探し人はいずこに 7
タイムズスクエアに辿り着いた瞬間のレクターの最高潮のテンションを前に俺たちは顔をしかめてしまうが、まあそんな事を気にしている場合では無いので一切無視。
中心に降り立ち昨日見つけ得ておいたお店で飲み物とチョコレートのお菓子を購入してから探索開始とし、とりあえず行方が分からなくなっていたお店へと急ぐと、その少女のような人は適当な飲み物を注文してカウンターで飲んだ後トイレに向かうと言ってそれっきりになっているようだ。
念のためにと俺と海とでトイレの中を調べてみたが、取り立てて変わったところの存在しない普通のトイレ。
何か手段があるのではと二人で検討していると海が「風が・・・」と呟くので俺も神経をとがらせてみると確かに足下から冷たい風のようなものをハッキリと感じた。
俺と海でトイレの座席の後ろのタンクを動かしてみると、そこに縦に作られた溝のようなモノを発見し、俺と海でその溝に手を突っ込んで押し込んでみるとその奥に古い地下への階段を発見した。
「地下水道・・・下水道ですか?」
「みたいだな。それなりに歴史のある街だし、前から使っている下水道の出入り口をトイレで塞いでいたみたいだな。店主が知っていたのか聞いて見よう。海は司令部に連絡を取って見てくれ」
海が「了解」と言いながらスマフォを取り出し、俺はそれを確認した後に店主にトイレ裏の下水道の出入り口について訪ねてみるとやはり店主も知らなかったようで、俺たちは立ち入りの許可をもらった後、四人で地下へと降りていく。
ジュリが壁などを何度もしつこく調べており、臭い匂いに鼻をつまみながら体中に匂いが付かないように消臭効果のあるスプレーを塗りつけるとエアロードとヴァルーチェがこっちに向かって目で「自分にも」と訴えているように思えた。
仕方が無いと俺は二人にも消臭効果のあるスプレーをかけると、今度はジュリ達も同じような目で見てくる。
面倒なので全員に渡してから俺は一人下へと降りていく。
ようやく辿り着いた下水道、異臭もあるがそれ以上にエアロードが鬱陶しことこの上ない。
「おい! 俺の服の中に入り込むのは良いが、もぞもぞ動くなよ・・・この前入ってきたときは鬱陶しかったぞ」
「そんなことを言われてもこんなキツい匂いのある風を全身で浴びせられて『風竜』異名を持つ私が耐えられると思うか? 何故こんな場所に来るんだ?」
「話を聞いていただろう? 嫌だったのならホテルにいれば良かったのに・・・、お前達が飲み物を飲み干すまで待っていただけましだと思えよ」
「で? 荷物を上に置いてきて・・・本当にこんな場所に人がいるのか?」
俺のエコーロケーションがハッキリと告げているのだ、間違いなくこの中に彼女達がいるのは入ったときから分かっていた。
全員が降りてくるとジュリはタブレットを再び操作し始め、俺は皆を案内しながら目的の場所まで歩いて行くのだが、エコーロケーションでハッキリと感じ取った限り、彼女達はどうやら他にも協力者がいるようだ。
俺は大きく開けた場所の前で制止し、物陰からそっと伺うと開けた場所には様々な機材や武装した集団がうろつき回っていた。
「ジュリあそこの機材をタブレットで調べられるか?」
「ここだと無理だけど、機材にケーブルを繋げば可能だよ。その為には機材を壊さないようにしてくれないと困るけど・・・」
となるとなんとか武装集団を無力化する方法を探し出さなければ鳴らないようだ。
といっても何か道具を持ってきている訳じゃ無いので策が存在するわけじゃ無いが、俺と海とレクターで突っ込んでいけば多分普通に制圧出来るはずだ。
機材が無事という可能性がどうしても排除仕切れないが、そこは最悪諦めるしか無いが、見た感じ中心に置いてある機材は重要そうに見える。
「あの中心の機材は絶対に傷つけないように制圧するんだ。分かったな・・・特にレクター」
皆でレクターをジッと見つめるとレクターが物凄く不満げな声を大きく張り上げるのだが、その声は同時に開戦の合図となった。
「何で俺なんだよ!」
「「「そこに誰かいるぞ!」」」
俺たち三人はジッとレクターを問い詰めるように睨み付け、俺がため息を吐き出しながら飛永舞脚で駆けだしていき天井に張り付いた状態で機材を見下ろす。
機材の画面にはなにかを接続しているような映像が映されており、その先に何が移っているのかはここからではまだ分からない。
「上にいるぞ! 撃て!」
俺に向かってアサルトライフルの銃弾を浴びせてくるが、俺はその全てを緑星剣を呼び出して打ち落とす。
その隙にレクターが走って現れる。
本来であればレクターが豪快に壁を粉砕して現れるところだが、機材を壊すなと言う手前派手な行動が出来ない。
そこでレクターは右拳を握りしめて一発深めに決めつつ、バックステップで距離を取って相手の目を更に自分の方へと向ける。
そこで海が駆けだしていき周囲の空気の流れを一点に集めていき、そこでジュリが魔導機を使って全員の呼吸を完全に止めてしまう。
「おし・・・終了。ジュリこの機材のことを調べてくれ。レクターと海は周囲の索敵を頼むぞ。いざとなったら俺のエコーロケーションよりお前達の視界や感覚が全てだし」
二人が去って行くのを確認した後ジュリへと近づいていく。
ジュリはタブレットにケーブルを繋げて中を調べ始める。
画面ではタブレットと繋がった事を示す画面と同時にジュリが操作し始め、ジュリはプロテクトを次々と突破していくのだから驚きである。
「これ・・・・・・何かを運び込んだ記録が入ってる。多分だけどこれ以外にも何かをこの下水道の中へと運び込んだみたいだけど・・・この機材では全てを書いてないみたい。でもこの機材はこの辺り一帯の機材のコントロールみたい。何かを調べていたみたいだけど・・・。でも、依頼主の名前はハッキリしている」
その名を聞いたとき俺は驚きとともに再び俺の前に立ち塞がろうとしていたあの男の事を思い出していた。
『メメントモリ』
それがこの依頼主の名前だった。
それが発覚したとき上から誰かが現れる気配を感じ取り緑星剣を握りしめて上からやってくる攻撃からジュリを守る。
目の前にナイフを握りしめた少女、サイドポニーの金髪だからキュキュという少女だろうが、その表情は無表情のまま殺気を俺に向かって放ち、俺はキュキュを弾いて吹っ飛ばす。
「キュキュ・アールテールだな。お前には不振な動きが見られる。詳しい話を聞きたい」
俺はジュリに俺の後ろにいるようにと指示を出し、同時にヴァルーチェに実行するようにとジェスチャーをキュキュに見せないように合図を送る。
するとヴァルーチェが口を開けて何か聞こえないような声を発し始め、キュキュは怒りをにじませたまま俺に向かって突っ込んでいく。
「あくまでも話をするつもりは存在しないとみても良いのか?」
黙ってナイフを振り回し、俺はそれを緑星剣で受け止めつつ蹴り飛ばして斬撃を飛ばすがキュキュはワイヤーを使って空中で軌道を逸らして空中で受け止めて飛んでくる。
ワイヤーを使った空中移動術なのだろうと分かると別段苦労する戦法でも無い。
襲ってくるタイミングで俺はカウンターとばかりに緑星剣を横薙ぎに振り抜くのだが、キュキュの体が空中で止まってしまい、真後ろから真っ赤な球体が俺たちめがけて襲いかかってくる。
俺はそれを緑星剣を防ぐため飛永舞脚で駆けだしていき、ジュリはタブレットを操作しながらケーブルを一旦外し、画面に『魔導機モード』と移しながら戦い始める。