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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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海洋同盟へ… 2

 海洋同盟の十六の大島にはそれぞれ番号は振られており、真ん中で在り国会ビルが置かれている第一島をはじめに時計回りに、同時に端に移動して行くうちに番号が進んで行く。

 イリーナは第四島に作られた屋外用のコンサートステージ前で今日の夜自らが歌うステージ、そのステージを眺めながら頭の中でイメージトレーニングを繰り返し、そのたびに小さな修正をスタッフに指示を出す。


「もうすぐここで歌う事ができる………楽しみ。でも……奈美ちゃんに来て欲しかったなぁ」


 イリーナは大きなため息を吐き出しながらいじけたような表情をしながらも、同時に足先で落ちている小石を蹴る。

 本来であればイリーナが拾ってスタッフにゴミとして渡しておくべきであるが、そんな事よりも自らの気持ちをぶつける相手が欲しい。


 手鏡をポケットから取り出し、長くツインテールに変えている金髪を整え、いつでも歌えるように化粧が堕ちていないかどうかをすばやく確認する。

 先ほど蹴った事で乱れていないのかを確認する。


「イリーナ………奈美…クル」


 イリーナの後ろから大柄のマスクとスーツといういかにも怪しげな男が近づてい来る。


「ヴァース…………本当に!?今直ぐ?」

「イヤ………明日…クル。ナンデガッカリスル?」

「いいの。分かっていたから。でも明日きてくれるんだ!明日は自由に動いていいよね?」

「良イ。俺ハ明日明後日ト仕事」

「分かってる。ありがとね」


 イリーナはご機嫌な表情に早変わりし、スキップ混じりでステージに向かって歩き出すのだが、先ほど蹴った石に足を取られて前のめりで倒れてしまう。

 ヴァースは慌てた様子で近づいていき、完全に倒れる前にヴァースが両手で支える。

 大きなヴァースの両腕を支えてもらう。


「あ、ありがと………!? きゃあ!」


 ヴァースの慌てた声とイリーナの大きな悲鳴は全く同時、同時にヴァースは無意識に掴んでいたイリーナの胸から手を離す。

 ヴァースは自らの掌に残る温かさに元々良くも無い脳みその思考を完全にフリーズさせ、芝生に座りこむイリーナは胸を抑えながら恥ずかしさのあまり顔を背ける。


「何をしているのですか?」


 ピンク色の羽の生えた竜、首は決して長くなく全身に鱗の生えたような体、長い尻尾と腕や手足、同時にエアロードとシャドウバイヤと同じく小柄な体をしているこの竜こそヒーリングベル。

 音の呪術を操る類いまれな竜である。


 ヒーリングベルは二人の間にある奇妙な間に対して敏感になり、今現れたにも関わらず二人の違和感に気が付いた。


「イリーナ。衣装やメイクの準備ができたから直ぐに来て欲しいといっていましたよ。あとヴァース警備担当から警備個所に不安があるから来てくれと言っていましたよ」


 二人は黙って頷くだけ。


「本当にどうしたのですか?」



 フォードは飛空艇の準備をすっかり終えていることを電話越しに確認し、同じく戦いに向かう烈火の英雄であるギルフォード・ライトに念入りにと「深追いはしないこと」と伝えておいた。

 前回海上要塞アクア・レインでは深追いをした挙句幹部クラスを捕獲されている。


 フォードにとって自分はあくまでも『反政府組織』の名目上のリーダーで、本来の目的はあくまでも金銭面の確保や人員を集めてくることが目的でもある。

 

(前回は私が出ていった挙句だからね。これ以上目立ちたくないし当分は陰に隠れるとしよう。ボウガンの救出以外は余計な事をしないという約束だし)


 今回は主力隊を使うので前回のような状況にはならないだろうという予測もある。


 フォードが飛空艇での移送中なら襲撃できると踏んだ。


(帝国がボウガンを捉えて移送すると踏んだのはボウガンが近隣国では有名な脱獄犯でもあるからだからね。まあ予想通りボウガンを飛空艇で海洋同盟までいそうするつもりになったか)


 ボウガンが海洋同盟への移送中なら飛空艇クラス絶対に使用すると予測していたフォード、実際目の前にある写真には飛空戦艦が悠然と飛んでいる姿が映されている。


(失敗は無いだろうけれど、今回は念には念をおして主力隊には『あれ』を持たせておいたし、問題は無いだろう)


 机の上に置かれた書類にペンを伸ばし、自らのサインを書きながら作戦の事を一旦頭から排除する。



 烈火の英雄であるギルフォードの前にフォードが準備した海洋同盟産の飛空艇が置かれていた。

 先端や左右に高周波ブレードを装備した突撃用の武装が装備されており、戦艦クラスよりよっぽど早く動き回ることが出来るのが利点の飛空艇。


「これで突撃し、素早く内部で捕らわれているボウガンを回収する。武装は最悪無視して行動し、あくまでもボウガンの確保を優先する。いいな?」

「「「は!」」」


 黒い武装服と背中にアサルトライフルや近距離用の剣を装備、防具にヘルメットやゴーグル、防弾ジョッキなどを装備している集団が約五十人。

 ここにいる五十人こそが反政府組織が抱える主力部隊なのは間違いない。


「ギルさん。他の幹部メンバーは同行しないのですか?」

「しない。今回は俺だけだ。メメとバウアーは重症、『もう一人』はパスと既に言って来ている。フォードによって既に指示が出されている」

「大丈夫ですか?ギルさんはまだ万全の状態ではありませんよね」


(懸念なんだろが、こういう遠慮をしない所が主力隊故だな)


「大丈夫だ。これでもきっちりチャージは終っているし、今回は最初っから飛ばしたりしない。とはいっても俺達は陽動だ。もう一方の部隊がその隙に内部からボウガンを救出する」

「分かりました。大丈夫だというのならいいです。それより作戦の概要を」


 男性メンバーが右手で周囲に指示を出すと、今回の突撃メンバー善因が集まってくる。


「今回はボウガンの救出が狙いだ。それ以外は全て論外。敵を不用意に攻撃する必要で胃も無い。海洋同盟の海域で問題を起こせば今後の作戦に支障がでる。だからこそ、海域に入る一時間で勝負をかける。俺達Aチームは陽動が狙いだ。まず俺達が敵艦に突入し、前方甲板で暴れ回り、侵入用のBチームが後方甲板から乗り込む。敵は民間飛空艇と並走する手前速度が出ない。これを逆手に取る」

「そううまくいくでしょうか?」

「だからこそ夜中に、しかもステルス機を使用する。勿論Aチームはワザと敵に補足させ、同時に侵入時に暴れ回りやすくする。遮蔽物が多い戦艦だからこそ暴れやすいだろう」

「なるほどその間にBチームがこっそりと後ろから近付くと?要するにAチームは暴れればいいわけですね?」

「そうだ。まあ、敵は狙いがボウガンだとばれるだろうからそこはやはり時間の勝負だ。一時間で確保が難しいと判断した場合は直ぐに撤退だ。判断はBチームに任せる」


 Bチーム全員が黙って頷く。


「良し………!全員飛空艇に乗り込め!作戦開始だ!!」


 今夜反政府組織はガイノス帝国軍飛空戦艦に戦闘を仕掛けようとしていた。


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