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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《下》
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運命の交差点ーギルフォードー 13

 八代がトラックから降りたのは大阪市内へと辿り着いてからの事だった。

 スマフォからの命令に素直に従って降り、改めて背伸びをしながら体を解していると改めて周囲を見回すだけの余裕が生まれていた。

 港に程よく近く、異国大学が炎に今だ包まれている光景と大阪市内に多少ではあるが炎が昇っているのを見て本当に今戦いが起きているのだと実感できた。

 今までもできていなかったわけじゃないが、それでもどこか実感のわかない経験を過ごしていた。


 言われた通りにやってきて、ここまで辿り着いて「運がいい」というレベルではない。


 下手をすれば死んでいたかもしれないと思うと、安堵の息を漏らしてもくてきの人物探しをしなくてはと思って身体を九十度右側に動かしたところでもくてきの人物が異国大学を眺めながらスマフォを握りしめていた。

 内心「運がいいわね」と思ってしまうが、それは同時にお互い様な状況でもある。


「八代君!? 無事だったのか?」

「ええ。そちらも無事だったみたいね。どうだったの会談は?」

「滅茶苦茶にされてしまったよ。異国大学に向かおうとしている真っ最中に襲われてね、最初の目的地で階段をしていたら間違いなく死んでいた。真っ先に駅前が攻撃対象に成ってしまったよ」


 それが決して偶然では無いと八代にも国防長官にも分かってしまう。


「異世界交流会に忍び込んだ者がいるな。それも、私の代理者から情報を仕入れたものが。やれやれ……やはり嫌な予感というのは当たる。それで? 君はどうしてここに? 異国大学にいたのでは?」


 八代は国防長官におおよその説明をし、機竜によって導かれたことと黒い箱をソラに渡すようにと頼まれたと告げると、国防長官は口元を右手で覆い何かを考えるそぶりを見せる。


「…その黒い箱はある日突然届いたんだ。中身を調べようにも機材一式はクライシス事件で殆ど失っていたし、国内の状況も信用できなかったからね。大統領も忙しかったし、何よりあの狸…副大統領の耳に入るのだけは避けた方が良いだろうと思ってここまで運んできたが…」

「副大統領。よっぽど嫌いなのね?」

「今回の事件は副大統領が引き起こしたものだ。間違いがない。彼がここに来ていたという証拠写真も手に入れた。クソ。もっと早くに掴んでいれば…」


 国防長官は悔しそうに車のフロントガラスに左拳を叩きつける。


「悔やんでも仕方がない事でしょ? そんな事より今するべきことは全くの別では無いのかしら?」

「そうだな。しかし、そうなるとこの事態をある程度読んでいた者がいるという事になる。だとしたら…まだ」

「ええ。今からちゃんと対処をすれば助かる命もあるという事でしょうね」


 八代は黒い箱をそっと白衣のポケットの中へと入れ、国防長官は本土にいる人間に連絡を入れようとしていた。



 アンヌとの戦いが終わり一息ついたボウガン、正直に言えば楽しい思える戦いだったと思うし、何より興奮する一時だったがこれ以上長居をする理由にはならなかった。

 彼女にレインを託せば大丈夫だろうと感じていたし、もう既にこの日本という国には未練何て存在しない。

 後始末の為に各地に隠れているアメリカ兵の残党狩りをし終えた所で、ようやく関西国際空港を外からバレないように眺めていたボウガン、どっちが勝つかなんてどうでも良い事だったし、何より興味のない話。

 何せどっちが勝っても意味が無い戦い。


 勝手にすればいいと思ってその場から移動していくボウガンを誰も目撃などできなかった。


 ギルフォードとカールの戦い。

 関西国際空港ロビーで行われていた戦いは激しさを増していき、二人が衝突することで生じる衝撃波は全てのガラスを吹き飛ばす。

 しかし、元々連戦を続けてきた両者が全力を出し続ける事が出来るわけがなく、結果二人は力尽きてそのまま一旦地面に落ちていく。

 全ての力を出し切ったわけではない両者、カールはギルフォードの周りを囲むように熱線を十個作り出して一斉照射するが、ギルフォードはそれをジャンプ一つで回避して再び地面を蹴って移動していく。


「ボウガンは何がしたかった!? 何故この国を狙った!」


 右側の剣を振りぬくがカールはそれを右手に持った光のリングで受け止めて見せる。


「昔この世界に現れたエネルギー生命体を開放し、その際に生じる世界の乱れを一点に集中する=目的。その為に『一人の少女を殺す』という作業と、その際に生じる乱れを『一点に集める為に矢印になる人間』が必要だった=絶対」


 淡々と語るカールの語り口を聞くため一旦攻撃の手を緩めるギルフォード。


「今後の我々の活動の為にもこの二つの作業は必要=絶対。作業手順がある以上的確な作業がいる。しかし、前回の計画であなた達は良くも悪くも私達を妨害した=想定外。だから……あなた達が妨害しにくい状況を作り出す必要があった=必須条件。そんな時舞い込んできた頼み事、それが副大統領派によるクーデター事件=好都合」

「……全部そいつが」

「あくまでも私達は都合がいい状況に乗っかることにした=有利。しかし、それでもあなた達は抵抗を続けた」


 アンヌもギルフォードも抵抗を続け、結果計画がズレていったが、それでもそのズレ自体は直ぐに修正が効くレベル。

 カールは関西国際空港の二階から上を自分の体から生じる生命エネルギーを攻撃エネルギーに変換して吹っ飛ばして見せた。


 攻撃方法が間違いなく化け物レベル。


「あれを見て=海側」


 カールが指を指す方向を誰もが見つめたその時、遥か遠くではあるが大きすぎるほどの台風や竜巻に見える積乱雲、それは積乱雲というレベルですらなく、ハワイ一帯の空を覆いつくている。


「あれこそが白虎と同じく封印されたエネルギー生命体、でもこれは想定外=計画外。本来朱雀はサンフランシスコ上空に現れるはずだった、それがあの位置までズレた=想定外。これはあなた達が計画を歪めたせい。あなたが、アンヌという小娘が、向こうにいるケビンという女が、ジャック・アールグレイという男が、何よりソラ・ウルベクトが計画を所々で歪めさせた=面倒な事。何より…油断していた私自身が憎い=ぶっ殺したい」


 本来の計画通りにカールが進められなかったばかりにレインを使った計画が乱れ、それ故にニューヨーク一体起こす予定だった計画に乱れが生じ、結果多くのミスを誘発する結果に終わった。

 彼等五人だけじゃない。

 多くの『何者か』が邪魔をし、その上でこれまでの乱れを作り出した。


「その行為は万死に値する=死ね」

「……どうしてレインだったんだ!? 他にも候補はいたんじゃいのか!?」

「居ない=絶対。彼女は不死鳥による恩恵を人一倍受けていて、その身に宿った異能は力の流れをコントロールできる=良い能力。資料の楔との接続率も良いし、何より埋め込んでも簡単には死なない=都合が良い」

「どうして……何でアイツなんだ!? いつもいつも…」


 海洋同盟の時も、研究都市の時さえもレインは巻き込まれていた。

 事件の中心に鳴きこまれてしまうレイン、その原因はあの時ギルフォードが救えなかったから、魔王の計画に使われてしまった事。

 救う事もできず。

 救ってもらう事すら誰かにしてもらってこうして、今レインを守る事すらできなかった。


 自分の不甲斐なさに怒りを露にし、ギルフォードの両目が不死鳥のように真っ赤で同時に鳥類を連想させるものに変貌した。

 ただ今は自分の不甲斐なさを払拭する為に立ち向かおうと頭の中を空っぽにしてもう一度立ち上がる。


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