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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
ニューヨーク・アップヒーヴァル《下》
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ニューヨークは燃えていく 0

 時は少しだけ飛び十二月二十四日の夜十時を越えたところ、各国の要人達を引き連れたソラとジュリは異世界連盟の最上階のドアを開いて外へと出て行った。

 強い風が吹き荒れ突風で体が吹っ飛びそうになるのを堪え、ソラは全員を一旦片腕で制止し彼一人だけが周囲を見回す。

 ハッキリと感じる今回の事件の裏にいた黒幕の一人、そして不死の軍団のトップである不死皇帝の気配をヒシヒシと感じ、ソラはたった一人で気配の主の元へと近づいていく。

 建物の一番端に佇み、黒と白の縞々のスーツに黒い革のコートを肩に羽織っているのが後ろ姿だけでもハッキリと分かり、後ろ姿からでもタバコを吸っているのが分かるほど煙がでている。

 ソラが近づいているのが分かっているのか、それともまるで理解していないのか、身動き一つとらない。

 緑星剣を握りしめるソラの手が人一倍強くなっていき、同時に脳裏に色々な人がよぎっていく。


 ジャック・アールグレイの部下も皆殺され、アメリカの大統領は副大統領に撃たれ、そして……ソラの師であるアックス・ガーランドは命を落としてしまった。


 ジャック・アールグレイも、ケビンも、ソラも大切な人を失いかねない経験を経て、そして多くの人を不幸にして、この街を巻き込んでいるもう一人の黒幕。

 今京都や大阪も大火の炎を燃やし続け、今その大火はニューヨークの地に大乱を呼び起こした。

 この街にいると思われる人達を守るために策にはまり、ソラの師であるアックス・ガーランドは命を落としてしまったのだから。

 しかし、ソラの心は師を奪われた怒りに満ちあふれ、その怒りすら通り過ぎるほどに驚きが目の前にあった。


 そこにいた男の後ろ姿を見れば誰なのかなんて嫌でも分かってしまったからだ。


 帝都の北にある近郊都市跡ですれ違った『ジェイド』と名乗ったあの男。


「ジェイド!! あんたが……あんたが不死皇帝だったのか!?」


 ジェイドはゆっくりと振り返りそこにいるソラの顔を見たとき吸っていたタバコを捨てて少し高い場所から降りてくる。


「お前は……確かウルベクトだったか? そうか…ボウガンとメメントモリが告げた今回の計画の妨げになる可能性の高い人間のリストにいたのはお前か。てっきりもう一人の方だと思っていた。しかし、ボウガン達の計画を妨げていたのがお前のような子供だったとは…いや、これは失礼だな。戦う者に子供も老人も関係ないな」


 静かに降り立つその姿、不死身であることに決して油断など存在しないかのような鍛え抜かれた肉体がスーツの上からでもハッキリと分かり、そこにいるだけでその圧倒的な圧力に屈しそうになる。

 正直に言えば強さで言えばアックス・ガーランド以上かもしれないと思ってしまう。


「フム……どうやらボウガンとメメントモリが私に告げた情報にノイズがあるようだ。それも…あいつらが意図的に作ったノイズ。カールは中々戦いに参加しないし、協調性が存在しないキューティクルが正確な情報を手に入れるわけが無いしな。ということなら間違いなくボウガンがメメントモリに告げて情報を封鎖していたという事だろう」


 その話自体はまるでソラに関係の無い話である。

 怒りで両腕が震えているのジェイドからでもハッキリとわかる。


「どうして……どうしてこんなことをするんだ!?」

「おいおい…勘違いするなよ。あくまでも我々は副大統領の計画の後押しをしたに過ぎない。あの計画では事前に阻止される可能性があったからな。ボウガン達からもそれが可能な存在を事前に聞かされたし…」

「だから師匠達を狙ったのか!? 罪の無い人にまで手を伸ばして!」


 この時点でソラは京都で起きた『美咲』と呼ばれる女性の犠牲は既に耳にしており、大阪では多くの一般人が殺されているとも聞いている。

 現在ニューヨークではアックス・ガーランドの捨て身の策もあり犠牲者を一人も出ずに踏んでいる。

 しかし、この状況を放置すればいずれは犠牲者がでるだろう。


「師匠? そうか……たく…あの馬鹿狸め…アックス・ガーランドは犠牲者を減らすいい人材になるからと言ったのにもかかわらず」


 あくまでも今回の事態は不死皇帝の思惑とは少し違うという事がハッキリと分かるのだが、それでもその計画の基礎を考えついたのは間違いなくこの不死皇帝。

 不死皇帝は一本の剣を取り出す。


「そうだな……君の不満も分からないでもない。その怒りほんの少しでも受け止める必要があるだろう。今回の計画の最終段階まではまだ少しだけ先だからな。君と少しだけ遊んでみようか」


 ソラとジェイドの戦いが始まろうとしていた。

 時間は十二月二十四日の朝八時から始まろうとしていた。


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