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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《下》
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運命の交差点ーギルフォードー 6

 多くの人の目がメメの方へと向かっており、それはギルフォードとて違いはない。

 実際メメの目の前にある大きなお皿、お皿の大きさだけでも人の頭二つ以上はあり、その上に山のようになっているオムライス、量だけでも成人男性三人前以上はあるだろうことは間違いがない。

 見ているだけでお腹一杯になるし、ギルフォードとしてはどうやって作ったのかと不思議になっていた。

 学生たちがひそひそ話に興じており、内容なんて聞かなくても想像できてしまう。

 何せ背の低い小柄な体格をしているメメの体の何処にこれだけの量が入っていくのか不思議でならないし、最悪吐く未来しか見えなかった。

 ギルフォードの目の前に置かれたサンドイッチに手を伸ばし、メメはスプーンを片手に早速オムライスの側面をすくって口へと運んでいく。

 最初こそゆっくりな速度で食べていたメメ、ギルフォードはゆっくりとサンドイッチを食べていき、一つ食べ終わる頃にはメメのオムライスから三分の一が消えていた。


「お前……良くそんな量を食べられるな。見ているだけで食欲が無くなっていくぞ」

「美味しいですよ。食べたければ注文してみては?」

「聞いていたか? 人の話。見ているだけで食欲が無くなると言ったんだ。しかし、こうしてみると大学というより街だよな。まあ平和そうな街だと思うけど」


 闇や裏を全く感じない大学というのも二人からすれば珍しい。

 国や組織という者は嫌でも闇や裏という側面を持ち、それは会社でも決して違いはない。


「出来たばかりだからではありませんか? 会社だって完成したばかりではそんな感じでしょう?」

「そんなものかね?」

「私はそう思います…それにあなたのいいたことは結局で海洋同盟に対する皮肉でしょ?」


 海洋同盟は存在そのものが嘘で出来ており、その国の中心は闇しか存在しなかった。

 ある者は立ち向かい、ある者は屈して、ある者は知らないで過ごす。

 それが当たり前の世界であり、それしか知らない二人からすれば日本という国は裏や闇が少ない国でもあった。

 だからと言って無いというわけじゃない。

 しかし、過ごしていても殆ど接する機会のないというのは本当に珍しい事であり、それだけ過ごしやすいと感じていた。


「ギルフォードは日本が気に入りませんか? 顔にはどこかつまらないと書いてあるような気がします」

「そんな事は無い。過ごしやすいし…レインだって気に入っているしな。なんだかんだ言って親方と一緒に過ごしたことは大切な思い出だ。でも、どうしても海洋同盟の時の癖が出てしまうんだ。何事も裏を読もうとするという癖が…」


 嘘まみれで過ごしてきたギルフォードからすれば、何事も裏側を見て過ごそうと思ってしまう。

 最初の時もその所為で中々人との距離を縮められなかったし、何よりそんな自分の性格が非常に嫌に成ってしまう。


「それは仕方がない事でしょうね。私はもう慣れましたし…いい加減慣れてもいい頃合いでは?」

「考えてみます…」

「何故敬語なのですか? それより食べないのですか」


 気が付けばオムライスの四分の三までが空になっており、その速さにドン引きするギルフォードはゆっくりとふたつ目のサンドイッチに手をかける。

 口へと反込んでいく過程でメメのスマフォが鳴っていく、それを片耳に付けて食べながら話を聞いていると、驚きの事実が耳に入ってきた。

 メメは急いで時刻を確認すると時間はお昼の一時を過ぎており、再び電話へと意識を戻していく。

 その際に持っていたスプーンを皿へと置き、一旦席を外していく姿を不思議そうに見ていたギルフォード。


「ギルフォード! 大変です! 空母から多数の戦闘機が近づいているという話が! 狙いはこの大学のようです」

「何!? 何故?」

「分かりません。どうしてなのか…」


 急展開する事態にいよいよ追いつけないでいると、ギルフォードは事態を確認する為にメメに「到着時刻は?」と尋ねる。


「おおよそですが…今が十三時半頃ですから十四時ですね」

「京都での大規模作戦の予想時刻も十四時だったな…」


 するともう一度メメのスマフォが鳴り響き、もう一度耳に当てるとメメの表情が一変した。


「ギルフォード………レインちゃん達が誘拐されたと…」


 ギルフォードの表情が一変した。



 時間はほんの少し前まで遡っていく。


 遊園地で遊んでいるレイン達は見守っていたカラス、その視界を通じて二人を見ていたボウガンの元に空母がそろそろ動きを見せるという話を聞き、ボウガンはその合図を聞いて動く準備に入った。

 心の中でギルフォードへの謝罪を済ませ、瞬間移動をする準備を終えて、レイン達一行が人のいない場所まで移動するのを待ちわびていた。

 レインたちがお土産屋から出てきて一旦トイレに向かっていく過程で人っ気のない場所まで行く一瞬の隙を見計らないレイン達の真後ろへと回り込む。


「やあお嬢さんたち……」


 ガルスが急いで走っていき殴りかかろうとするが、それより一瞬早く動いたボウガンはガルス以外を一瞬で拉致していった。

 ガルスは下唇を噛み締め、悔しそうに表情を歪ませる。


 同じ時間米軍の大規模空母の格納庫下の小部屋まで移動したボウガン、レインたちは怯えた様子を見せボウガンから一旦距離を取る。


「悪いね。最後の作戦にどうしてもお嬢さんが必要でね。というよりお嬢さんは知っていたんじゃないのかな?」


 レインは知っていた。

 こうなるかもしれないという事も、だからこそイリーナや奈美を巻き込んだことをどこかで後悔していたし、どうしようもない事だったとはいえ。


「目的は私……」

「そうだ。悪く思わないでくれよ……これも計画の内。俺だってやりたくてやっているわけじゃない。お前だけは別の部屋に連れていく必要性がありそうだな」


 そう言ってボウガンはレインを片手に部屋から出ていくが、それをイリーナと奈美が阻止しようとするのだが、苛立ったボウガンは思いっきり奈美を蹴っ飛ばした。


「止めてください!! 大丈夫…」


 その時見せた笑顔は儚さを滲ませていた。


 寂しい廊下を二人で歩いていると大きな男が隣をすれ違ったりして、それだけで怖くなっていく。

 しかし、だから取ってレインはそれを顔に出さないようにしていた。


「………立派だな」



 八代は研究室で黒い箱を鞄の中にいれて部屋から出ていく、廊下を歩いていると物凄い音と共に衝撃音が響き渡り、こけそうになるのを壁に寄り添って支える。

 何の音なのかと不安になると大きな爆発音と共に建物の中にスモッグが立ち込めていき、八代は驚きと共に不安な面持ちで周囲を見守っていた。

 すると、スモッグの奥からガスマスクを装着した大柄の男達がアサルトライフルを装備した状況で突っこんできた。

 驚きながら物陰に隠れるが、はっきりとこっちに位置がバレているのに隠れる意味があるとは思えない。

 するとガスマスクを付けた大柄の男はぎこちない日本語をしゃべり始めた。


「ミス八代。こちらにいらしてください。あなたを無傷で確保するようにとの命令です」

「あら素敵なお誘いね」


 冷汗をかいているとマナーモードのスマフォにメールが届いた。


『ソラ・ウルベクトから受け取った石を相手に投げろ』


 差出人不明のメール、今はそのメールの詳細を考えている暇があるわけがなく、この状況を打開する可能性に掛けようと空から受け取った石を思いっ切り相手に投げつけ、ガスマスクの男はその石を咄嗟に銃弾を浴びせてしまった。

 その瞬間大きな爆発が起きて廊下中を粉々にするのではという威力、八代は物陰に隠れていたせいでダメージは無かったが、それでも威力に怯えてしまった。

 再びスマフォにメールが届いた。


『車には乗らないように正面玄関から出て外に待機しているトラックに荷台にバレないように乗れば逃げられる』


「あなたは誰?」


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