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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《下》
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戦乱の始まり 5

 ギルフォードの体から引き出されていく命の焔はボウガンの体を燃やし尽くそうとするが、ボウガンの意思とは別に「生きる」という命令はギルフォードを殺そうとしていた。

 ギルフォードの鼓動がドンドン早くなっていき、体中が燃え上がるように体温が上がっていくと意地でもボウガンの体を話さないように試みている。

 しかし、ボウガンはギルフォードの体を思いっ切り上空へと持ち上げてそのまま思いっ切り叩き落す事でギルフォードの拘束を振り切って体を後方へと吹っ飛んでいく。

 その際にボウガンの舌に数字の『3』と書かれているのがはっきり見え、ギルフォードは急いで体を起こして態勢を整えると、ボウガンは自我を取り戻したようで悶え苦しむようなそぶりを見せながら暴れている。


「またやらかしたぁ!! 死ぬチャンスだったのに!!! あの《ピー!》婆!!」

「自分でピー音を鳴らす奴初めて聞いたぞ」

「さっきの奴もう一度やらないか? お前が死ぬか俺が死ぬかの我慢比べをしてみないか!?」

「しない。それより………何でそこまで死にたいんだ? お前は生きたいから不死になったんじゃないのか?」


 ギルフォード自身が素朴な疑問を抱いてしまった部分、永遠に生きたいと願うからこそ不死になったのではと思うが、ボウガンの発言から推測するにボウガン自身は永遠に生きることを決して望んでいるわけではないと分かってしまう。

 ではボウガンは何を望み、何故生きるのか……。


「生きたいから不死になったわけじゃないさ…」


 その目は遠い過去を見るような目をしており、ギルフォードとしてはその辺がどうしても気になる部分でもあった。

 不死になりたいと願うから不死になるんだとギルフォードはそう思っていたが、ボウガンはそのケースからは外れている。

 では、何故ボウガンは不死になってしまったのか。


「そこから先を教えて欲しいんなら俺を殺すほどの実力を発揮することだ。言っておくが先ほどの状態は覚醒段階で言えばまだ一段階目だ。俺は四段階の覚醒がある」


 ニヤニヤ笑っているとそれが本当の事なのか疑問になってしまうが、ボウガンはその場から立ち去ろうとしているのをギルフォードは突っ込んでいく事で阻止する。

 何を目的にこの地まで来たのか、何故ギルフォードに襲い掛かっていったのかと疑問を抱いてしまう。

 ギルフォードの双剣の連撃攻撃を両腕防ぎ切り、至近距離で睨み合う両者。


「何だよ俺と殺し合いをするつもりになったのか? 俺は大賛成だぞ!」

「質問に答えていけ」


 心からガッカリしたような顔をするボウガン。


「何故ここにいる? 何を企んでいる?」


 企んでいるという事は間違いのない事で、何か作戦があるからこの場に姿を現したと考えたからこそギルフォードはそう尋ねた。


「暇つぶしだっていえば納得するのか?」

「しない。お前は研究都市の時何か企んでいたはずだ。今回は何故この地にいる?」

「……………俺の目的をお前が知る必要はない。それに……」


 姿を消す直前ボウガンはハッキリと告げた。


「最後にはお前も知ることになる」


 そう言ってその場から消えてしまった。



 瞬間移動の法則自体はギルフォード自信も良く知っていた事だし、それ自体を実行したのはギルフォードが最初だったが、寿命を削らずに済む不死のボウガンは簡単に瞬間移動を使ってしまう。

 去っていってかつての同胞であり不死身の吸血鬼であるボウガン、彼が告げた「死にたい」という言葉の意味と理由。

 結局で本当に聞きたいことは其処だったが、尋ねることが出来なかった。

 舌に書かれていた『3』という数字が意味することは?

 お前が………何がしたいんだ?


 そんな事すら聞くことが出来なかった。


「ギルフォード……お前」

「あいつ……死にたいのか? どうして抵抗するんだ?」

「呪いみたいなものかもな。死なないようにって呪いが掛かっているのかもしれない。少なくとも外から見ていた俺にはそう見えた」

「そうか……そうか………」


 「そうか」としか言えなかったギルフォード。

 何故何かと聞けなかった自分が情けなく感じてしまった。


 足を踏み込むには勇気が足りない。


 ボウガンという不死身が抱いている大きな『闇』の底がまるで見えない状況で、その質問をすれば心を病みそうに感じてしまった。

 同情してしまうのではと思えて仕方がない。

 怖くて聞けなかった。


 ボウガンが「殺してくれ」と頼み込んでいるのではと思えて仕方がない。


「吸血鬼って何なんだろうな?」

「さあな……一旦移動しよう。ここは目立つ……」


 そうだなと言いながら再びバイクに跨ってヘルメットをかぶり、バウアーは車に乗り込んでギルフォードを先導する。

 警察が拠点にしている場所までは車でさほど時間が掛からない場所、開けた場所に仮設テントなどが設置されており、警察官や刑事のような人達がうろつき回っている。

 ギルフォードを見る目が多少厳しいと感じてしまうバウアー、しかしギルフォード自信はまるで気にする素振りを見せずそのまま一際大きな仮設テントをへと入っていくと、作戦本部長らしい男が椅子に座ったまま地図とにらめっこしていた。


「本田作戦本部長。ギルフォードをお連れしました」

「ご苦労。よく来てくれたね。もう詳しく聞いているとは思うが、最近失踪事件が多発している。君の協力のお陰で相手が吸血鬼だという事が分かったのだが、犯人は未だに不明」

「それなのですが。本田作戦本部長。先ほど犯人と思われる奴と接触しました。名はボウガン……現在確認されている天然の吸血鬼です」


 天然の吸血鬼という言葉に首を傾げたくなった。


 吸血鬼に天然があるのだろうかと思ってしまう。

 ボウガンとて元はただの人間だったはずで、何かしらの偶然や必然が彼の人生を狂わせているのでは。


「そうか……君達に共有しておきたいことがある。太平洋の海域ギリギリに米軍の空母が鎮座しているという噂が上がっている。国防軍は米軍が何かを起こすつもりではと邪推している」

「今までアメリカは友好国の1つでしたよね? 今も特に争う理由が無いように思えますが……」


 バウアーの言葉に本田作戦本部長は口元に手を添えて考えるような素振りを見せながら喋りだす。


「米軍内で何かが起きたのか……アメリカという国事態で何かが起きているのか………異世界交流会が狙われているのか」

「警備に増員を申請しておきますか?」

「いいや。その辺は国防軍の役目だ。バウアーは事件解決に集中してほしい。それともう一つ気になる事件が起きているんだ」


 そう言って地図のある場所を指さす。

 そこは京都市にあるありふれた住宅街でしかなく、クライシス事件の被害を受けていない区画。


「そこがどうかしたのですか? ありふれた住宅街ですが?」

「それがそこにいる資産家の男性が殺害されているのが分かってな。それがこの男性最近気になる姿を目撃されていたのが分かったんだ。アメリカの副大統領と接触していたと」

「副大統領? あの小太りの背の低い男ですか? あのザ・小物という感じの風貌の?」

「そうだ。少々酷い言い分だがその通りだ。それだけにな……空母の件と言い少し怪しいと思ってしまうんだ。それで悪いんだが、そっちの調査もしてほしい。勿論他の部下に『ボウガン』という男を目撃したら情報を共有する」

「分かりました。そう言う事ならギルフォードと一緒に行動した方がいいと?」

「そうだな。君達ならではの視点があるかもしれない。一緒に行動しつつボウガンが出現した場合はギルフォード君にはソッチに向かってもらう」


 そう言って二人はテントから出ていった。


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