探し人はいずこに 5
ホテルに戻ってきた海とロビーで合流するのを食事をしながら待っていると、海と一緒に説明をしながらエレベーターで元の階へと戻っていくと、廊下でレクターがサクトさんに怒られていた。
きっとタイムズスクエア一帯でとある映画のヒーローのような事をすれば怒られるだろう。
「あれ何です? レクターは何をしたんですか?」
「ある映画に払拭されたようなアクションをタイムズスクエア一体で繰り広げてな・・・どうもかなり目立っていたらしい」
「ああ・・・あの時していた建物から建物への大ジャンプやワイヤーを使った高速移動の事ですか。確かに警察が警報を鳴らしていましたね」
警察に追いかけられるような事をしないで欲しいが、よく考えれば後先考えずに行動して警察にご厄介になったと覚えているので今更な気がする。
しかし、ということは海はタイムズスクエア一帯まで走って行ったということになるが?
「いいえ。さすがにそこまで行っていないですよ。その前段階でもう既にしていたので」
「あいつは一体このニューヨークの街でどんな伝説を残そうとしているんだ」
「帝都でいくつか伝説を残した事がありますからね。僕が聞いただけでも結構ありますけど、ソラも大概伝説がありますけど・・・?」
「あれはレクターを止めるための行動が結果的にそうとられてしまうだけどな・・・、あいつは後先考えずに行動した結果あらゆる人たちが犠牲になるんだよな」
俺を含めて結構な人数が巻き添えを食うのに、あいつはまるで反省しないんだよな。
俺は自分の部屋のドアノブに手を掛けながら思い出した事を口にした。
「そう言えば学校の校舎を半壊させた時は焦ったよな。俺たち全員で止めたけど止まらないって言うな」
「そうですね。中等部の僕たちの目の前でしたからね。ソラが飛永埋却で助けに行かなかったら絶対一般生徒に犠牲が生まれていたと思う」
サクトさんがこっちを見ないように怒りのレベルを上げているような気がしていたが、俺たちは気にしないで部屋の中へと入っていくと、部屋の一角にパソコンが五台ほど並列起動している。
物凄く怖いです。
ジュリがどんどんサポート能力のレベルが上がっていく気がしてならないが、突っ込むのは怖いのであえて放置。
「ごめんね。ある程度ハッキングして監視カメラの映像をリアルタイムでタブレットに移せるようにもう三十分ほど頂戴」
俺と海はドアの前に立ち尽くしながら「頑張ってください」とだけしか言えなかった。
ベットの上に二人で座ってジュリの作業終了を待つことにし、エアロードが俺の背中から飛び降りてベットの上に飛び降りる。
「それで? 探し出してどうするんだ? ソラ達はどうするつもりなのだ?」
エアロードが俺たちに向かってそう訪ねてくるのだが、そこはハッキリ決めている訳では無いので詳しく訪ねられると困る。
訪ねられてから考え込む。
「そうだな・・・なんとか証拠を手に入れられれば相手を抑えることが出来るんだが。証拠が無いと動けないのは警察なんかと一緒だよ」
「ですね。下手に動けば間違いなく警察のご厄介になることは間違いないですね。相手もそうやって動くでしょう」
「フム。だがな・・・警察のような機関ですらまともに証拠が揃わないのならお前達が手に入れられるのか?」
「やり方はあるさ。上手く見せる」
俺は冷蔵庫から飲み物を取り出して水を一口だけ飲み込み、海は俺に「シャワー借りても良いですか?」と聞いてくるので「どうぞ」と促す。
「ソラ・・・暇」
「お前は・・・その辺で寝ていろよ。黙って待っていることが出来ないのか?」
「何かしたい。何か提案を求めるぞ。やりがいを求める」
面倒な奴だなと思いながらもなんとかやるべき事を思い出してみるがまるで思い出せない。
「そう言えば。この際聞いておきたかったんだけど・・・お前のエアロードもそうなんだけど・・・名前ってどうやって決めているんだ? 誰かが決めるのか?」
「ああ。親元だな。始祖の竜が四つの竜を生んだときそれぞれ『聖竜』『闇竜』『光竜』『影竜』の四つの名前を授け、そこからその四つの竜の名前の付け方をもじって、新しい竜が生まれる時に固有名をさらに『エアロード』みたいな名前を付けたと聞いているぞ。そもそも最初の四つの竜は今みたいな名前が無かったと聞いている」
「へぇ・・・やっぱり竜にも歴史ありか・・・・・・」
「まあな。やはりその辺は人間に影響されるぞ。竜も人に影響されるし、人も竜に影響されるのはどんな生き物だって変わらないぞ。世界に生きる命はお互いに影響し合うものだからな」
分からないでもないし、その辺は俺だって影響を受けて生きてきたはずだ。
生きると言うことは影響を与え合う事なのだと、それをエアロードが語るとは思わなかったな。
竜一の馬鹿という肩書きを持つ竜がエアロードだからな。
「異世界会談の準備が忙しいだろうに、サクトさんだって・・・・・・あんな馬鹿な奴のためだけに時間を割くなんて・・・」
「確かに・・・よくシャドウバイヤから言われる。馬鹿に割く時間は無いって言われる」
「それは・・・馬鹿にされているんだって事を指摘しておくぞ」
「なんと!? あれは馬鹿にされているのか!?」
気がつかなかったのか?
お前は本当に馬鹿なんだな。
ジュリがようやく準備を終え、ジュリはタブレットを片手に持ちながら俺と海はエアロードとアカシを連れて出て行き、レクターを探すとまだ反省をしているのが見えた。
とりあえずサクトさんがいなくなっているのを確かめて、俺たちはレクターを連れてホテルから出て行く。
「で? ジュリどこに行ったのか分かったのか? ギリギリまで調べていたよな?」
「うん。最後に目撃されたのはタイムズスクエアから東に一キロ進んだ先のお店の中へと入っていくのをカメラで確認している。でも、出て行く姿が映っていないんだ」
じゃあとりあえずそこまで行ってみようかと思っていると、後ろでレクターが再びジャンプして飛んでいこうとするのを阻止する。
海がどこかに連絡しているような素振りを見せている。
「そう言えば今大阪を舞台に争いが移っているらしいですね。でも背後に誰かがいるのか分からないって。噂ではアメリカの軍隊らしいですけど」
大統領がそんな事を命令するとは思えないので、きっと副大統領が命令したのだろうと推測するか残念なことに証拠が無いので尋ねる事が出来ない。
て言うかそんな情報を一体どこから手に入れているのだろうか?
「え? 奈美から」
「ラブラブだな。レクターなんて嫉妬しかねないんじゃ無いのか・・・? 血の涙を流すほど悔しい? だったら作れば良いだろ?」
「簡単にできたら困らんわ! お前達みたいに簡単に出会いがあったら困らない! きっとソラがこの世界にやってこなかったら俺はジュリと結ばれていたよ」
「それは無いよ」
ジュリが冷たく切り離すとレクターが物凄いテンションを落としていき、俺たちはそんな姿見ていてもまるで同情せずに歩き出す。
「歩いて移動するんですか? さすがに距離があるからせめて電車で移動しませんか?」
海からそう言われてしまうと流石に考えることにした。
「でもさ。そのタブレット地下鉄を使うと電波が届かなくなるんじゃ無いのか?」
「大丈夫だよ。地下鉄で移動してみる? それともタクシーを使って移動する?」
タクシーを使うというアイデアを採用し、テンションを落としているレクターを強引に突っ込んでタクシーが動き出していく。
流れる街並みを見ながらレクターはずっとブツブツとつぶやき続けていた。