリフォンと父さん。

 全員が息を呑むほどの緊張感。

 何が起きるのかと緊張していると、予想外にも父さんへと頭を垂れるグリフォン。

 父さんもグリフォンの頭を撫でながら「良い子じゃ無いか」と褒めてくれる。


 そのグリフォンは父さんに見えないようにレクターを三度蹴っ飛ばす。


「良いぞ。良い子だしな」


 全員が驚きの声を上げるのだが、それを疑問声を発して邪魔しようとするレクターにグリフォンは強烈な睨みを向ける。

 しかし、そんな睨みに怯まないエアロードだけが不満声を発していた。


「私は嫌だぞ! そいつ生意気だ!」

「人のご飯を勝手に食べて三年近くも黙って暮らしていた奴が言うと説得力が違うね」

「ソラ。今は関係ない話はしなくて良い!」

「関係ないかな? 俺には結構現在進行形で今でも通用する話だと思うんだけど…」


 抗議するが父さんは今更意見を変えるつもりは無く、エアロードはシャドウバイヤとブライトに願いを託すが、二人はすっかりグリフォンと仲良くなっていた。

 味方がいないという現状に歯ぎしりをするエアロード。

 そんな事で歯ぎしりしないで欲しい。

 どれだけお前はグリフォンが嫌いなんだ?


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