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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《下》
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運命の交差点ーギルフォードー 12

 目の前で妹を救えなかったという気持ちと、メメが率先して助けようとしていたのに何でもできなかったという想い、そして奈美が体を張って助けようとしてくれたのに自分は何をしていたんだという強い後悔が混じり合い結果、ギルフォードは何もできずに蹲ってしまっていた。

 空母は現在大阪の港へと向かって移動を始めており、停泊後は国防軍の監視下に置かれるという話になり、現在国防軍の軍用ヘリが次々と空母の甲板へと停泊しているが、そんな事すら気に成らないぐらいにギルフォードはショックで身動きができずにいた。

 すると近くにいた国防軍の兵士の一人の会話が嫌でもギルフォードの耳もとにまで届いた。


「先ほど関西国際空港にアメリカ軍と不死の軍団のメンバーと思われる存在をかくにんしました。関西国際空港にはガイノス帝国軍の飛空艇があります。あれで脱出するつもりでは?」


 そんな話を聞いた時ギルフォードの中にボウガンという個人名が浮かび上がり、その話をしていた兵士に突っかかっていくギルフォード、胸倉を強めに掴んで一言「俺をそこへ連れていってくれ!」と叫ぶ。

 ただ焦り自分に出来る何かを探し出して立ち上がる。

 一機のヘリへと乗り込むと複数の国防軍を載せ、一斉に飛び立っていく軍用ヘリ、それを見守っていた奈美は目の前で意識不明の重体になってしまっているメメの治療の手を休めることは無かった。



 カールは苛立ちの中に降り、アメリカ兵の軍団と共に関西国際空港を完全に掌握していたが、彼女の目的はあくまでもアメリカ兵の始末。

 ロビーに集まったアメリカ兵、カールは窓から見えるのがガイノス帝国製の飛空艇、戦闘用にはあまりできていないが、頑丈に作られた装甲と多少の銃火器さえあればある程度の問題は乗り越えることが出来る。

 アメリカ兵の目的はその飛空艇を手に入れて本国に帰還することだが、不死皇帝たちとの接点を手に入れた組織を今更許すわけがない。

 しかし、それ以上にカールは憂さ晴らしをしてやりたいという気分になっており、その理由は先ほどアンヌという女性に負けてしまったことが原因。

 何故自分がなんな人間に負けたのか、原因を探ってみてもはっきりわかるのは自分が舐め切っていたから。

 最初っから本気で襲い掛かっていれば負けなかったし、何より普段から隠す事ばかりを考えていた自分の行動が原因で計画に大幅な乱れを作り出した。

 何よりそんな自分の不甲斐なさに怒りをつのらせ、その矛先が誰でもいいというスタンスを崩すことなくカールはアメリカ兵が全員集まっていると確認すると真上から容赦のない熱線攻撃を叩き込んで彼等の遺体一つ所から欠片すら許さず消滅させた。


 その後窓越しにアメリカ兵が入り込む際に使用した加工済みの特殊航空機を同じように爆発させて一旦ロビーまで降りたところで入ってきたギルフォードと接触した。

 真後ろに現れたギルフォードに驚きはまるでなかったが、しかし自分の近くに現れた不快要素を前にして苛立ちが多少高まるのを感じた。

 自分を不快にする存在が目の前に現れたと感じて真後ろを向くと、殺意がむき出しの状態で双剣を坂持ちにして佇むギルフォードがはっきりと視界に映り、同時に睨むのではなく無表情を作り出しながらも向き合う。


「余計な仕事を増やさないで欲しい=去れ」


 やってくるなという明確な意識を向けてみるが、そんな事よりもギルフォードにはどうしても聞きたいことが存在していた。


「……ボウガンはどこだ? お前の仲間だろ」


 カールは見ていてハッキリと分かった。

 ボウガンは素早くやるべきことを終えて、この男に屈辱を与えて去っていったのだろうと、だからこそ余計に腹正しい。

 ある意味目の前にいるギルフォードと似たような立場にいる自分が、何よりそんな気持ちにさえたアンヌという人間が。


「知らない=興味ない。たとえ知っていたも教えない=絶対」

「なら体に直接聞くまでだ」


 殺気を放って一歩近づいてくるギルフォードの真後ろから国防軍が次々と姿を現し、カールは彼等を含めた牽制と自分の怒りを込めた一撃一つの熱線に込めて解き放つ。

 ギルフォードの右側を五センチほどの距離を開けて通り過ぎた一撃はロビーの出入り口に着弾すると大きな爆発音が周囲一帯に衝撃を与えた。

 それだけで不死の軍団へと突撃をかまそうとしていた国防軍の足を止めることには成功したが、ギルフォードの足を止めることには成功しなかった。


 どんなことをされても前に進もうとするギルフォード、それを見て苛立ちを更に募らせていくカール。


「ボウガンはどこだ!? あいつに用事があるんだ!」

「知らないと言っている=面倒! これ以上聞くのなら容赦しない=殺す!」


 ギルフォードの進む足が止まることは無い、今度こそギルフォードへと直撃コースの一撃を叩き込んだはずだったが、ギルフォードはそれを左側の剣で弾き一気に距離を縮めていく。

 驚くことはしない。

 そういう人間がこの世の中にいると先ほど認識を改めた所だったし、何よりそうでなくてはこのストレスを受け入れてくれない。

 一瞬で終わる様な相手にはカールとて用はない。


 カールの背中から生えた天使を象った羽を羽ばたかせ、上空を抑えながら上から拡散熱線攻撃をギルフォードの周りに着弾させるが、ギルフォードは攻撃を全て紙一重で回避し絵上空目掛けて蒼い炎を纏わせた斬撃をカールに向かって解き放つ。

 しかし、真上に上がる分どうしても速度が落ちてしまい、カールはその攻撃をあっさりと避けて今度は風を操り始めた。


 カールは未だに発展途上の能力、それは同時にカールがこの二千年間を成長することなく過ごしてきたという証明でもある。

 というよりは不死であり、同時に天使のような能力を持っているカールには必要のない事であり、今まではそんな事はまるで考えんかった。


 黙って一人で本を読み、不死皇帝が望めばその為に任務に励めばそれだけで良かったが、しかし、その任務すらまともにこなす事が困難になり、結果アンヌやその辺にいる人間達に後手に回った。

 もっと自分が戦えていればという気持ちが高まっていく事、それは同時にカールに進化の兆しを見せようとしている事と同義。


 天使であるのならさらにその先へと昇り詰めようとするカール、今度こそ不死皇帝に任された任務を確実にこなす為に。


 カールの上空に現れた複数の光のリング、それはギルフォードへと突っ込んでいく。

 突っ込んできた光のリングをギルフォードは紙一重で回避するが、ギルフォードの目の前でそのリングは破裂して粉々になってしまう。

 破壊されると同時にギルフォードの体は吹っ飛ばされ、、転がりながらも上手く受け身を取って何とか態勢を切り替える。


 紙一重で避けていたのでは駄目だ。


 そう意識を切り替えて再び走り出したギルフォードは不死鳥の力を最大値まで引き出し、背中に作り出した蒼い炎で作った鳥の羽の形をしたオーラ、それを羽ばたかせて上空へと舞い双剣でカール目掛けて叩き込もうとする。

 カールは双剣の攻撃さえも光のリングでやすやすと受け止めて見せる。


「ボウガンはどこだ!? お前は何を知っている!?」

「………語ることは無い。教えて欲しければ……立ち向かってきなさい」


 強くなりたいと願う二人。

 しかし、その理由は全くの別。


 今回の戦いで屈辱を受けた二人はぶつかり合う。

 その先になにも得られないと分かっていても……きっとそれでも戦うのだろう。

 自分の心に従いながら…真っ直ぐと。


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