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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
アメリカン・シービルウォー《上》
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反撃の時 9

 あの施設がなんなのかを今異世界連合軍の部隊が直接乗り込んで調べている間に昼食を取っておくことに、ギルフォードはダルサロッサと共にレインの所へ、アンヌはレクトアイムの様子を見に行ってくると言って離れていき、結果元通りのメンバーが現場に残っていることに。

 用意されたお弁当を渡されるのだが、海がその蓋の付いたお弁当をジッと見ながら何故か開けることを躊躇っている。

 何故躊躇うのか全く分からないまま俺達はお弁当の蓋を開けないようにしながら訪ねると、海は周囲に気を使いながらおずおずと話し始めた。


「いや…軍のお弁当ってあまり美味しくなくて簡素なモノが多いって聞いたことがあるから」

「それって戦時中の日本軍とかの話だろ? これ見た感じガイノス帝国軍が作った奴だろうからむしろ…」


 俺が代表してお弁当を開けてみると案の定中は軍が食べるお弁当と言うには豪華すぎるおかずの数々。

 お弁当は大きく分けて二つあり、一つはカツサンドとハムと辛子マヨネーズが入ったサンドイッチ、もう一つは色取り取りのおかずが入ったお弁当。

 もう…軍が食べるようなお弁当ではない。


「そう言えばソラ君は戦場に顔を出したときに食べたことがあるんだっけ? でも…私食べきれるかな…」

「食べられなかったらエアロードが食べるだろ。腹が減っているんだから。ブライトは食べきれるか?」

「大丈夫だよ。食べきれなかったらエアロードさんの口の中に突っ込むから」

「それでいい。良いか? あそこに居る風竜は残飯処理班だからな」

「お前! ブライトにそんな事を言えば実行するだろうが! 食べるけど!」


 食べるなら突っ込まないで欲しいと願い、俺達は改めてお弁当に手を付け始める。

 ほんとの軍が食べるようなお弁当ではないし、他の国の軍隊からドン引きされるようなレベルの装いで、中には食べることそのものを躊躇う人間も。


「でも、どうしてこんな感じのレベルのお弁当なんですか?」

「勿論戦場で実際に食べるのなら簡易的な奴があるんだけど…まあ、それでもあのレーションは少々豪華過ぎるだろうけど、それでも基本ガイノス帝国軍は追い込まれたことが無いし、いざ戦場で食べるのなら少しでも兵士に「食べて良かった」と思えるものを、そして栄養価の高い食べ物を提供するんだ。金回りは良い方だしな」

「まあ…常に攻めてという手ばかりを選ぶガイノス帝国らしい考え方だと思うけどね。父さんは昔っからよく食べていたらしいな。妙なところで貧乏性があるから。ほらレクターももうおかわりしているし…」


 まだ俺と海が半分も食していなのにレクターとエアロードはすっかり食べきっており、給仕係のオバサンの所へと二人で走って行く。

 あのバカは俺達の目的を忘れているのかもしれない。

 すると三分の一を食べたところでジュリがリタイヤ、その残りのお弁当をレクターとエアロードが奪い合いを開始し、その数秒後にブライトが半分ほど食べた所でリタイアした。

 その後、エアロードの口目掛けてブライトはお弁当の残りを突っ込んでいく。

 どうやらあの時の言葉にまるで嘘は無かったらしい。

 もがき苦しみながらお弁当を食していくエアロード、ブライトは内心満足したのか俺の元まで歩いて行くと、そこでようやくアカシが居ないことに気がついた。


「アカシは? 遊ぼうと思ったのに」

「アンヌの所だよ。一緒にお弁当を食べるって…おや? アカシとアンヌが帰ってきたな。どうしたんだ?」

「いいえ。レクトアイムはまだ目を覚ましそうにないですし、その…私たちが食べるにはお弁当の量が多すぎて…」

「今度から量を減らして貰ったらどうだ? 一般兵に配ることを前提の食事だからな。アカシも残ったのならエアロードの口の中に突っ込んだらどうだ? 喜ぶぞ」

「駄目ですよソラさん。そのように品のかける行為をアカシに強要しては…」

「はい。エアロードさん! 上げるね!」

「アカシ!? そのようにお弁当の外箱ごと突っ込んではいけません。せめて一つ一つ丁寧に口に運んでください」

「ねえねえ。そのお弁当いらないなら俺に頂戴」

「え? レクターさんはいるのですか? 勿論よろしいですか…駄目ですよアカシ! 面倒だからって強引に纏めて突っ込んでは!」


 ツッコミが渋滞しているなと思いながらあくまでも他人事の顔をしながら顔面蒼白のエアロードの状態を見守っている。

 すると最後の食べ物を突っ込んだ所でそのままぶっ倒れるエアロード、ピクピクと手足が動いているのが俺にはやばいという警報音に聞こえてしまう。

 俺は急いでエアロードに片耳を当てて確かめるとどうも胃が一杯一杯になっている上、胃が爆発寸前まで追い込まれている。

 呼吸がまともに出来ておらず、窒息死寸前という状態である。

 するとどこから現れたのかシャドウバイヤとヒーリングベルが近くまでやってくるのだが、二人はエアロードの顔を覗き込むだけだった。


「お願いです。お二人とも助けてください!」

「と言われてもな…食あたり…じゃないか…」

「そうですね…胃の吸収を早める薬でも投与していたらどうですか? 今は小さな体ですし直ぐに回るでしょ」


 アンヌが急いで薬を点滴の要領で投与していくと、あっという間に復活を遂げたエアロードは俺達を非難に満ちた目で見てくる。


「この人殺し! 人でなし!」

「いや人殺しではないのでは? ブライトとアカシは竜だから人でなしにはならないしな…色々と発言にツッコミどころが多いんだけど」

「そんな事は良いんだ! 呼吸できなかった。死ぬかと思ったぞ!」

「と言われてもな…突っ込んだの俺じゃないしな。それに…お前が普段からしている食べ方だろ?」

「良くエアロードさんが食べている方法だってアカシから聞いたから…」

「良くエアロードさんがしてるもん! 良く見てるもん!」


 エアロードがぐうの音も出ないような表情をしながらも悔しそうに地団駄を踏んでいるのだが、何も言い出せないままジュリの方へと走り去っていく。

 普段からして居ることのなのに、アンヌがワタワタしはじめ、シャドウバイヤとヒーリングベルが「気にしないで良いですよ」とそっとフォローする。

 エアロードがジュリの胸元へと入り込もうとするのを俺は殺気を隠さないようにしながら睨み付ける。


「ど、どうしてお前はこの状況で…」


 お前は俺の地雷を容赦無く踏み抜くな。

 そこに入ったらエアロードに未来はきっと存在しないだろう。


「そんな事より…皆食事は終えたのですか?」

「そういうヒーリングベルとシャドウバイヤは食べたのか?」

「ええ。先ほど…少しで良いと言ってあるので食べきりました」


 こういう所はちゃっかりしており、俺達の見ていない間にすっかり食べ終えているようだ。

 後はギルフォードとダルサロッサだけが食べ終えていない所で各々待っている間、近くを探索でもして待っていることに。

 俺は一人森の中へと入っていき、周囲を散策しているとブライトが俺の服の中へと入っていく。


「何処行くの? 何処行くの?」

「そうだな……その辺をブラブラと…」

「ここで俺様と少し話をするというのはどうだ? 異能殺し…」


 後ろから聞こえてくる声に俺は全神経を緊張させ、振り返るのだがそこには誰もおらずその代わり真上にボウガンが座り込んでこちらを見下ろしている。

 ニューヨークの事件依頼の再開という事になるが、あえてギルフォードの居ない間を狙っている所を見ると考えての行動なのだろう。


「少しは強くなったのかな? それとも…まあそれは良い。どうだ? 俺が送った情報は役に立ったか?」

「情報?」

「おやおや…天竜ジャルトの情報を君たちに送ったのは俺だぞ」


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