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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《下》
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運命の交差点ーギルフォードー 4

 八代は研究室へと入っていき、本棚を指さしてはっきりとこう告げた…「あの中にあるから勝手に調べてね」と、そのまま機材を取り付けに掛かり、次第に邪魔になった機材を雑に避けていく。

 その過程を見ると機材を壊すのではと思わせる危険性があったが、全くその素振りを見せようとしない八代、あっという間に機材を取り付けてしまっている間に、ギルフォードとメメは本棚から手帳を探し出そうと試みる。

 しかし、分厚い本やファイルまでもが雑にツッコんでいるのでどこに何があるのかぱっと見では分からない。


「少しぐらい綺麗にしたらどうですか? 女性なのですから」

「嫌よ……したいなら勝手にどうぞ…」


 と言われてしまうとメメとしてもやる気がイマイチ起きないが、しかしこの状況でやる気を発揮していたのはギルフォードだった。

 妹とダルサロッサと一緒に暮らしている所為か、普段から休日は掃除をしたりすることが多い。

 それに、汚い部屋はどうやっても落ち着かない。


「綺麗にしてもいいか?」

「勝手にどうぞ…私はここで調べ物があるからね。コードやケーブルを消さないようにして頂戴ね」


 そのままギルフォードはやる気を見せて要らない物と居る物とを分けていく作業から始め、それを見ているメメは「こんな趣味がありましたか?」と疑問を抱く。

 それもそうだろう。

 一緒に活動していた時は雑な一面が目立っていたが、こうして妹と一緒に生きるようになってから綺麗好きな一面が目立つようになったのだと推測。

 こうなったらメメだけ何もしないというのは彼女のポリシーのような部分が反対しており、小さく漏らすように「仕方ない」と呟いてから片づけを手伝う。

 約三十分ほど掛かってある程度綺麗になった所でようやく手帳探しを再開させる両名、その間に八代は機材に黒い箱を入れて調査を始めていた。


「なあ、本当にこの本棚にあるのか? 全く見つからないんだが?」

「さあ…何せ昔の話だしね……そこに無かったらその辺に捨ててあるかもしれないわ。少なくともゴミで捨てたわけじゃないからその辺に落ちているはずよ。根気よく探してみてね」


 と言って調査に集中し、メメはギルフォードの方をジッと見つめ「掃除再開しますか?」と尋ねるのでギルフォードは盛大にため息を吐き出して「やるか」とテンションを落としながら掃除再開。

 箒やぞうきんを使って隅々まで清掃していき、その過程で手帳探しを続行する。

 しかし、これがまた曲者で中々作業が進まない。


「しかし…研究所をこれだけよくも荒す事が出来ますね…少し感心します」

「そう? ほら……がさつだから………なにこれ? 馬鹿は機械なのかしら? でも、だったらどうしてこの箱は吸血鬼モドキを排除したのかしら……? 中心に石? かしら」


 断面図には中心に歪な形をした石が入っているのが分かり、それを聞いていたギルフォードが小さく「それって太陽の石じゃないよな?」と尋ねた。

 しかし、八代がそんな石の事を知っているわけがなく、詳しく聞き出そうと駆け寄っていく。


「太陽の石って何? どこでとれるの?」

「太陽の石。太陽光と同じ効果を持つ波長を発すると言われている石で、帝国から南にまっすぐ進んだ先にある太陽の渓谷でとれる貴重な石だ。最も五百年前に取れなくなって今じゃ貴重品だが…」

「どれぐらいで売れるのですか?」


 メメはふと気になってしまったことをそのまま素直に尋ね、ギルフォードは記憶の中にある最も新しい記憶を探り出してさりげなく答えた。


「確か……小石程度の大きさで大体…五百万?」


 メメの瞳に「驚き」という言葉が宿ったような気がし、ギルフォードは何故そんな顔をしているのかが全く理解できず目をパチクリさせる。


「どうした? 掃除をしている手が止まっているぞメメ。何か気になる事でもあるか?」

「では! あそこの黒い箱を解体して中から石を取り出せば五百万で売れると!?」

「取り出せればいいな、あれ…パッと見どうやって加工されたのか分からんぞ接続部分がまるで見えないし。まあ、太陽の石なんて売ったら犯罪だしな。あれ…販売禁止だから」


 メメが心底残念そうな顔をし、掃除を再会させていく。


「そう……でも、何故太陽の石を…何よりこれは人工物よ。中は機械みたいだし…でも確かに接続部分が無いし…」


 箱を機械から取り出して上下左右と確認するように見守る。


「箱の側面の素材は…何かしら? 少なくとも両世界で確認されている素材リストから一致しないわね」

「だったら全く別の世界から持ってきた素材か…それとも合成物質かもしれないな。後者ならしそうなやつには心当たりがある」


 そう言ってダンボールを両手で持って立ち上がったギルフォード、真直ぐに八代を見つめたままはっきりと答えた。


「機竜…機械で出来た竜。もし後者だったらその箱を持っていくように依頼した本当に依頼人は……聖竜だろう。機竜と聖竜は仲が良いと聞いたことがある」


 それを聞いた八代はソラが依頼してきた鉱石を今度は機械の中へと入れていく。


「この鉱石も…?」

「かもしれないな。聖竜が根本の依頼人。だとしたら、聖竜は二つに分けて依頼を持ち込んだことになる」


 わざわざ二つに分けて依頼された依頼物、一つはソラ・ウルベクトが、もう一つはアメリカの国防長官からの依頼品。

 では後者はどうやってこれを機竜から手に入れたのか…そもそもこの箱は何なのか?

 疑問を増えるばかりで解決するそぶりを全く見せない。


「この鉱石も詳細を調べて資料にしておきましょうか…」

「まあ確定した情報じゃ無いから何とも言えないが……」


 黒い箱を手に取りジロジロと見てみるギルフォード、メメも掃除をする手を止めて同じように黒い箱を見てみる。


「これ投影機ではありませんか? かなり古いタイプですが…ほら暗黒時代に発明されたという最も振りタイプの投影機ですよ。当時は独自の合成物質も多く、現存する技術では再現不可能な事が多いと聞きます」

「これが? よくそんな事を知っているな」

「昔資料で見たことがあるだけですよ。たしか…」


 と言ってギルフォードから黒い箱を受け取りある部分を指で触れながら操作してみると、触れている部分とは反対側から光が照射し始めた。

 その光を清掃したばかりの壁に当ててみると、そこには小高い丘が描かれていた。

 そこに一人の男性が現れて一本の剣を突き刺すのが見えた。


「どこだ? ていうかいつの時代だ?」

「えっと……たしかこの辺を弄れば時代が分かるはずです…二千年前ぐらいですね。でもこの映像西暦世界ですよ…」

「はあ? でもこの投影機は皇光歴世界の奴だろ?」

「ええ。ですが映像時代は二千年前の西暦世界です。それにこの映像いくつかあるようですが、制限があるのか見れないですね…」

「制限? 要するにここから先の映像は何か条件を満たさないと無理と?」

「ですね……と言うよりは一定の異能を検知した場合解除されるようです。その異能は…『竜達の旅団』です」


 ギルフォードにはこの黒い箱を最終的にはソラへと届けるまでが想定されているようにも思え、少しだけ渋顔を造ってしまう。


「この黒い箱は最終的にソラ・ウルベクトに渡すまでが想定されているようですね。でもどうして時期を別にして、別々の経路で渡したんでしょうか?」


 メメが真剣に考察するが、ギルフォードは全く気にしない様な素振りを見せた状態でそのまま掃除再開する。

 するとギルフォードは積み重なった捨てる予定の本束を一旦解体して中を調べている最中に目的の手帳を発見した。

 しかし、同時に抱いた気持ちを吐き出したギルフォード。


「嘘つきめ……捨てていたじゃないか」


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