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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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海洋同盟へ… 6

 ギルの強烈な一撃が甲板に猛烈な炎で燃え上がり、ガイノス兵は炎の一撃を回避するのに必死で反撃の機会を見付けられずにいた。

 実際押され気味の状態が続くが、逆に言えばこの状態を維持することが出来るのはギル自信にこれ以上進撃をするつもりが無いのも理由だ。

 ギリギリの場所を陣取り、同時にこの場に敵を集中させようとしている。

 ガイノス兵は裏手から回り込もうとするが、Aチームはその辺もぬかりなく部隊を配意し、砲台の物陰を上手く活用した戦術で翻弄していく。


 物陰から飛び出るアサルトライフルの銃口を捕らえるだけでは正直難しい、だからガイノス兵は至近距離まで近づくことが出来ない。

 黒服の集団であるAチームもこれ以上進撃することも無く、左右に伸びる通路は細すぎて複数で走りきるのは難しい。


「突っ込めないのか!?」

「無理です!下手に突っ込めば銃弾でハチの巣になりますよ!」


 ガイノス兵は進路を見いだせずにおり、後ろからやってくる部隊もまるで進撃が出来ずにいるのが現状。

 それだけではなく、ギルが時折炎の弾を上空から落としてくるのも一つの原因に鳴っている。


「クソ!ガイノス軍の戦艦を攻めるなんて前代未聞だぞ!貴様達はその辺がよく分かっているのか!?」


 Aチームが答えるはずも無く、モクモクと足止めだけを行う間、Bチームは格納庫への強引な着艦を行っていた。

 滑り込む突撃用の飛空艇は火花を散らしながら大きな衝突音と共に衝撃を周囲に与える。


「下手の殺す必要はない。逃げる奴は相手にするな!素早く地下牢獄を目指すぞ」


 格納庫を制圧するのに時間はさほど掛からず、あっという間に戦艦内のカードキーを入手して廊下へと走り出す。

 戦艦特有のパイプが見える廊下を走り出し、階段を下っていく速度をなるべく早めてから目的の場所へと辿り着く。

 ドアの右側に備え付けられているカードキーを差し込み、ゆっくりと鉄のドアが横にスライドしていく。

 重苦しいドアとは裏腹に、何の音も出さずにドアは開き、同時にその奥にいるのは牢獄の柵とその奥にどっしりと座るボウガン。


「やっとお迎えの時間か?」

「ああ、フォード様からお前を迎えに来た主力隊だ。復讐の時間は無いぞ。早くここから出ていく。合図はお前にしてもらわなければならない」

「合図とは?」

「メインスラスターの一基をお前の手で破壊するんだ。新しい魔導シューターは既にここにある」


 そう言いながら前の魔導シューターとはまた違うデザインの魔導シューターをボウガンへと差し出す。

 右腕に装着し、その感触を確かめる。


「へぇ………最新式か?情報処理能力がけた外れに高いと見た」

「ああ、前回の約倍だと思えばいい。より早く矢を打ち出すことが出来るはずだ」


 ボウガンは囚人服のまま牢獄を飛び出していき、ちょうど牢獄へと見に来たガイノス兵二人と接触する。


「だ、脱走!? 上に報告しろ!」

「ボウガン先に行け」

「いや、この最新式を確かめたい。魔導構築術式開放。《爆撃》属性を付与」


 オレンジ色の矢がシューターに現れ、魔導の矢は《爆撃》を付与された状態で容赦なく左右の壁に二か所、床に一か所模様が現れる。

 同時に爆発が連続で周囲から兵士目掛けて襲い掛かり、爆発が収まったころには兵士は遺体に変わっていた。


「すげぇ!《爆撃》属性がこんなに簡単に使えるとは!これさえあればあのガキ共も!」

「はぁ………すっきりさせたらいい加減脱出するぞ。海洋同盟海域内に近づいている。そろそろ撤退する必要がある」

「あのガキ共は?」

「近くの飛空艇だ。それを聞いてどうするんだ?」

「分かっているだろ!あのガキ共も一緒に殺してやる!」

「時間が無いと言っているだろ?フォード様を怒らせたいのか?それにこれを聞いたらお前は必ず意見を変えると言っていたぞ」


 ボウガンは右耳を近づけていき、小声を聞いている間に顔の歪みを最大値まで高めていく。


「いいねぇ………湧き上がるじゃねぇか!最高の瞬間だ!いいぜ。我慢してやるよ!」

「ならいい。さっさと撤退するぞ。お前は合図を送る必要があるんだからな」


 ボウガンは自分の興奮を周囲の壁にぶつけていく。

 高鳴る鼓動とは別にボウガンの気持ちは高みを知らないまま高まり続けていた。



 ボウガンは救出される少し前の事、ギルは大きな一撃を鉄の床目掛けて叩きつけ、周囲には波状に炎を広がっていく。

 重い一撃がガイノス兵全体に重要なダメージを与え、起き上がる事すら叶わない者ばかりが集まる烏合の衆になり果てている。


「これ以上抵抗しなければ無暗に殺したりしない」

「我々はガイノス帝国軍兵士!敵に屈したりしない!」


 一人の兵士が起き上がろうと両腕に力を込め、全身にかかる痛みに悲鳴を上げそうになる。

 あまりにも辛い痛みに表情を歪ませるのだが、ギルはその前に剣を振り下ろそうとする。


 一筋の風が通り過ぎ、兵士とギルの間に強烈な風の塊がはじける。

 ギルはとっさに後ろに跳躍し、両足を床に付けた頃には先ほどまで自分がいた場所に星屑の鎧が姿を現した。


「あの時の男か?いや…………何かが違う」


 中身を見ようとマスクをじっと見つめるのだが、同時に感じた違和感の答えはマスクにあった。

 目が見えるはずの場所には空白があった。


 要するに中身が無い。


「意思だけか?死人の意思が力だけを動かしているのか?意思だけとなっても立ちふさがるのか!?」



「ソラ………起きてくれ」


 隆介から起こされた気がしたが、俺の意識は簡単には置きそうにない。


「頼む起きてくれ………堆虎が勝手に動いているんだ。ラウンズの数を数えてくれれば分かる」


 そう言われても俺にはラウンズの数え方すら分からないのが現状で、隆介の必死な声で俺はようやく目を開けた。

 目の前に星屑の鎧が覗き込むという最高に心臓に悪い状況に悲鳴を上げそうになっている。


「な!? おま!」

「話は後だ。堆虎が勝手に動いているんだ。俺達は止めたんだ」

「話せるようになったのか?」

「それも後だ。それより堆虎が勝手に動いているんだ。既に戦艦に乗り込んでいる」


 俺は体を勢いよく起こし、ハンガーにかけたいた自分の私腹に手を伸ばして素早く着替えてから部屋を飛び出る。

 甲板エリアにまで早足で走り降りていき、甲板の柵から身を乗り出して下へと下がっていく戦艦の甲板を眺める。


「下に降りているのか?烈火の英雄と堆虎が戦っている?なんなんだこの状況は?」

「知らない。しかし、烈火の英雄の接近に最初に気が付いたのは堆虎だ。だから勝手に動いたんだ。俺達はソラを起こした方が良いといったんだ。ソラから離れた状態で破壊されたら最悪消滅しかねない」


 それこそ最悪の状況だろう。


 俺は左右を確認し甲板エリアを走って確認していき、ある道具が柵に備えつけられていると気が付いた。

 それはシザーワイヤーと呼ばれるフック付きのワイヤー装備、本来であれば飛空艇が緊急時に使われる道具で、他の飛空艇に問題が起きた時のみ使われる。

 俺は素早くシザーワイヤーの照準を戦艦の甲板エリアへと捉え、風や速度をすばやく計算に入れ、引き金を引く。


 シザーワイヤーの先端は戦艦の砲台の1つを捉え、飛空艇と戦艦が今繋がった。

 俺は強度を確認してからワイヤーの上に足を付けると同時に足とワイヤーを話さないように魔導の力の1つ《土》属性で強制付着させる。


 足元から火花を散らすのではないのかと思われるほどの速度で俺の体は戦艦へとまっすぐ向かって行った。


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