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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
ニューヨーク・アップヒーヴァル《下》
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悪魔の闇へとようこそ 3

 きっかけはエアロードで、エアロードが「アックス・ガーランド」の悲鳴が聞こえたと突然言い始め、父さんがオークション開始までは元に戻っていると言うことになりソファに偉そうにくつろいでいると「じゃあ調べてみたらどうだ?」と聞いてくるので俺達はヴァルーチェとシャインフレアの協力で師匠が閉じ込められているキューティクルの部屋を覗き込んだとき俺達の目に飛び込んできたのは綺麗な女性が二人と師匠の三人がキューティクルに拷問を受けている光景だった。

 最初こそ耐えていた師匠もあっという間に悲鳴へと変わっていき、最後に「助けてくれ」という叫びを聞いて全うでいられるわけが無い。

 いつの間にか立ち上がり部屋を出るためのドアノブへと手をかけようとしていたときジュリが後ろから抱きついて阻止する。

 俺は小さな声で「離してくれ」と告げてみても、ジュリはギュッと抱きしめたままの状態から離してくれない。

 すると父さんが落ち着いた態度で「落ち着け」と言ってくるので俺は怒った声で振り返りながら怒鳴り声を上げる。


「誰せいでこんなことになっていると思っているんだ!? 父さんが余計な事をしなければ助けられたんだ!」

「だから落ち着けと言っている。商品になっているあいつをキューティクルが殺すとも思えんしな」

「だからって…何で…」

「趣味だからだろうな…」


 ジャック・アールグレイが落ち着いた態度を見せながらそう声を漏らし、ケビンもようやくの思いで気持ちを抑えてソファに座り込む。

 俺の方は全く気持ちが落ち着かない。

 少しでもジュリが離したらその途端飛永舞脚で駆けだして走り出しかねない。


「あの女は悪魔。人の不幸を見て楽しむ趣味がある。先ほどの女優の態度を見ればなんとなく分かる。虐めて楽しんでいるのだろうな。それもプライドの高い人間や頑丈そうな人間を選んでプライドや心をへし折って楽しんでいる。得にアックス・ガーランドのような人間の心をへし折れたら楽しそうな顔をするだろうしな」


 実際キューティクルの表情は今まで見たことの無い顔をしており、それを見ただけで心の奥から殺意と怒りがどんどん湧き出てくる。

 開始までまだ15分はある。

 残り15分以上もこの状態が続くのだと思えば俺は耐えられそうに無い。

 するとジャック・アールグレイが「切れ」と命令するような声を発した。


「これ以上お前達の感情を逆撫でするような映像を流されたら救出作戦が失敗しかねない。それで失敗したら個人的にも困るしな。それに…そっちの坊主もいい加減限界そうだぞ」


 ジャック・アールグレイが指さす先にいる海も手先が震えており、今にでも駆け出しそうになっている。

 レクターだけは唯一知らん顔を続けているが、多分気にしないようにしているのだろう。


「ガーランドの奴は私やサクトと違って拷問を受けた経験が無いからな。どうやって対処すれば良いのかが分からないんだろう。痛覚を切る方法は拷問を受けた経験をした人間にしか分からないからな。それで無くても普通とは違う拷問方法だ。見た感じ痛覚を与えている感じだな…それも汗の量からしても火あぶりとかいうレベルじゃ無いな」


 そんな拷問を受けて師匠の心が保てるわけが無い。


「まあ、元々頑丈な方だが、心まで頑丈なわけじゃ無い。実際あいつ戦争中にも何度も迷いを抱いていたしな。戦争中に迷っている人間が決して強いわけが無い。意外かもしれないが…あいつは普通に心が折れるぞ」


 シャインフレアとヴァルーチェはこれ以上は俺達の精神上よろしくないという理由から切ってしまった。


「アックス・ガーランド…前大戦の英雄か…確かにそこの誰かさんやサクトという女と比べたら確かに戦争中に孤立するという機会は少なかったと記憶している。アベル・ウルベクトもサクトという女も一回ずつは捕まっていたはずだし」


 意外という話をしていたくは無いが、座っていないと落ち着かないと思いジュリに「もう大丈夫だ」と言いながら二人で手を結びながらソファに座り込む。

 その際に小さくジュリの耳元で「このままでいてくれ」と頼み込んだ。


「まあ…ああいう奴らは重要な情報を持つ人間を殺そうとは思わないし、一回耐え抜くと油断するから。その隙に逃げ出す事は簡単だ。サクトの奴の場合はその際に建物を壊しているという伝説が残っているから」

「ああ。聞いたことある。師匠が恥ずかしそうに話してくれた。でも…何でそれ恥ずかしい話なんだろ? 女だからかな?」

「フン。どうせ女を武器にして隙を作ったとかそういう理由だろう」


 ジャック・アールグレイが適当な事を言って混ぜ返そうとするが、それを父さんが「馴れ初めだしな」と呟く。


「サクトの馴れ初め話だからな。私たちの間では結構有名な話だ。その時に唆した共和国兵が助けてくれて、一緒に滅ぼしたというのはな。何でもその男も当時婚約者だった女を共和国に一方的に殺されて納得していなかったと言っていたか。最も…スパイだと疑われていた時期もあったが、それを乗り越えて二人は結婚したんだったか」

「物凄い結婚話を聞いた。師匠に聞いてみよ!」

「なんであんな光景を見せられて普通でいられるんだよ。普通興奮したり、テンションが落ち込んだりするものじゃ無いのか?」

「だって…商品になっているのに殺される心配は無いでしょ? その上でトラウマになるほどの事をしてもヴァルーチェがいれば記憶を消してトラウマを消せるわけだし…ねえ」

「そうですね。ジュリから頼まれていますし、それに今度ケーキバイキングへと連れて行ってくれるという約束ですから…」


 だからと言って……何で耐えられるのかがまるで理解出来ない。

 オークション開催まで時間があるが俺とジュリはスケジュール表をジッと見つめるだけ。

 そこには父さんが最後から数えて八つ前で、師匠は更にその直後らしく、仕掛けるのはやはり師匠が終わってから仕掛けるしか無い。


「とりあえず作戦が本格的に始めるには十四時半を超えそうだな……」



 キューティクルは他の女二人蹴っ飛ばして石像に戻し、アックス・ガーランドはそれを見て石像に戻れることを安心した。

 まさか石像に戻る方を安心する日がくるとは想いもしなかったが、そんなアックス・ガーランドの顔を見てこれまた悪魔みたいな表情を浮かべながらアックス・ガーランドに再び最高出力の痛みと熱を精神に叩き込み始め、アックス・ガーランドはそれを感じ取って悲鳴を上げながら転がり込む。


「別に喋れって言わないわぁ。だから……私何時までも立っていたくないのよ…分かる?」

「ウガァァ! 嗚呼ぁぁ!! わ、分かりましたぁ!」

「じゃあ早く椅子になれ!! このデカ物!! あんたの販売開始までには一部始終の記憶を消して上げるから安心して悲鳴を挙げな!」


 自らの意思で椅子にさせてその背中に座りながら思いっきり手で背中に平手打ちを食らわせる。


「よく出来ました。少しぐらい素直になったわね。ほら…何か言うことは無いの?」

「…あ……ありがとうございます」

「フン! やっぱり最高ね。ほらほら…もっと言うことあるでしょ?」

「…な…何かすることは…ありませんか?」

「違うでしょ?」

「…………もっと……もっと虐めてください!」

「よく出来ました!! ご褒美に最高出力の一歩手前の痛みを…今度は電流で与えてあげる」


 アックス・ガーランドの前身に電流が走っていき、大きな悲鳴を上げながらなんとか椅子の状態を維持しようと必死になる。

 単純な拷問だったらアックス・ガーランドでも耐えられる自信があるが、人の域を超えた拷問は耐えられる自信が全くない。

 それで無くても元々拷問を受けた事が全く無い身、今キューティクルが何をしているのかがまるで分からなかった。


「もしもし? 何々?」


 電話の主はメメントモリだった。


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