運命の交差点ーギルフォードー 5
八代の手帳の中に書かれていた国防長官の連絡先に電話をした結果、会談場所に悩みを抱えているという事を聞き、メメの発案でこの大学で極秘会談を行うという事になり、国防長官を呼び、その間に早めの昼食を食べようという事になり、八代は「忙しいのでパス」と言われてしまい、二人はそのまま大学内のカフェテラスへと歩いて向かう事に。
着た場所から出ていき、駐車場から歩道へと移動して来た道をそのまま戻っていく。
大学構内とは思えないほどに綺麗な道、研究棟や講義室の並ぶ建物、大学生やこの大学内で過ごす人達が利用するショッピングモールなど様々。
「大学とは思えないな…あの大きなマンションは学生寮か? 随分大きいな。今時の学生というのはあんなに大きな学生寮で暮らすものなのか?」
ギルフォードの心の中に生まれた「贅沢だな」という素直な感想を飲み込み、羨まし気な目をしながらマンションを見上げる。
メメからすれば別段羨ましいとも思わない建物、強いて言うなら「上の階に住んでいたら逃げる時に大変そう」ぐらいであった。
「マンションだけなのでしょうか? アパートのような建物がありませんね」
「アパート何て無駄に敷地を広げるだけだろ、そんな場所を確保するぐらいならマンションを選ぶ」
「それもそうですね…しかし、これで米軍側の動きが分かると良いのですが…」
「分からなかったらここまで来た意味がない。それに俺からすればボウガンが全く動きが無いという事の方が気になってしまう」
あれ以降ボウガンに全く動きがなく、刺客が送り込まれるという事も無い。
それはそれで心配になるギルフォードだが、メメは「心配していても仕方ないでしょう?」と切り替えており、そのままギルフォードの前を歩くメメ。
クルリと反転して後ろ歩きのような姿になるとギルフォードの方をジッと見るめる。
「そんな事より京都の方が心配です。米軍と思われる勢力がやはり潜入しているようですし……十四時の段階で動きがあると読んでいます。こちら側にも動きがある可能性がありますが……」
「丁度国防長官たちがここで会談をする時間だな…それより後ろはちゃんと見た方がいいぞ」
メメが「え?」と振り返ると既に時遅く足を看板に躓いて盛大にこけてしまう。
頭から突っ込んでいくメメを見ているとギルフォードはドン引きする。
「前を見ながら歩いた方がいいぞ…」
「……そうですね」
学生が所々歩いている光景が見えてきて、ギルフォードは構内に配置されている時計を確認すると、丁度講義が終了した様で学生たちが昼食の為に姿を現していた。
「早めに食事の席へと急いだほうがいいぞ…この様子ならあっという間に席が一杯一杯になりそうだ」
「もう時遅しなのでは? 今更急いだ所で待たされる結果になると思いますよ。というより、そうならないように食事をする場所は多めにあるのでは?」
「それだってお前の仮説だろ? 早めに行く事に越したことは無い」
ギルフォードはこけた状態で動こうとしないメメを無視して歩き出す。
するとメメは強引にギルフォードの右足にくっついて離さない、驚いたように振り返り強烈な睨みを向けて鋭く睨む。
「何だ? 放せ」
「女性がこけたのですよ!? 普通を手を伸ばして「大丈夫か?」と手を指し伸ばし、助けるべき場面では!?」
「どうして自分で危険な歩き方をしてこけた奴を助けるんだ? 勝手に立ち上がっていればいい。というかさっさと立ち上がれ。あと手を放せ」
ギルフォードからの言葉にぐうの音も出ないメメは大人しく立ち上がる。
「冷酷な男ですね。そんな感じではモテませんよ…」
「結構。モテようとは思わない。お前こそ変な歩き方をしていたら変人に思われるぞ。実際お前を見て笑っていた生徒が複数人いた」
そう言いながらギルフォードは指を周囲を指すと、そこには「クスクス」と笑っている男女の学生がおり、それを見て顔を真っ赤にして背中を何度も叩きながら「早めに言ってください!」と抗議する。
無論そんな抗議が通用するわけがなく、ギルフォードは涼しい顔をしながら目的地まで歩いて行く。
目的のカフェテラスまでやってきた二人は案外空いている室内より、外を選んだ。
椅子に座りメニュー表とにらめっこが始まった。
「悩みますね…このオムライスも美味しそうですし…グラタンもいいですね」
メメは真剣な素振りで悩み始め、ギルフォードは即座にメニューを決めてメメに「まだか?」と促す。
しかし、中々動きが無いメメがまるで獲物を捕らえようとする目つきで悩み続けている。
「そのやる気をもっと別の部分で出して欲しい所だな…」
ギルフォードはふと街並みに目を向ける。
人工島に作られた大学の建物や人工都市として完成された建物、よく見るとその細部にガイノス帝国や技術大国の名残が強く出ており、所々には魔導大国の痕跡ものぞかせている。
いつか動く床が歩道に整備される可能性だってあるかもしれない。
「近代的な都市だな。こういう都市が今後は増えていくのかね? それだってこの世界にとってこんな街すらも空想の存在にすぎなかったんだから」
「……そうですね。二つの世界が繋がり、こうして交流しているからこそできたようなものですから」
「そうだな……で? 食べるものは決めたのか? いい加減注文したいんだが? 面倒なら頼めよ」
「食べきれませんそれとも代わりに食べてくれるのですか?」
ギルフォードは「無理」とハッキリ断り、もう一度周囲を眺めているとようやくの思いで決めたメメが店員を呼んで注文する。
一息ついたメメが店員が持ってきた水で喉を潤し、息を漏らす。
「やっと決められました……で? 何の話です?」
「別に…雑談さ。そんな事より米軍の動きどう思う? 俺は八代が言っていたように大阪に近づいた段階で動くと予想する」
「それも国防長官に聞けばわかるのでしょうか?」
「どうだろうな? 案外グルなのかもしれないぞ」
「そう言う推測は嫌いです。それも話してみれば多少はわかるかもしれませんよ。少なくとも私にはそうは見えません」
「何故そう思うんだ? 普通に考えれば米軍のトップ何だから裏にいるって考えるのが普通だろ?」
「ですが本来国防長官は異世界交流会に参加するはずですが、彼は今回用事があると言って断っているんですよ? それなのに会談の為にここに来ている…」
「普通に京都で動きがあるから逃げてきただけじゃないのか」
「だったらここに来なければ良いだけです。でも、ここに来た。なら国防長官は何か確かめたいという想いがあったからでは?」
そう言われてギルフォードは少し考えるようなそぶりを見せた。
実際国防長官がこの大阪に来ているのは確かで、その直轄下にある米軍周囲で動きを見せているのは間違いがないだろうという推測。
メメの推理では国防長官が裏にいるのなら争いの場には現れないだろう。
それ自体は実に理にかなった推測でもある。
「まあ、でも確認の為に近くに来ることはあるんじゃないのか?」
「だったら空母は動かないと思います」
「……確かに。まあ、考えていても仕方のない事か……」
メメは店員が持ってきて大盛りのデミグラスソースのチーズオムライスを前に目を輝かせ、ギルフォードはその料理の大きさを見てドン引きする。
大きな山が皿の上に乗っかるている料理、ギルフォードは改めてメニュー表を確認してみると流石は大学、食べ盛り学生の為に造った料理なのだろうと推測できたが、それを全く関係のないメメが注文し食べようとしているという真実を前にギルフォードは食欲を失っていく。