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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
ニューヨーク・アップヒーヴァル《上》
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ゴーストは何処へ向かう 8

 物事は矛盾しており、命はその矛盾を受け入れるほど強くあれるのか、大抵の人は矛盾は無いと逃げていくのだが、時折その矛盾に果敢に立ち向かう者が現れるが、決して立ち向かうことが正解になるわけじゃ無い。

 正しさが正解になるわけじゃ無く、時には悪という考えが正解になるときだって存在している。

 問題は正解を求めるのか、正解を放棄して正しさを求めるのか、それともその両方を追い求めるという矛盾を得るのかの違いである。

 選択肢は『正解』『正しさ』『矛盾』の三つであり、この際ゴーストは『正解』を選び、ソラ達は『矛盾』を選んだだけのこと。


 ソラはガーランドの矛盾を受け入れ、それを己の意思で乗り越えようとする姿に、その強い意志と裏腹ににじみ出る弱さとそれを一緒に支えていく人たちの姿に憧れた。

 矛盾を力に、己の意思であらゆる試練を乗り越え、強さと弱さを併せ持つ人。


『この世界に本当の意味で正解なんて存在しない。正しさと矛盾を受け入れたとき、手に入らない本当の『正解』が見えてくるんだ。正解とは手に入れる者では無く見えてくるもの』


 ガーランドがソラに教えてくれたこと。

 だからソラはどんなに辛い事があっても、どんなに悲しい事が起きたとしても、それでも受け入れること、矛盾を受け入れる最も必要な事は………いろんな人達との絆。


『ソラとてそうだろ? 辛いときに悲しいときに何時だって支えてくれた人を思い出せ』


 異世界に来たばかりの時一人でいたとき手を引っ張ってくれたのはレクターだった。

 誰かを失ったとき、涙を流して居ることが出来ないときに側にいてくれたのはジュリだった。

 そして、父であるアベルがいて、師であるガーランド、アベルやガーランドの同僚であるサクト、母親や妹がいて…皆がいる。

 そしてソラは今ゴーストを見てみる。

 たった一人、きっといろんな人の思いを背負って無の住人になってしまったのだろうが、無の住人はなるときその絆を断ち切り、辛さを忘れる事は絆を忘れる事である。

 何も無い存在になることで彼らは『正解』を得たのだ。


 それがソラとゴーストの違いである。

 いろんな人と繋がり、失ってそれを刻みつけて痛みを受け入れて生きているソラ。

 いろんな繋がりを捨て、失うたびにそれも忘れて存在しなくなっていくゴースト。


 矛盾と正しさを選んだソラ。

 正解を選ぶために矛盾と正しさを捨ててしまったゴースト。


 それきっと出会った人と思いの差であり、そこに運以外の要素は存在しないのだ。

 恵まれた出会いに満ちあふれたソラ、恵まれないまま生きてきたゴースト。

 それでもきっとこの二人は真逆なのだろう。


 もしかしたら何かが違っていたら、ゴーストは何かが変わったのかもしれないとソラは思ってしまうが、そういうレベルでは無いとソラはこの事件の最後に知ることになる。

 そして、最後の攻防戦が始まる。



 剣を強めに振って斬りかかっていくソラの後ろから風の斬撃をゴーストへと向けて放ち、ゴーストはその風の斬撃を回避しながら近づいていく。

 ソラの横薙ぎの斬撃をジャンプで回避しつつゴーストは鎖分銅でソラを吹っ飛ばすが、ガーランドはいつの間にか接近してゴーストに蹴りつける。

 しかし、ゴーストは姿を消していき攻撃が空をきる。


「消えた?」


 視界から音までが全て完全に消えてしまい、ソラとガーランドはほぼ同時に目をつむって気配を探り始めると、真っ直ぐにソラへと向かうゴースト。

 しかし、途端に後ろにいるガーランドにショットガンの引き金を引き、ガーランドはその攻撃を横にジャンプして回避する。

 その隙にゴーストに斬りかかっていくソラ、攻撃を高周波ブレードで受け止めつつその場で鍔迫り合いへと移行する。

 ガーランドは半透明のドームを広げていき、タイムズスクエアのネオンや街頭テレビが範囲の中へと入っていく。

 ガーランドは大剣を握りしめて跳躍しネオンの近くまで近づいていき、ネオンの電流を大剣へと移していきその電流を上空からゴーストめがけてたたき落とす。


「竜撃。雷の型。討ち雷」


 落ちていく雷に周囲から歓声が沸き上がるが、ゴーストとソラはそれをバックステップで回避しそのままソラから切りつけていく。

 今度は攻撃をしゃがみ込むことで回避し、高周波ブレードでソラを斜めに切りつけるがソラはそれを受け止めながら受け流す。

 その状態で蹴りつける事で距離を開け、地面に走って行く雷をゴーストめがけて打ち抜くが、ゴーストはマシンガンの弾丸で雷の攻撃を受け流し、その間にガーランドが落ちてきて大剣に纏った雷を力一杯斬撃として振り抜く。

 ゴーストはその攻撃が回避しようが無いと判断すると高周波ブレードを両手で握りしめて雷の斬撃を切りつけ、打ち破る。

 しかし、その隙に二人が近づいていきガーランドとソラの斬撃をショットガンで回避し、二人はショットガンの攻撃を受け止めることに成功したが、逆に吹っ飛ばされてしまった。


 本当はこのまま追撃したいのだが、雷による痺れが憑依している体を痺れさせて動けない。

 粒子が先ほどの攻防戦で消耗してしまい、ゴーストは膝をつきながら粒子を生成していく。

 ここにいる肉体を捨てるわけにはいかないゴースト、ソラとガーランドが走って近づいてくる。


 この場合ゴーストにはいくつか攻略ポイントが存在している。

 このまま二人と同時に戦うのは明らかに不利、なのだとしたら一対一の状況に追い込んで確実に処理するのが一番確実な攻略方法。

 ここで問題なのはソラとガーランドの強さ。

 異能としてはソラが圧倒的に上だが、戦闘経験や単純な実力は完全にガーランドの方が上。

 なので本来ソラはサポートに適しているが、ゴーストを殺すことができるという点でソラは現在前衛に勤めている状況になっている。

 ならここでソラを先に仕留める方が楽であると素早く判断し上空に手を伸ばす。

 ドーム内に黒い穴が作られていきどんどんナイフが姿を現して二人めがけて飛んでくる。

 二人で必死になりナイフをたたき落としていき、素早くお互いにフォローするを繰り返す。

 雷による痺れが切れていき、ゴーストは走り出していきナイフの中ソラを蹴っ飛ばしガーランドへのナイフの射出速度を上昇させてソラの方へはマシンガンとショットガンの同時攻撃で追い詰めていく。

 ガーランドが多少無理をして駆けだしていき、ナイフの攻撃を左腕に突き刺さりながらも攻撃をかいくぐり左腕に突き刺さったナイフを投げ捨てる。

 ゴーストの周りにショットガンを十丁浮遊させ、円状に展開させたショットガンを同時に何発も撃ち放つ。

 大剣でショットガンの攻撃を受け止めるために足を一旦止め、ゴーストはその好きに走り出していく攻撃をよけているソラへと一気に近づいていく。

 高周波ブレードで切りつけつつ殴りつけてガーランドから引き離し、ガーランドはショットガンの攻撃を掻い潜って近づいていくが、それでもゴーストの方が圧倒的に早い。

 ソラの切りつける攻撃を回避し、至近距離でショットガンを撃ちソラはそれをギリギリで回避するが大きく体勢を崩してしまうソラ。

 ゴーストが高周波ブレードを両手で振り下ろす瞬間勝利を確信した。


「死ね! ソラ・ウルベクト!」

「…そうか。俺が…私がソラに見えるか」


 声が変わった。

 背丈や体格が変わったと思って瞬きをしていると目の前にいる人がソラ・ウルベクトから…アックス・ガーランドへと変貌しガーランドは攻撃を召喚した大剣で受け止める。

 もしかしてと振り返ると左腕に傷を持つソラが緑星剣を握りしめたソラがそこにいた。

 思考がまるで追いつかず、ソラが緑星剣を振り抜いた瞬間……ゴーストは負けを思い知った。


「ソラ……ウルベクト…!」


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