命は散り皇帝は笑うだろう 6
師匠は異世界会議場への道すがら多くの民間人を救い、部隊を異世界会議場から広範囲に散らばらせ、救出を任務として言い渡した。
同時に自らは異世界介護場へと向かうことになるのだが、これが意外と重労働で、異世界会議場一帯は突破するだけでも一苦労だったりする。
実際、俺と師匠が異世界会議場へと突入したのは夜の九時を過ぎようとしていて、異世界会議場前の広場では二十人態勢で警備されており、その数が多いのか少ないのかがどうも分かりにくいが、師匠は何の疑う事も無く突っ込んでいくのだが、敵もそんな馬鹿正直に真っ正面から突っ込んでくる奴を見逃すわけが無い。
アサルトライフルの銃口を師匠に向け、俺はそれを防ぐ為に前に出て行こうとするのだが、師匠は敵が銃の引き金を引こうと力を込めた瞬間に飛永舞脚で移動速度を上げて敵の懐まで一瞬のような速度で近づいていき、敵地のど真ん中で大剣を一回り振り回して衝撃波と斬撃を繰り出すことで敵を一掃していく。
俺はその衝撃波をなんとか掻い潜って師匠に追いつき、師匠は俺が追いついたと判断すると再び走り出していく。
異世界会議場。
本来ならここで今後の話し合いが行われる予定だったが、今は閑散としており建物の中には至る所に遺体が残っており、所々戦闘の痕が残っているのにエコーロケーションで探ってみると議会場にしか人が集まっていない。
師匠が議会場へと走って行くのを追いかけようとしたところで、真上からの攻撃のため俺はバックステップで回避し、師匠は議会場への廊下で一旦制止する。
俺と師匠は真上を見るとキュキュとアンテルが俺を見下ろしており、二人とも俺に対して敵意を放ちながら、それでいて無表情を向けてきた。
「ソラ。任せるぞ!」
俺は師匠を止めようと走り出そうとするが、それをキュキュとアンテルの二人が再び邪魔をした。
何か嫌な予感がする。
ここで一人で行かせたら駄目なような、そういう思いで叫ぼうとしたがそれすらも俺に対して邪魔をしてきた。
二人は少ししたまで降りてきて、俺に向かって見下すような目を向けてお互いの手と手を合わせる。
「師匠……倒すしか無いのか…」
師匠が気がついているのだろうか…議会場の中に子供が居ると言うことに…席と席に挟まるように、まるで隠すように配置されているあの子供…何か嫌な予感がする。
師匠のエコーロケーションは完全じゃ無い。
俺のようにエアロードとシャドウバイヤの能力を駆使した『パーフェクトエコーロケーション』では無いため、ある程度の隙間は自分達でなんとかしないといけない。
心臓の鼓動を魔導機や魔導で増幅しそれの反射によって周囲を索敵する能力エコーロケーション、それは同時に距離が離れていったり、障害物が密集していると分かりにくいという欠点もある。
「邪魔をするなら……ぶっ倒す!」
俺は駆けだしていき、同時に中に隠れているエアロードとアカシに「動くな」と告げてから緑星剣を振り抜き、風の刃を纏わせてそれを二人に放つが、二人はその攻撃をジャンプ一本で回避して俺の周りに百を超える真っ赤な矢と球体を同時に放ち、俺は襲いかかってくる攻撃を掻い潜るために走る速度を上げながらエコーロケーションを展開する。
足下から打ち上げる形で襲いかかってくる真っ赤な矢を体を仰け反る形で回避、そのままバク転で距離を置いていると、今度は真っ赤な球体が俺に後ろから襲いかかってきた。
俺はその攻撃をジャンプで回避しながら俺は剣を真下に向けて意識を床に向けて落としていく。
そのまま頭の中に地面を盛り上げる形でそのまま緑星剣を振り上げるとロビーの床が盛り上がっていく。
「竜撃。土の型。土流城石」
盛り上がった土は四階まで突き抜けになっているロビーの中の構造をがらりと変え、俺は三階に作られた土の足場へと降り立った。
この状態なら俺の居場所は分からないだろうし、邪魔も出来ないだろうと思いこの隙に会議場へと急ごうとするのだが、前と後ろから襲いかかってくる矢の攻撃を俺はライトサイドステップで回避する。
「俺の居場所が分かる? エコーロケーションのような広範囲索敵能力があるとは思えないが……もしかして俺達の戦い方がバレている?」
その可能性が全く考えていないわけじゃ無かった。
これだけこのアメリカの地で戦ったのだ、俺達の戦法を学習しても別におかしいわけじゃ無いが、それでもこんな短期間で俺達の戦い方を学習できたとは思えない。
そう思って敵の配置をもう一度エコーロケーションで探ってみると一人は五階の死角に、もう一人は二階の同じく死角に居るので俺の位置が分かるはずが無い。
もう一度走って会議場へと向かおうとするのだが、敵はやはり俺の位置が分かるようで向かわせないように攻撃がやってくる。
バックステップで回避して再び距離を置こうとすると、今度は弾幕として俺の視界一杯に真っ赤な矢と球体が襲いかかってきた。
俺は緑星剣を振り回して風を強めに掴んでから大きな斬撃を作り出して、それを一点に収束させてから大きな斬撃を作り出す。
「竜撃。風の型。風見鶏【極撃】」
建物の一部を刈り取るほどの一撃で攻撃を吹き飛ばしてから、その際に生じた隙に俺は再び掻い潜ろうとするのだが、やはり敵は俺の行動がハッキリ分かるようで、俺はバックステップで攻撃を回避する。
「どこだ? 何かトリックがあるはずだ。この死角の多い構造の中で、俺の居場所を完全に把握するには…あの二人以外のこの場所には人は居ない。何かおかしな物体が飛んだり隠れたりしている訳じゃ無い。なんだ?」
物陰に隠れていると敵は真っ赤な矢と球体を俺の右側に作りだし、俺はその攻撃を距離を開けて見ると、俺は柱の所に奇妙な紙が貼られているとようやくの思いで気がついた。
あれが攻撃の要になっているのではと予想し、そのうちの一枚を剥がそうと走り出すと敵はそれを守るように攻撃を俺に向けてくるが、しかし急な攻撃だったのか、今までと違い攻撃に隙間がある。
俺はステップで攻撃を回避してその紙を掴むと紙の何かに反応して崩壊し始める。
「やっぱり…これが敵の目の代わりになっているのか…即席で用意できる物じゃ無い。明らかに何日も…下手をすれば何ヶ月も前から俺達の戦い方を学んでいるという証拠だ」
この状態だと師匠への対処法を心得ていると見ても良いだろう。
まずいという気持ちもあり俺は緑星剣を地面に突き刺す。
脳内でイメージした攻撃を土の型で作った物体全域に行き渡らせ、俺は土で出来た槍で敵を攻撃する。
すると、敵はその攻撃を素早く移動して回避し始め、俺はその移動に合わせてまず真上の敵を襲うため敵の一階下へと辿り着く。
そのまま上へと緑星剣を突き刺す。
「竜撃。土の型。土ノ槍」
真上にいたのはどうやらキュキュの方だったらしく、キュキュは体を仰け反って攻撃を回避したのは良いが、その際に体勢を大きく崩して尻餅をつく。
その隙に真上へと移動してキュキュに向かって走って行くと、アンテルの方が俺の邪魔をするために矢の攻撃を作り出す。
しかし、矢と球体が揃ってタイミング良く襲いかかっていくから厄介なのであって、単体の攻撃なら特に苦戦はしない。
斬りかかろうとした瞬間にキュキュの体が下へと消えていき、俺の斬撃は空を切る。
すると、足場である俺が作った土の型が崩れていき、俺はエコーロケーションで索敵してみると足場の一番下をアンテルが削っていたのが分かった。
下に着地し、俺はエコーロケーションで広範囲に索敵してみると、俺は………真っ当ではいられないような感情を覚えた。
俺の邪魔をするために着地した二人に俺は雄叫びを上げて突っ込んでいった。
「俺の………俺の邪魔をするなぁ!!」
俺は風の型で敵の脇腹を瞬時に切り裂いて俺は駆けだしていった。




