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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
ニューヨーク・アップヒーヴァル《下》
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エルスタイン財団 2

 メイド相手に騎士人形を召喚するという俺からすれば真剣勝負をする上では反則技なのだが、真剣勝負ではないのでその辺りを気にしないでいる。

 まあ、この場合ジュリを背負っている俺が本物という事になるが、この際相手を倒す上では関係ない。

 五体の騎士人形は緑星剣を装備し走り出していくと、俺は騎士人形の動きに合わせてメイドを付けに視界に入れるように動き出す。

 メイドがスカートの中から何かを取り出そうとするたびにジュリが風の弾丸、で妨害しつつ俺の方は緑星剣で風の流れを少しだけ変えてみる。

 メイドは動きにくそうにしているところを見計らって五体に騎士人形は『竜撃。風の型。風見鶏【演舞】』を広場中に展開していくと、後ろからレクターと海の悲鳴が響き渡り、父さんとライダースーツの男は完全無視を貫き通すのだが、メイドの体中から血が出てくるのを見たライダースーツの男はメイドをお姫様抱っこしながらさらに奥へと消えていく。


「さてさて…誰かさんが風の刃で現状を荒らし回ったから逃げられたな」

「父さんがもう少し真剣に戦ってくれればもう少しましな結果になるんだけど。まあいいや。後ろから聞こえた悲鳴は・・・」

「何するんだ!? 物凄い勢いで見えない刃の嵐が襲ってくるんだよ。その刃がゴーレムを切り刻んでくれたけどさ!」

「うるさいな。海は黙っているだろ? 黙ってよけろよ」

「それって攻撃を仕掛けてきた人間がすること!?」

「……去年の末に学校で実技訓練時に真後ろから俺達を巻き込む形で強力な一撃を放ったのは誰だ? 入院者を続出したのは誰だ?」


 レクターが黙り込むようになり俺から視線を外してしまう。


「まあ…あれはね。結構けが人が出たもんね。ソラ君も軽くダメージを受けたけど。ソラ君が緑星剣を召喚して追いかけ回していたよね」

「ああ。本気で殺意を覚えた瞬間だったりする。マジで殺そうと思った瞬間だったな」


 父さんと海が黙ってレクターを見つめるが、その二人からすら視線を外してしまうぐらい気まずそうにしている。

 昔っからその辺はまるで変化しないのだが、そんな奴に攻撃云々で怒られたくない。

 消えた通路の先に消えた奴を追いかける必要性があるのだが、この建物の広さを考えればどこかですれ違って逃げ出す可能性が非常に高い。

 しかし、エコーロケーションを真面目に使うことが出来るのは俺だけだし、ここで誰かを残すと逃げ切られる可能性が高い。


「どうする? 黙って追いかけるか。戦力を分断するか」

「そのまま追いかける。戦力を分断しても良いこと無いだろう。それに、思うことだが…彼らは逃げ出す事は無いと思うぞ。多分時間稼ぎが目的のように見える」


 まあ、それは俺にもなんとなくは分かっていたことだし、ジュリもなんとなくではあるだろうが分かっていることでもある。

 俺の背中をツンツンとつつくジュリは『下ろして』と行ってくるので、俺は少し残念な気持ちになってしまう。

 

「この施設の記録が残っているかもしれないからその辺も調べてみない? もしかしたら大統領の依頼をこなすことが出来る可能性はあるよ」

「まあ。あの喋れない双子を追いかけるよりましかもな。そう言えば…エアロードはずいぶん大人しいな」

「? 良いのか? 顔を出して」

「別にかまわないさ。俺達を気にしてくれていたのか?」

「いや…話が難しそうだし、邪魔をしたら今度こそ半殺しにされると思って」

「よく分かったな。前の時みたいに俺の服の中でゴソゴソ動いたら本気で半殺しにする」


 エアロードが服の中に入っていくのを俺は「良いから顔だけでも出していろ」と命令し、エアロードはため息を吐き出しながら顔だけを覗かせる。

 とりあえず決定された事に反論する事無く俺達は追いかけていくのだが、その過程は比較的ゆっくりと歩いて行く。


「まあ、あのメイドはソラのお陰で傷だらけになっているからゆっくり追いかけるか」


 エアロードがそのうちお腹がすいたといいかねないので頃合いを見て上に登るべきなのかもしれない。


「とりあえずあいつらを追いかけるというよりは脱出するための電力供給と情報を探すことをメインにして、一旦上がらないか? 時間的にお昼になりそうだからさ。追いかけるのはお昼ご飯を食べてからにしよう」

「そうだな……ジュリ。近くの端末から周辺地図を入手してみてくれないか? 丁度休憩室のような場所へと辿り着いたからな」


 父さんから言われて俺達は一緒になって端末探しをするのだが、よく考えれば先ほどの場所で俺が嵐を巻き起こさなければ端末探しをしなくても済んだと思うと俺は反省してしまう。

 なので真剣に探すと休憩室の出入り口の近くにそれっぽい端末を発見しジュリがケーブルを繋いでハッキングを仕掛けていく。


「!? ソラ! いつの間にジュリがハッキング出来るようになったんだ!?」


 父さんが今更な事に驚きを隠せずにおり、どこに動揺しているのか全く理解出来ないまま俺達はズレている父さんに逆に驚きを隠せない。

 ジュリはハッキングを続けている顔が少々浮かばれない感じが気になる。


「……この端末じゃ無理かな」

「この部屋では他に端末は無いぞ。いっそのことどこかの研究室にでも入り込めば良いのかね」

「じゃあとりあえずこの反対側の部屋へと入っていこうよ」


 レクターが休憩室の反対側のドアを無理矢理開けてみるとそこには植物園のような場所が現れた。

 正直突然現れる部屋中にひしめき合う植物たち、奥の方ではガラスを壊して奥へと侵入しているようにも見える。


「すげぇ……地下にこんな場所があるんだね」


 何だろうな。

 こういう場所ってゲームとかで言えば植物が動き出すよな。


「ソラ。こういう場所ってゲームとかでは植物が動き出しますよね」

「それ…俺も今思ったよ。まあ、そんなゲームみたいな事起きないだろうけどさ」

「…ソラ君達がそういうことで起きうる事態になるって分かってる?」


 残念ながらまるで理解していない。

 と思っていると俺達に何か影が差して俺達全員は上をそっと見上げるとそこには食虫植物がまるで巨大過ぎる。

 人を軽く飲み込むことが出来る大きさの食虫植物ならぬ食人植物を前にレクターはアッパーを決める。


「お前は良くもまあそんな気持ち悪い植物を殴ることが出来るよな。まあ、切らないと根本的な解決が出来ないと思うけど」


 と俺が解決策を提示すると父さんが大剣で叩き潰しながら切断するのだが、植物から緑色の血の雨が降ろうとするのを俺達はダッシュで逃げていく。

 物凄い気持ち悪い音を立てながら食人植物の肉片が血とともに落ちていくのが物凄くグロテクスだと思う。

 因みに切り裂いた父さんも流石にダッシュで逃げてくるが、そんなことをするならしないで欲しい。

 確かに解決する方法を提示しておいてなんだが、もう少し考えて欲しかった。


「逃げるぐらいならしないでよ・・・危ないところで俺達緑色の血を浴びることになる所だった…ジュリ?」


 ジュリが雨が止んだ植物園の中へと入っていき植物をそっと触れている。

 環境科へと進学を決めているジュリとしてはやはりあまり気持ちいい光景ではないのだろう。


「これって薬品なんかで巨大化しているのかな?」

「だろうな。それこそホラー映画じゃあるまいに」

「かわいそうだね。自然のままでも十分だったはずなのに、まるで誰かを襲うために改造されて」

「ジュリ……そろそろ行こう。先を急いだ方が良いだろう」

「うん…」


 ジュリは俺達の後を追いかけていく。


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