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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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太陽のはじまり 2

 太陽の英雄譚


 千年前。十六の大きな島々とそれ以外の孤島郡ではそれぞれの遥か昔から嵐に見舞われてきた。

 人々は海竜に願いこの地の平穏と引き換えに海竜に供え物を捧げるようになった。

 大陸では魔王と名乗る者が人と竜を騙して回っており、多くの『魔導』と『呪術』を奪っていた。

 いずれ魔王はあらゆる異能をその身に宿す異形のモノとなり、それでもなおかの魔王は高みを目指していた。

 海竜と光竜。

 二人の竜は一人の少年に『(さざなみ)の槍』と『太陽の力』を与えかの魔王を封印する力を与えた。

 魔王十六の太陽の力と漣の槍により封印される。

 これ太陽の英雄譚なり。



 俺はアクア・レインと呼ばれる海上要塞のレベル1のロビーにあるソファで休憩しながら、ふと呆けていた。

 なんとなく呆けてしまっていたのだが、すっかり元気一杯まで復活したレクターは要塞内へと駆け出していった。


 結局あの手鏡が何だったのか俺にはよく分からなかったし、あの外相は何も話したがらなかった。

 最もあの外相が知っていたのかどうかが疑問であるが、自白剤を飲ませて吐かせたとしても理解できる方がおかしい話である。


「体に異変も無いし、あの手鏡が何だったのかぐらい分かりたいところだし………」


 そういえば水中トンネルは結局の所でどうなったんだろ?

 メメという女とバウワーというあの男と父さんの勝負はどういう結果に終ったのだろうか?



「で?あなたが戦った二人、水中トンネルの陥没で逃げたのね?アベル君らしくないわね」

「水中トンネル陥没の速度が予想以上に早かったうえ、あいつら死なないようにと心がけていたからな。自然と決着が長引く。それよりサクト。あの外相の尋問はお前が居てやらなくていいのか?」


 アベルとサクトの両名は第一指令室前大広間で横一列に並びながら、その場でしゃがんで瓦礫の1つを掴むアベル。


「良いのよ。どうせ大した情報が得られるとは思えないしね。でも、あの手鏡が何だったのかぐらいは知っておきたいから、自白剤とは言わないまでも………できれば出所ぐらいは知っておきたいわね」

「ソラは太陽の英雄だとか言っていたな。こればかりはジェノバ博士に聞いた方が良いのかもしれないがな」

「失礼いたします!アベル大将!サクト大将!ジェノバ博士がいらっしゃいました」


 士官が案内する前に大広間へと足を踏み入れているジェノバ博士、しかめっ面に見える顔面の奥は周囲の惨状の方に目を向けていた。


「大した暴れようじゃな」

「ジェノバ博士。太陽の英雄について教えていただいてもよろしいですか?」


 ジェノバ博士は目を細め、大きなため息と同時に呆れ声を発しながら渋々と語りだしたお話こそ『太陽の英雄譚』

 その話を黙って聞いていたアベルとサクトには千年前の英雄譚と手鏡を何とか必死にくっつけていた。


「太陽の英雄………どうなのかしらね。太陽の力と手鏡がくっつくとは思えないけれど……」

「どうだろうな。昔聞いた話では日本では太陽と鏡を同一に考えている節があるそうだ。昔の日本神話には鏡を投げて太陽としたというおとぎ話があると聞いたことがある。鏡で太陽の光を反射した時真正面から見ると太陽に見えるからだとかなんとか」

「そう………まあそう言われればそうかもしれないけど。それって単純に鏡が光を反射するからでしょ?」

「だからだろ?光を反射するんだから太陽の代理として見られていたという話じゃないのか?日本神話では鏡は三種の神器の1つにあると聞いているぞ。確か『八咫鏡(やたのかがみ)』という名前だったか?」

「太陽と鏡。確かに同一視したくなる気持ちというのも分からなくはないけれど……この場合は日本じゃなくて海洋同盟よ?繋がりある?」

「人間というのは案外似ているところが多い、日本人が考えたことという事は、それ以外でも考えてもおかしくは無かろう?」


 アベルとサクトが考えている間、ジェノバ博士はソラを捜して回っていた。


「ソラ君でしたらロビーで休憩しているはずですが?」

「そうか……あの少年が手鏡を取り込んだと聞いたのじゃがな」

「竜の顎。あらゆる異能を砕き、あらゆる異能を取り込む。『竜の欠片』が最強の魔導と言われるが所以だ」

「フン。そんな異能を長年隠し続けてきたとはよっぽど用心深いようじゃな」


 ジェノバ博士は息を漏らしながらロビーへと消えていった。



 ソファに腰を下ろしてから約一時間呆け続けていたのだが、エレベーターで降りてきたのは見慣れたジェノバ博士だったりする。

 俺の目の前までやってきて右手を伸ばす。


「出せ」

「何の話です?俺何か取りました?」


 全く持って身に覚えのない話である。

 しかしジェノバ博士は先ほどから右手を引っ込めてくれない。


「竜の欠片を見せて見よ」

「なら最初っから言って欲しい」


 俺は星屑の鎧を召喚しそのまま右手の甲を見せるように差し出す。

 すると俺の右手の甲に見慣れない黒い丸い痕が付いている。


「やはりか………太陽の英雄は右手の甲に十六の太陽を刻み込んでいたという。お前さんは今太陽の力を体内に宿らせておる」

「じゃあこの痣は?太陽の痣?」

「の欠片じゃろうな。まだまだ完成には遠い。恐らく力すら使えないぐらい弱い。弱くて弱弱しい」


 あくまでも欠片か………じゃああの鏡はその太陽の魔導の断片に過ぎないという事なら後これが十六個必要になっている。


「いや、この周りに十六の太陽の欠片が揃うからの。あくまでもその準備が整ったという事じゃろう。これから十六の太陽の力を付けなければならんのじゃと思うがの」


 太陽の英雄は俺に何が言いたいのだろうか。

 考えても仕方のない事である。



 フォードはオールバックの黒髪の乱れを多少直しながら、自らの自室へと戻ろうとするその対振る舞いはある意味クールの一点に尽きるだろう。

 落ち着いて対応しており、表情を乱す事はあまりない。


「ギル……言っただろ?無理をする必要はない。あくまでも『太陽の英雄の情報と外相からドラファルト島の情報を手に入れろ。それ以外はするな」ってね。今回君は半分私怨で動いたね」


 烈火の英雄は顔を背けどこか気まずそうにしている。

 無理もない話で、彼は今回フォードから散々のように言われてきたことを半分ほど無視をしているのだから。その上、敵勢力の戦力を誤って計算し、一人は捕獲されて、もう二人は重症なのだから。


「やれやれ……私怨が入ってしまうのは仕方が無いが」

「このまま引き下がるのか?」

「帝国本土内で問題を起こすのと、海洋同盟内で問題を起こすのでは事情が変わってくるからね」


 フォードはやれやれという仕草を見せ、自らの椅子に座ろうとする。


「ボウガンをどうする?」

「無論救出するさ。だが……タイミングを見る事にする。アクア・レインから移送するどうかで作戦の決行を決めようとしよう。もし飛空艇なら……」

「飛空艇なら?」

「チャンスがあるさ………」


 フォードは机の上でやり損ねた仕事の処理へと入っていった。

 烈火の英雄は疲れ果てながらその場で倒れてしまった。


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