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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
アメリカン・シービルウォー《上》
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キメラ達の居場所 1

 鵺と名付けたこの生命体をジュリ達が調べた結果、体に雷を製造し貯蓄するだけの蓄電機関が存在しており、そこで電気を作り出して溜め込むことが出来るのだが、それで無くても薬品漬けの体に急激に体を成長させた弊害もあって非常に短命らしく、長くても二、三年という短さらしい。

 魔導大国やガイノス帝国の研究陣がここに拠点を置いて詳しく調べるらしいが、この体だったらもしかしたら寿命を延ばすことが出来るかもしれないと言うことが分かった。

 で、問題はこの鵺を作った奴らの正体と、他のキメラの行方だったのだが、施設の現状を考えてキメラ達が何処に行き、今何をしているのかという事を今から調べなければならない。

 問題があるとすればこの国有林は隠れる場所が多く、大自然が広がっているせいもあって探し出すのに非常に手間取りそうだった。

 しかし、そっちは異世界連合軍の部隊が別に動くために派遣されており、俺達は一旦ギルフォードとダルサロッサと合流したのち施設の捜索を始めることに。

 ダルサロッサが鵺を見た瞬間に一瞬だけ攻撃態勢を作ろうとしたが、ジュリの仲介の後大人しく事態は収束した。

 因みにギルフォードは一切の無視を決め込んでいたのだが、どうやら興味も無いらしい。


「しかし、酷い建物だな。傷跡を見る限り鳥類も混じっていそうだな。鳥類…なのか?」


 ギルフォードが書類を持ったまま固まったので俺とブライトがそっと覗き込むとそこには鳥と鷲の上半身にライオンの下半身を持ったグリフォンが写っており、それを二人で見て大きく避けた窓とその周りに広がる元人を思わせる遺体の数々。

 きっとグリフォンの餌になってしまったに違いない。


「グリフォンじゃん! これまた架空の生き物! 見てみたい!」

「なんでお前はそんなにテンションが高いんだ?」


 ギルフォードが俺のテンションの高さにドン引きするのだが、昔っから色んな架空名生き物に夢を抱いてきた俺からすればむしろ西暦世界と違いが竜以外にいない皇光歴の世界に少々ショックだったのだ。

 異世界と言ったらグリフォンみたいな生き物が居ても違いないのに。


「そう言えばソラは昔っから架空の生き物が好きでしたね。小学校の時の自由研究の中に架空の生き物辞典を作っていましたもんね」

「待って! ソラは俺が中二の時に作ろうと思った架空の生き物辞典を嫌がったんだけど!?」

「お前が作ろうとしていたのはお前が作り出した生物だ。それもゲテモノばかり。俺は自分で考えるのは苦手なんだ! 大体図書館で調べるのが嫌だからって自分で考えつくのは止めろ!」

「ええ!? 何で? 所でグリフォンって何?」


 話がクルクルと変わる奴だ。

 ついて行けないので俺は写真を見せようとギルフォードが持っていた写真を撮ると常時に海が俺達を呼んで指さす。


「あの生き物」


 皆でそっちを見る。

 するとグリフォンが口から涎を出しながら俺達を見ているのだ。


「俺達は餌かな?」

「かもしれないな…」


 俺とギルフォードは落ち着き、レクターはその体の格好良さから見蕩れており、海は部屋から静かに出て行く。

 グリフォンは大きく叫んで俺達に向かって突っ込んでいくのだが、それをギルフォードは炎を作り出して阻止しようとする。


「駄目だ! いくらキメラと言っても彼らに罪はない! 何より生きている生き物を意味も無く殺すなんて俺には出来ない」

「本心を簡潔に話せ」

「格好いいから飼い慣らしたい!」

「俺も同じく!」


 突っ込んでくるグリフォンを横に大きく飛んで回避する俺達、ギルフォードは壁に激突する前に体を急停止し、そのまま体を急旋回して三度突っ込んでくる。

 ギルフォードが殺す前に俺が気絶させようとするのだが、その前に場が凍り付くのではと思われるほどに寒くなっていく。

 グリフォンは驚きながら悲鳴を上げ、慌てて外へと出て行こうとするが、それを部屋の窓が凍り付いて外へと出て行くことが出来ない。

 こんな事をする人間にアンヌ以外に思いつかないのだが、はて…?

 アンヌは確か別の階を担当しているはずだし、なんでこんなに部屋中を凍り付かせるのだろうと思って部屋中を探っていると白虎が部屋の中心に居座っている。

 そして…寝ている。

 どうやら寝た状態で無意識に部屋を寒くしているようで、なんでアンヌの元では無くこの部屋で寝ているのかが全くもって謎だった。


 グリフォンが物凄く嫌がっており、俺とギルフォードとレクターからすれば少々可哀想な話で、俺達はアイコンタクトで指示を送り合い、まずはギルフォードがグリフォンの退路を断つため棚を動かし、レクターが後ろから追いかけていき、俺はその隙にグリフォンの首元に背中から飛び乗る。

 フカフカでこの寒さなのに暖かいと思ったが、このままではグリフォンが寒さで死んでしまう可能性もある。

 まずは落ち着かせて行動させる必要があり、俺は体にしがみ付きながら「ドウドウ!」と宥めてみるが、まるで効果が無い。


「誰でも良いからそこに白虎を起こしてくれ! それと暖房!」


 ギルフォードが燃やせるモノを部屋中から集めてきて、レクターが白虎を起こそうとするのだがまるで起きる気が無い。

ギルフォードが焚き火を起こして部屋の一角を暖めると、俺はグリフォンをその暖かい咆哮へと連れて行く。

 するとその炎に落ち着きを抱き始め、俺は再び宥めてみる。

 グリフォンは腹が減っているようでまた食べ物を探して部屋中を首を横に振って動かし始める。

 て言うか乗ってしまってあれだが…この立ち位置結構良い。


 そこでようやく海が何処に行ったのかと疑問に思っていると、部屋の中に海が入ってきて腕に外から取ってきた生肉を籠一杯に詰めた状態で現れる。

 どこから取ってきたのだろうかと思ったのだが、今は気にしないでおくこととし海はグリフォンへと歩いて行くので、俺はグリフォンを宥めながら一旦制止させた。

 海がそれを置いて距離を置くとGOサインを送り、グリフォンは素早く生肉を食べていく。


「海は食べ物を探しに行っていたのか?」

「はい。単純にお腹が空いたのなら食べ物が良いかなって…グリフォンが食べる食べ物が思いつかなかったんで生肉を急いで取りに…ブライトが寒そうにして居ますよ」

「寒いよ…ここから出て行こうよ…」


 因みにダルサロッサは既に部屋の外に退避済み、素早い奴だと感心しつつも俺は部屋の外へとグリフォンを連れて行く。

 少しずつではあるが暖かくなっていく現状に少しずつだがグリフォンは安心したようで、この様子なら一旦降りても大丈夫だろうと俺はグリフォンから名残惜しそうに降りる。

 すると、グリフォンは俺の頬に嘴を近づけて頬ずりをし始める。

 どうやら俺に懐いたらしく、何故餌をとって生きた海でも無く、炎を付けてくれたギルフォードでも無く俺に懐いたのだろう?


「ソラに懐いたようだな。まあ…良いんじゃ無いか?」

「ですね。ソラが面倒を見てくれるでしょうから」

「良いな。ソラは何で懐かれるの? だったら俺も上に乗っかりたい」


 グリフォンに乗っかろうとするレクターだが、それをグリフォンは物凄く嫌がる。

 けたたましいまでの声を上げこれでもかと言わんばかりに警告を発するグリフォン、落ち込むレクターを全員で無視する。

 するとグリフォンは俺の服の中にいるブライトに気がついたようで、そっと顔を近づけていく。

 すると怯えるブライトだったが、そんなブライトの顔を舐めるグリフォン。


「怯えると相手も怯えるぞブライト。堂々として居るのが仲良くするコツだ」

「分かった。僕ブライト」


 前後不覚状態に陥っているようだと判断した。


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