ゴーストは何処へ向かう 6
ソラとガーランドと対峙しているゴーストが憑依している女性のプロフィールをジュリは調べていくと、アメリカの情報の中に答えを見つけ出した。
「元CIA所属のアメリア・ヒューストン。二年前に辞めたみたいだけど・・・・・・でもなんでこの人が・・・」
武器庫から出てきたゴーストがどこから取り出したのか鎖分銅を両腕につけており、その先にある重しをソラとガーランドめがけて投げ飛ばし、二人はそれをしゃがみ込むことで回避する。
鎖分銅をソラは鞘で捕らえるのだが、ゴーストは上空から銃弾の雨を降り注いでおりソラは咄嗟に鎖分銅を離すと同時にガーランドが風の刃を作り出して反撃する。
風の刃をゴーストは手榴弾を投げつけて防ぐきり、その隙に壁を破壊して逃げていく。
「追ってください! このまま逃げられたら何処で見つけることができるか・・・現在ゴーストは地下駐車場へと向かって真っ直ぐ移動しています」
彼らの中で比較的早く存在していたゴーストの最終手段でもある。
アベルがソラ達に接触しようとした時に素早く逃げだそうとしていたのを思い出したからだった。
ゴーストは確実に殺すことができない場合は逃げることをガーランドは予想していた。
走って追いかけながらガーランドは語りかける。
「お前はいつもそうだ。肝心な所で必ず逃げる。初めて会って時も必ず最後は逃げる」
「だからこそ私が逃げ出すと分かりおまえ達は逃げるルートを予想して地下に入ったということか? 君達は確かエコーロケーションとか言う能力を使うことができたはずだな」
ゴーストの指摘通りソラ達は予めエコーロケーションを使っていくつかの出入り口の近くを探っていたが、ガーランドが最も逃げる可能性が高いルートが地下駐車場からの逃走ルートであった。
しかし、これはあくまでも可能性が高いというだけで他にもいくつか可能性は存在していたし、何よりも逃げないという可能性も存在していた。
だからこそガーランドはその可能性をあえて全部隊に共有させずにいることを選び、ゴーストがどの方法を選んだのかはジュリを通じて知るという手はずを選んだ。
そしてジュリが中心部にゴーストの集団が集まったと聞いたときからゴーストが逃げると踏んでいた。
だからこそ大量のゴーストを作り出しサクト達と真っ正面からの対決を装い、見つけ出すために正面からの対決を仕向けた。
「お前は逃げるために中心部にゴーストの集団を集めつつお前を追いかけられないように釘付けにさせる」
「そう。ガーランドさんの言うとおり。お前はそうやってまるで自分が中心部にいると思わせるために奥に行けば行くほど強い機械人形を配置した。そして一番奥の広い部屋に操りやすい人間にお前と同じ姿をさせてお前の粒子を付着させることで遠距離操作に切り替えて逃げ出した」
「怖い怖い。君たちはやはり危険だな。だが・・・今は逃げる方が重要だ」
駐車場へと入っていったゴーストは乗り物を見繕うとするが、それをソラが斬撃で足止めしガーランドが回り込んで阻止する。
「さて・・・・・・ゴースト。お前を消す必要がある」
「ソラ・ウルベクト・・・君の能力は危険だ。誰よりも君自身はそれをよく知らない。異能を殺すというその能力は言い換えれば「存在しないモノを殺す」ということだ。可能性を摘み取るモノが可能性を育む・・・矛盾しているよ」
そんな言葉を吐きだすゴーストにソラははっきりと答えた。
「矛盾は当たり前だ。生きる上で矛盾という言葉から切り離すことは絶対にできない。お前だって生きていると言うことだ。お前はそんなことを理解していないんだな」
ゴーストの表情がよくわからなかったが、それでも遠目に見ているジュリやソラやガーランドにもはっきりとわかった。
今ゴーストは不機嫌になっていると。
「矛盾は当たり前。それを受け入れられないのは矛盾が辛い事だって知っているからじゃないのか? それがお前の封じられた記憶なんだろ?」
「知ったような事を言うじゃないか。お前達に何がわかる?」
黙り込んでいた二人の内喋り出したのはソラだった。
無表情に近いような、それでいて怒りをにじませる顔を真っ直ぐにゴーストの方へと向けて言い放った。
「分かろうとも思わないな。最もお前の苦しみはお前しか知らないのだからな。苦しみは受けたその人しか知らないのだから。お前の苦しみはお前しかしらない。俺達の苦しみを本当の意味で理解するためにはお前の苦しみを共有したいという強い意志を持つモノだけだ」
「まるでガーランドを相手にしているようだな・・・・・・知ったような顔をするじゃないか」
最後にガーランドがゆっくりと口を開いた。
「もう・・・終わらせよう」
ガーランドが大剣を地面に擦り火花を散らせ、ソラはそれを炎に変えていき業火は鋭い爆撃となって全ての車を爆発させる。
移動手段を完全に失ったゴーストをここで足止めをする為、ガーランドは燃えさかる炎を斬撃に変えて力一杯振り抜く。
ゴーストはその攻撃をかいくぐる形で回避し、ショットガンを容赦なく二人へと向かって放つのだが、それをガーランドは大剣で受け止める。
ソラは風の斬撃を乱れ切りして火災のレベルをさらに加速させ、ゴーストは火災にまるで気にしないという風に手榴弾を大量に投げつけて大爆発が駐車場を包み込み、それをソラとガーランドは力一杯爆発を斬撃で防ぎきり、ゴーストはそれを真っ直ぐ走って逃げていく。
それをガーランドが先回りして大剣を横薙ぎにして切り伏せるが、ゴーストはスライディングして攻撃を回避したまま逃げていく。
「追いかけるぞ」
「走って群衆に紛れ込まれると困る。追いかけよう!」
二人で走り去っていき走って駐車場から外へと出ると一台のバイクが走り去っていのがはっきりと分かり二人が周囲を確認してみると、ジュリが用意した専用のバイクが置かれていた。
「用意しておきました。使用してください。ドローンをゴーストの近くに配置しております。今なら追いつけるはずです!」
ソラとガーランドがバイクに向かう中、ソラのスマフォが鳴り響き画面には見慣れない電話番号が書かれていた。
時刻は零時を迎えようとしていた。
バイクを走らせるソラはすでに聖女アンヌとの会話を終えており、バイクの目の前を走って逃げているゴースト。
今のところ周囲にいる群衆へと憑依するつもりは無いようで、ずっとソラ達の様子を見守りながら速度を上げていき、ソラやガーランドは一旦分かれて挟み撃ちの状態へと移動し、ゴーストの居場所をドローンとGPSでジュリが確認している。
同時にジュリは二人に伝えながら回り込むように作戦を行き、タイムズスクエアの道路のど真ん中でソラが剣をゴーストのバイクの車輪を切り裂き、目の前に曲がり角から行きなりガーランドが現れてバイクから飛び降りる。
意表をつかれたゴーストはバイクがパンクしてしまい転倒しないようにするのに精一杯でよけることができなかった。
滑り込むようにガーランドが着地し、ゴーストは転がり込みその姿をはっきりと確認したソラはバイクを着地させて何かのスイッチを押す。
するとバイクに備え付けられていたドローンが打ち上がり道路のど真ん中を半透明の『何か』がドーム状で覆い隠す。
警察がサイレンを鳴らしながら現場に現れドームを囲み、人を近づけないように制止しているとソラ達の戦いはクライマックスを迎えようとしていた。
ゴーストは立ち上がり、再び鎖分銅を両腕に装備しながら右手にはマシンガン、左腕には高周波ブレードを装備している。
周囲に民間人が見守る中最後の戦いが始まろうとしていた。