ゴーストは何処へ向かう 3
自称治安維持組織は建物を幾つも所有をしており、特にこの建物は大きく出来ており幾つも出入口を持っており、その分建物は複雑な構造をしておりソラやガーランドのエコーロケーションでも簡単に索敵するのは簡単なことじゃない。
機械人形を徘徊させると決めたのが自称治安維持機関のトップの若い女性だったのだが、その女性は現在ゴーストの憑依体と選ばれており、現在全ての人間は操作の対象である。
ゴーストは一番奥の広い三階分の縦の広さを持つ中心地でパソコンの画面と睨めっこをしており、特にソラとガーランドが突入していく姿をじっと見つめていた。
メメントモリはそんな彼の後ろに現れるが、ゴーストはまるで気にする様子は存在しなかったが、それでも少しだけ後ろを振り向いた。
「気にしているそうだね。そこまで気にするのなら君自身の手で相手をすればいいだろうに。千を超える人間を手に入れた君なら今なら真正面から立ち向かうことも造作もないだろうに」
「その手口に乗らないぞ…どうせ今回も人形でやってきたのだろう? 僕が機械に憑依できないという手口を利用して接近してきたのだろ?」
「フフ。まあ君が粒子という形状に生命を与えた存在だとはすぐに気が付いたからね。肉体に憑依しているときも脳神経に侵入して汚染するのだろ? だとしたら私のように機械でできているような存在なら憑依できないだろ? 機械を操る時は全身を操作しなくてはいけないからね。所詮君も生命体ということだ。生きているということだね」
「で? 僕のところにやってきた理由を聞こうか。君はその為の存在なのだろう? 依頼人と僕との間の繋ぎ役」
メメントモリは何となくゴーストが自分の目的の一つを理解しているということぐらいは。
「私は君の天敵の一人だからね。でも、残念だったね。依頼主が殺せと言われえていたのはアックス・ガーランドで、君は間違えてソラ・ウルベクトを間違えて連れてきてしまったわけだし」
「僕はそんなことを依頼されていない。あそこで戦って時間が経過したら爆弾を起爆させろと命令されただけだ。あそこは…依頼主の証拠が残っている可能性が高い場所だからね」
「ほう……それは知らなかったな」
ゴーストは内心『嘘くさい』と思ってしまうが、それを口には出さない。
別段メメントモリが怖いわけでは無いが、しかし倒すことができることもまたできないという結論に至ってしまう。
本体に会ったことが無いゴーストからすればメメントモリは正体が探りようのない存在である。
「まあいい。私の役目があるわけじゃない。個人的な依頼はキチンと終えることができたからね」
「そうか…なら僕の邪魔をするな!」
怒鳴りつけるような姿を見せており、メメントモリは黙って部屋から出ていき建物の屋上へと移動して夜景に目を凝らしていた。
すると後ろから近づいてくる存在に気が付いて振り返ると、そこには前回とは装いを少し変えたキューティクルが動きやすそうなスタイリッシュな恰好をしている。
「今日は僕っ子なのかい? それとも今のマイブームなのかな?」
「こっちがジャック・アールグレイと抗争をしている間にそっちは暇そうにしているのね。それで? 時折情報が入ってこなかったけど何していたわけ?」
「仕事をしていたんだよ。今のところ依頼主の要望通りの展開なわけだしな」
「上手くいきすぎていないかしら? もう少し苦戦していてもいいでしょうに」
キューティクルは帽子を動かして疑問顔をしているのだが、そんな彼女にメメントモリは笑い出しながら振り返った。
「前回は誰かさんが計画をとことん邪魔してくれたし、何より彼らの結託があったからね。それが前回の計画にズレが生じてしまった理由だったが、今回はその点の反省を促して彼らの結託を突き放すために動いているのだろ? ジャック・アールグレイ。アメリカのエージェントであるケビン。烈火の英雄であるギルフォード。星屑の英雄と言われているソラ・ウルベクトを分散させる。だから君が動いたんだろ? で? 作戦はどうしたんだ? ジャック・アールグレイの分散は午前中に成功したはずだが、ケビンの方はどうした?」
キューティクルはそっと目を閉じて可愛い表情が一瞬暗くなってしまうが、悪そうな表情を浮かべている。
「大統領にちょっとしたちょっかいをかけたらそっちに向かったわ。これで分散は成功かしら? 後は明日の本戦でうまく分散するだけよね?」
「そうだな…今はソラ・ウルベクトを応援してみよう。彼が今日ゴーストを倒せるかどうかが明日の本戦を占う事になるだろう。彼は少々厄介だからな」
「不死皇帝が直接手を下せば早いでしょ? あの人何しているの?」
「さあな。だが様子を見守っているだろう。だからあまりお前が奔放なことをしていると不死皇帝から今度こそ調教されてしまうかもしれないな」
メメントモリはそっと振り返るとキューティクルの真っ青の表情をみて高笑いを浮かべそうになっていた。
監視カメラに侵入しているメメントモリの視界の中に突入班の幾つかが建物中心区画の近くにまで辿り着こうとしていた。
メメントモリは時間を確認していると時刻は夜の十時を迎えている。
「まだまだ時間がかかりそうだな。中心区画へと近づくには機械人形の大型タイプを潜り抜けなければならないわけだし、それでなくても…その先にはゴーストが自らの力で増やした自らの複製体がいるわけだしな」
「でもさ…所詮憑依能力なだけでしょ? そこまで脅威かな? このキューティクルちゃんにははっきりと理解できないのよね」
「キューティクルちゃん(笑)の理解力はその程度か。仕方がないなお前はカール以上に強いというだけで何もかもが中途半端だしな」
「ぶっ殺す!」
「怖い怖い(棒)君はキチンと物事を理解できないお粗末な頭をしているからね…おいおい…そんな死神の鎌のような武器を取り出して。そうだ…死神の鎌って草刈り用の鎌らしいぞ」
「どうでもいい。貴様を殺すわ」
「キャラクターが崩壊するほどの怒りを抱いてもらえれば幸いだ。私には人間的な感情が存在しないからね。物事を合理的にしか判断できないんだよ」
キューティクルは鎌を一旦おろしてそのまま服の中へと入れていく。
メメントモリはそれを興味津々に見守っているとキューティクルは片目を隠し始める。
「まあいいわ。どうせ暇だから見守らせてもらうから」
「勝手にすればいい。私達の本日の役目は終了しているわけだからね」
レクターが目の前に存在していた機械人形を粉砕してサクトの指示通りドアを蹴っ飛ばして中へと入っていくと広めの廊下が伸びており、その一番奥に片刃の大剣を担いだ人二人分の大きさの機械人形が鎮座している。
白銀と赤と金色のラインが伸びているデザイン、ゴツイ体付きと人間と同じ二つ目型のカメラがどこか人っぽく見えてしまう。
「見たことが無い機械人形だ。これも同じところ出身の兵器なのかな?」
「どうかしらね。突入班は直ぐに情報を司令部に送り続けて頂戴。レクター君は交戦を…」
レクターは指示を仰ぐ前に突っ込んでいき、敵の胴体の丁度ど真ん中に右拳を叩き込もうとしたが、機械は顔を上げて腰を少しだけ落としてジャンプしていき天井に張り付く。
そしてレクター目掛けて思いっきり大剣を振り回すのだが、レクターは攻撃を紙一重で回避し、バク転で一旦距離をとる。
「今の…ガーランドさんみたい」
「きっと研究都市の大会で得られたデータを使って開発されたのね。結構厄介ね。突入班は後ろで待機していて頂戴。レクター君。一緒に戦うわよ」




