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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
ニューヨーク・アップヒーヴァル《上》
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ゴーストからの挑戦状 7

 目の前で倒れていた大男の体を破裂させて現れたゴースト、この男がやってしまったことに俺は一瞬で怒りの沸点は限界を突破して一気に駆け出していく。

 緑星剣を横に向かって強めに振ると風の斬撃が後方に存在している壁の残骸を粉砕し、ゴーストはその攻撃を体を逸らして回避しつつ、真上から降りてきた師匠の攻撃をバク転で回避して俺と師匠に向かって百本近いナイフを飛ばしてくるのだが、ナイフはまるで生きているような動きで俺達の周りを飛び回る。

 真上からケビンとジュリが光と風の弾丸でナイフを落とそうとするのだが、ナイフはそれすらもクネクネと動き回って回避していき、俺と師匠は出来るだけナイフを回避しながら落としての作業を繰り返し突っ込んでいく。

 俺は師匠の動きに合わせて土の一撃を叩き込む為緑星剣を地面に突き刺しながら突き進んでいき、俺は緑星剣を振り上げて土で作り出された竜の顎でゴーストを襲うのだが、ゴーストはその攻撃をバズーカ砲で粉砕する。

 しかし、そこまでを俺は予想して攻撃を加えたのだ。


 師匠は大剣を横なぎにゴーストに叩き込むのだが、ゴーストは叩き込まれる瞬間に体を分解していく。

 大剣の刃がゴーストに届く数ミリ前でゴーストの体が粒子状へと分解していき、それは風に乗って瓦礫と化した建物の中を移動していく。


「太陽の鏡!」


 俺は右腕を伸ばして二枚の鏡が同じように粒子状の状態でゴーストの体に向かって襲い掛かっていくのだが、何せ粒子状にまで分解されているので負いきれない。


「よせ。どうせ魂だけの状態に移行する……それより全員周囲に警戒を続けろ! どの体に入り込むか分からんぞ」

「それって最悪師匠やジュリ達に入っていくって事?」

「それは無い。ゴーストが入りこめる人間は意思の弱い者や遺体などの意識を持っている無い者に入る事が出来る。この場合この辺に散らばっている遺体だ」


 師匠の指摘した通り落ちていった武装集団の遺体の1つに入り込み姿を変えていく。

 防弾ジョッキやガスマスクなどの装備が黒いオーラが纏っていき、黒いフード付きのコートへと変貌していく。


「ここに沢山の体が存在するからね。僕が入る器なんて生きている必要は無いんだよ。心臓が止まっていても、最悪肉体が粉々でも僕は入り込むことが出来るんだよ」

「厄介にも程があるでしょうに……忌み嫌われればいいのに」


 真上からケビンの呪言が聞えてくるのだが、ゴーストからすればそんな言葉で機嫌が損なわれるようなことは無い。

 むしろそんな言葉を涼しそうに聞き流す。


「ハハァ! よく言われるよ! 僕は好まれているんだねぇ!」

「嫌われているんだって気が付いているのにそう言う事を言えるオマエは天才なんだな。本当に……嫌いだ! 簡単に俺達が大切にしているモノを奪う!」

「大切ってあんな奴気にすること無いのに…殺せばいいのさ!」


 そこは重要じゃない。


「俺達は生きている限り救う事を諦めたくないんだ! お前は生きていないからそう言う事が出来るんだ」

「そうだよ。僕は命が無い。魂なんて存在は説明のつかない異能の概念でしかない。それを証明する手段がない。異能なんて………存在しないと言われたら存在しないんだよ。僕は存在しないんだ」


 異能は誰かに依存する事で存在することができ、異能は命の持つ可能性が具現化した存在であるとある科学者が述べたらしく、それはいまでも論文として発表したらしい。

 まさしく魂も……異能が存在しなければ証明することができず、異能もまた竜が居なければ証明できない。

 だからその科学者は最後にこう述べた―――――「竜とは可能性が具現化し降り立った姿である」と。


「それでも……俺は生きる限り『救う』事を止めない! お前がそれを否定するのなら……俺はお前を許さない」


 生きる限り救う事は諦めないし、誰だって救われる権利と救う権利があると思っている。

 救う事に不満を持つことだってあるだろう、誰かが救われることに嫌味や嫌悪を吐き散らす人だっているだろうが、俺は……それでも救う。

 身勝手と言われても、我儘だと罵られても、愚かなんて罵倒を浴びせられても、それは間違いなんだって言われても俺は救うという事を止めない。

 中には命を奪う事が救う事が出来ることもあるだろうし、せめて死ぬ瞬間ぐらい納得して終えて欲しい。


「どの命にも……最後の瞬間ぐらい笑っていて欲しい。それはお前だって同じなんだ。魂が存在するのならお前だって生きているんだろ?」


 ゴーストはきっと初めて苦しみだした。

 頭を両手で覆い苦しむように左右に振りだし、物凄い奇声を吐き散らしながらまるで俺や師匠に対して罵声を浴びせているように思えるのだが、なんというか地球上に存在していない言語のようだ。

 もしかしたら彼が生まれた世界の言語なのかもしれない。


「ハハァ……君…面白いねぇ。君みたいなやつガーランド以来だよ。ぶっ殺してやる! 僕をここまで傷つけた奴は初めてだよ! 僕の魂を抉ったような痛みを与えた奴は! いいか……絶対に殺してやる!」


 そう言ってゴーストは体を膨らませていき俺は太陽の鏡をゴーストの体の周りに纏わせて爆発の威力を最小限に抑えることに成功する。

 息を吐き出すと俺は今一度肉体を飛び散らせた男の近くまで寄っていき黙祷する。


「良く言ったぞソラ。お前の言葉があのゴーストの魂を抉るのが良く分かった」

「あなたから教わったことだ。俺は生きる限り諦めない………絶対に! 救えなかった命は絶対に忘れずに生きていく。救う事を絶対に…」

「……それでいい。お前は間違っていない」


 綺麗事だと言われても俺は絶対にこの意思だけは曲げたくない、だってこの意思こそが俺が師匠から受け継いだことなのだから。


「どうしましょうか? 住民を探さなくてはいけませんね」


 ケビンとジュリがシャインフレアと共に降りてくるとそう尋ねてきたケビンに改めて向き合う。


「そうだな。調べたいところだが…手掛かりが存在しないと調べようが無いな。ゴーストの依頼主を調べてみてもいいが……」

「ケビンさんは何か知っていませんか? あの武装集団について」

「……分かりませんね。多分機密組織なのでしょう。なので下手をすれば大統領すら知らない可能性が高いですね」


 大統領ですら把握できていない組織が存在しているという言葉に少しだけ驚いているのだが、しかし西暦世界の最大国家の1つであるアメリカの闇が浅いわけがない。

 どんな国にも闇は存在するのだがからアメリカにも存在しているだろう。

 それに陰謀論なんて噂程度でも良く聞く話だし。


「このマンハッタンで隠れそうな場所を調べた方がよさそうだな」

「廃墟とかですか?」

「いや…ジュリ。この場合あのような秘密組織が潜伏する場所に廃墟は無いでしょう。何せ母国なのですから。いくらでも隠し場所ぐらい作りようがあります」

「ケビンはどこか候補があるのか?」


 俺はケビンにそう尋ねてみるとしどろもどろに「も、勿論です」と言葉を発するのだが、俺達の中で「知らないんだな」と諦めることにした。


「ケビン…あなたそのようにしどろもどろな喋り方をすれば知らないと暴露しているのと同じことですよ」

「シャインフレアが余計なことを言わなければ指摘されることもありませんでした! あなたは一緒に過ごしていても」

「あなたが常に適当にのらりくらりと適当に過ごしているから指摘しているのです。これでも私は几帳面なので」

「確かに……目を覚ます時から時間ぴったりですし」


 シャインフレアとケビンの生活習慣が垣間見れた瞬間でもあったが、正直にゴーストの動きが読めなくなった。


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