悪魔の闇へとようこそ 2
キューティクルで性格が非常に悪い、彼女が目掛ける対象というのはプライドの高い人間や幸福な人間ばかりで、普段絶対に虐げられる側には成らない人間を虐げるのが趣味なのだ。
こんな悪趣味なオークションを始めたのも、そうやって商品として売り飛ばされるような人間を売り飛ばされるまで虐げて楽しむのが趣味なのである。
実際オークションが始まるまでの三十分間をそうやって楽しんでいた。
椅子は有名な大女優を裸にしてしまってから座り、その女優もまた涙を流しながら悔しそうに表情を歪ませ、彼女の顔の下には涙でシミが出来ている。
そして彼女はアックス・ガーランドの石像化を解除し同じように裸にして今度は足置き場にしようとしていた。
勿論アックス・ガーランドはそんな行動を拒否するのだが、するとキューティクルは右の人差し指を立ててアックス・ガーランドの全身に電流が流れていく。
苦しみながら膝を打ち、床に両手をついて苦しんでいるとその背中にキューティクルは足を乗せて楽しむ。
表情を歪ませながらも抵抗しようとするのだが、体が思いのほかちゃんと動かない。
キューティクルはこの状況を楽しんでいるように思え、更に別の女性の石像を解除して電流を流しながら楽しみ出す。
悪趣味極まった趣味にきっと誰もが表情を歪ませて睨み付けるだろうが、キューティクルはそんなことなんてまるで興味を示さない。
「本当ならもっと生意気な男が良いんだけど…こういう状況でも叫んで楽しんだよね。そんな叫びが虐めていく中でどんどん小さくなっていくの…そしたら最後には「すみません」と頭を垂れて謝罪する。これが楽しくない訳がないでしょ?」
そんなことを言われてもアックス・ガーランドは納得できないし、納得したくないのでひたすら黙るだけ。
するとキューティクルはそれが楽しくないのだろうムッと表情を曇らせ、左手の人差し指を立てると真っ黒な炎が灯る。
するとアックス・ガーランドの全身から汗が噴き出していき、同時に悲鳴を上げながらのたうち回りたくなっていた。
しかし、キューティクルはそれをまるで許さない。
むしろ立ち上がってアックス・ガーランドの背中を更に強くヒールをめり込ませながら痛みから発する悲鳴を楽しんで滑稽な顔を浮かべる。
「ねえ…そっちの彼女は何をしているの? ちゃんと悲鳴を上げてくれないと困るじゃん! あんたの悲鳴をBGMにして楽しんでいるんだからさぁ! こっちの男に負けるんじゃ無いわよ!」
別の女性の悲鳴が更に強く高く響き渡っていき、この部屋が防音設備を搭載していなかったら誰かが様子を見に来るところである。
しかし、そこで一旦拷問を止めて冷蔵庫まで歩いて行き飲み物を取り出してグビグビと飲み出して汗を吹き出して派手に息継ぎをしているアックス・ガーランドへと近づいていく。
椅子にされていた女優も帯びた様子でキューティクルを見ているし、もう一方の女性に関しては近づいていくだけで悲鳴をあげて蹲る。
「さてさて…あんたの拷問はまだまだよね? そっちの二人は前の日に十分楽しんだし…後開始まで二十五分…あんたの悲鳴を聞きながら楽しませて貰うわよ」
「………」
「ふうん……あくまでも反抗するのね。まあ良いわ。さっきの熱量はまだまだ序の口。温度で言ったら鉄ごてを全身に押しつけられたような痛み。次は……全身を火あぶりにされたような痛みを受けてもらいましょうか…」
アックス・ガーランドの表情が流石に切り替わり、顔が若干青ざめて行くのをキューティクルは楽しそうに見守りながら左手の人差し指を立てていく。
しかし、ここで「止めろ」なんて言えばアックス・ガーランドのプライドが決して許さなかった。
そして、キューティクルはどうしても聞きたいことが存在していた。
やり方なんていくらでもあったが、オークション会場でアックス・ガーランドの順番が来るまではまだまだ暇なのである。
「ねえ…聖竜って今どこにいるの?」
拷問を始める前に聞いてみるとアックス・ガーランドの表情が無表情へと変わっていく。
「面白くないなぁ…じゃあ開始ね。とりあえず2、3分ぐらい様子を見てみるからね」
そう言って左手の人差し指に真っ黒な炎が灯り、アックス・ガーランドの全身から先ほどとは比較にならないような汗が噴き出していき、それと同時に火あぶりにされるような痛みが襲いかかる。
悲鳴を上げないように耐え忍び、痛いという感覚が襲いかかるがそれでも死ぬ気配をまるで見せない。
「まあ…死なないわよ。ショック死もしないから安心してね。あくまでも殺さないように、死ぬレベルの痛みを与えるだけだから。そっちの二人なんて何十回死ぬ痛みを受けたか…ああ…楽しかったな」
「ウガァァ……」
「耐える。耐える。もうじき2分かしら? 全然余裕そうだし…そろそろ一段階上に上げてみましょうか…」
黒い炎が更に燃えさかっていくと流れる汗の量がもはや尋常では無い。
燃え上がっているような痛みと熱量から、体の内臓が燃えているような痛みと内側から火を噴くような錯覚を与えられるアックス・ガーランド。
悲鳴を出すことが出来ないままあくまでも体勢を変えられない状態がずっと続いている。
「そうね…ずっと椅子って辛いわよね…暴れ回られても困るから力に制限をかけつつ…はい。解除」
すると今までの苦しみを表現するように全身を使って暴れ回り始める。
もう…アックス・ガーランドの意識なんて途切れそうになっているのだが、それでも意識がまるで切れる気がしない。
それは当然のことであり…キューティクルが全てを支配しているのだから。
そんな苦しみの表情を見ながら滑稽な顔をし、同時に何かを思い出す。
「その表情を見るとあのケビンという女の親を思い出すわね。最後には「助けてください」って懇願したものだけど…あなたはどうかしら?」
アックス・ガーランドの顔を覗き込んで聞いてみると、小さく漏らすような声で「…こ、断る」と言うので左手の人差し指の黒い炎が更に勢いを増していく。
すると今度は全員を火口に叩き込まれたような痛み、もう即死レベルの痛みを受けて本格的な悲鳴を上げていく。
体が溶けるというな痛みと熱さ、苦しみのまま白目を開き、口を大きく開けて悲鳴を上げていくと、レベルを上げてから3分後に「わ、分かった…」と心が完全に折れた。
「じゃあ教えてよ…したら楽にして上げる」
アックス・ガーランドは嫌々な声を発するために痛みに耐え忍び、「ずっと地下にこもっている」と嘘をついた。
嘘。
アックス・ガーランドは聖竜が今このアメリカまで来ているとわかりきっているのだ。
しかし、ここで聞いたと言うことが何かを聞き出したいという気持ちを理解し、咄嗟に付いた嘘。
キューティクルは笑顔を向ける。
実際アックス・ガーランドは痛みと熱で心が折れているのは事実。
これ以上の痛みを向けられたら本当に喋ってしまいそうになっている。
「そっか…あくまでも嘘をつくのね。じゃあ…喋らないでいいよ。なんとなく今の答えで分かった気がするから。嘘をついたご褒美で…最上限のレベルまで高めて上げる」
今までの痛みと熱量の中で一生感じたことが無いような感覚が襲いかかってくると、アックス・ガーランドは悲鳴を上げながら最後には「助けてくれ!」と叫ぶ姿をキューティクルは楽しんでいた。
それを見ていたソラは部屋を飛び出していきたいという気持ちがやって来て、部屋のドアに手を伸ばす。
ジュリが抱きついて「駄目!」と阻止する。
ケビンも今すぐにでも襲いかかっていき、自分の両親の事を含めて復讐をしたいという気持ちだった。
開始まであと15分。
あの拷問の時間は最低でも15分は続くとみても良いだろう。




