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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
ニューヨーク・アップヒーヴァル《上》
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ゴーストからの挑戦状 12

 メトロポリタン美術館の前までたどり着くためにセントラルパークの外側を歩いて回っているとアカシが俺の胸ポケットの中へと入っていくのだが、今度はエアロードが俺の服の中へと入ってくるのだが…結構鬱陶しい。

 先ほどまで外を飛び回っていたせいか体が結構冷えていて寒いという感想しか湧いてこないのだが、もっと言えばやめて欲しいという感想しか湧いてこないのだ。

 はっきり告げても辞めて欲しいという気持ちを汲み取ってはくれないので無視しておけばいいと意識を切り替え、隣のセントラルパークの方をジッと見つめながら物思いにふけってしまう。


「どうかしたの? 寒いのならここにカイロがあるから使う?」

「用意が良いな……そうかヴァルーチャの為に用意しているのか。いや、いいや。そこまで寒いわけじゃないし。強いて言うならエアロードが冷たいというだけだ」


 俺はエアロードへの嫌味を込めたのだが、残念な事に通用しなかったのだがそんな時にヴァルーチャが「だそうですよ」と補助をしてくれるが、それすらもガン無視を決め込む。

 何を言ってもこの際意識を切り替えるつもりは存在しないようだ。


「ていうか…エアロード。お前の為に上着を用意していただろう。それはどうしたんだ?」

「だって…あれ…チクチクするし、苦しいし…そもそも竜に服という概念が存在しないのだ。これが普通だ」


 と言いながら俺の体で暖を取ろうしない欲しい。

 暖を取るという事は寒いという事じゃないか…ていうかヴァルーチャですらカイロや毛布なんかで温もりを得ているのだから諦めればいいのに。


「あのノックスという男…ジュリは知っているんだっけ?」

「う~ん。あれを知っているで済ませていいのかな? ただ試合を見ていただけだし…まあ、あの戦いを見ていなかったソラ君に比べたら知っている程度かな。それも…あくまでも戦い方みたいなところを知っているだけだし。詳しく放してくれって言われても困る」

「そうか…何か師匠を見る目と俺達を見る目は少し違う気がしたから。何というか…師匠に対しては警戒度を上げているように見えた」


 まあ見えただけでそれが確信に変わるわけじゃないので困った所で、俺から見ればあのノックスという人間は『悪意という言葉で完成された人間』というイメージ。

 普通に考えればあの男は軍人としては『普通』な感じなのだが、外面というか漂わせていた雰囲気が『異常』というレベルな気がする。

 もっと言えば師匠や父さん達のように戦闘レベルが『異常』ならはっきりと分かるのだが、内面や雰囲気が『異常』というのは分かり辛い。

 大体内面や雰囲気が『異常』な人間は外側も『異常』だったりする。


「そうだね。でも……あの人は何か…怖い人だね。目つきとかそう言うんじゃないけど。ガーランドさんやアベルさん達は強いけどその内面に『誰かを守りたい』という気持ちがなんとなく分かるから怖くないんだけど。あの人はそういう『優しさ』を全く感じないんだよね」


 それは確かにあるかもしれない。

 軍人として正しいという気もするが、やはり俺からすれば軍人というのは戦争屋ではなく国民を守る事を第一にするべきなのだ。

 国民に銃を向け容赦なく引き金を引くことは愚かな事と思うし、命を奪う事に躊躇いを全く持たないというのは人としても軍人としても失格だろう。


 あの男はそう言う人としての大事な部分が無いようなイメージがある。


「人なのに人じゃない見たいな…何だろうな。人としての色んなものが欠落しているイメージなのかな?」

「でも前に師匠が言っていたけど。戦争という状況で生きていると人としての当たり前の感情や気持ちが削られていくんだって。目の前でドンドン命が奪われるのを見ていると、仲間が死んでいくのを見ていくとやっぱり人間というのは変わるらしい。そこで変わらないでいられる人間というのは…強い」


 師匠だって結果からすれば変わりそうになりながらもギリギリの所で踏みとどまったと聞いている。

 結局でそう言う状況下で大切なのは心の中に譲れない『モノ』を手に入れることらしい。

 じゃあ…師匠にとっては何なのだろう。

 あの戦争状況で師匠が決しても譲れないモノが何なのか、今だに変わらずにいられるものは何なのだろうか?


「ノックスはそれが無いという事なのだろうか? それともそれが無くなるほどの衝撃を受けたという事なのだろうか?」

「かもね。殺伐とした戦場を見ると英雄感みたいなものは失われるらしいし」

「まあな。俺だって戦場をしっているみだから言えることだけど。やっぱり命の奪い合いという現場は英雄感とは無縁だからさ」

「だね」


 ジュリは一歩前に出て俺の方へとハニカミながら俺をときめかせようと試みるジュリ。

 右手を俺の方へと突き出してきて、俺は左手を伸ばしてゆっくりと手を繋ぐ。


「でもソラ君はそれでも変わらないんだね」


 それは俺にとって変えられない大切なモノが存在しているのなら………それは俺には憧れる夢があるから。


「夢か……ガーランドさんみたいになりたいとか?」

「俺の心を見透かさないでください! お願いします!」

「もう…素直になってもいいのに。素直になれないのはツンデレだから?」

「男が男へのツンデレ何て腐女子以外喜ばないだろ。男子はドン引きだろ。止めよう! 結構危ない!」

「そうかな? ソラ君やガーランドさんの関係を進め欲しいって皆思っていると思うよ」

「絶対にない! 皆はそんなドン引き関係何て見ていられないだろ!? どうしてそんな恐ろしい関係を想像したら卒倒するんじゃないか?」

「でも腐女子さんは喜ぶんでしょ?」

「喜ばせたくない! 絶対に嫌だ!」


 俺は「この話題は終了だ!」と切り替えるとエアロードが吐き気を催しているように見えるのは気のせいだろうか?

 メトロポリタン美術館の目の前へとやってきた俺達。

 傍から見ればペットを連れて歩いているカップルに見えるのだろうかと考えているとエアロードが「ペット呼ばわりするな!」と突っ込んできた。

 そもそも心を読まないで欲しいのだが。


「結構大きな建物だな」


 素直な感想を口から漏れ出て左右上下と確認すると垂れ幕に堂々と英語で『異世界絵画展覧会』と書かれている。

 どうやら今日は絵画の展覧会をしているようだ。


「ペット可なのかね? 割り増しとかやめて欲しい。エアロードもっと奥に隠れてくれないか?」

「だからペット扱いするな! ペットじゃない!」

「じゃあ外で待つかもっと奥に入るのか決めてくれ。どのみち他人からどう見られるかだからな。他人からすればお前はペットだ」

「グヌヌ……じゃあ奥にいる」


 そう言って完全に奥の方へと隠れていき俺とジュリは手を繋いだ状態で中へと入っていきチケットを購入してから中を散策していく。

 進路ルートを順当に回っていく事にし、彫刻なども見始める。

 ジュリからすれば見慣れない文化や歴史を感じられるという点で結構好印象らしく、かなりマジマジと見つめている。

 俺は貰ったパンフレットをジッと見ながら展覧会のあるコーナーを確認してみる。


「へぇ……流石世界三大美術館の1つというだけはあるよな。広いから真面目に時間を気にしていないと困るよな。なあ……」

「……………」


 話しかけるなと言われているのではと思われるほどの沈黙が襲い掛かってきて結果……黙る。

 怖いです。

 服の中でエアロードが物凄く外の様子が気になるようでモゾモゾと動き回っており、その内バレそうな気がするので俺はエアロードにしか聞こえない声で脅しておく。


「次動いたら……叩きのめす」


 大人しくなった。


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