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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《下》
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崩れ始める毎日 11

 腹一杯までデザートを食べたのではと思わせるほどにテーブルの上に腹を突き出しながら横になっているダルサロッサ、それを見ていて竜という存在を改めて考え直すギルフォード、美味しいデザートを食べて兄に感謝するレイン。

 手を合わせて兄に感謝の言葉を送りダルサロッサを抱きしめるレイン、腹を強めに抱きしめられたことでリバースの危機に瀕するダルサロッサだが、何とか喉元まで出かけた食べ物をもう一度飲み込む。

 その際にダルサロッサはレインに「頼むから強めに抱きしめないでくれ」と訴えるが、ダルサロッサの言葉はイマイチレインには届かなかった。

 何度も繰り返して襲い来るリバースの危機、それと戦うダルサロッサに哀れさすらやってこないギルフォード。


「まだ少し時間があるな……そう言えばこの近くに金閣寺があったと思うが…流石に時間的に無理かな」

「でも近くを見て回るぐらいならいいと思う」


 レインに向かって「それで良いのなら近くをぶらついてみようか…」という事になりバイクで近くまで走らせて金閣寺一帯で止まらせ、そこから歩いて回ってみることに。

 すると金閣寺では異世界交流会が行われているという事もあり、二十四時間で開場されていた。


「少し前まで開園時間を短めにしていたよな?」

「うん。クライシス事件でそれどころじゃ無かったんだって……でも、見て回れるね」


 笑顔でダルサロッサを抱っこして歩き回ろうとするのだが、歩くたびにダルサロッサの体が左右に大きく触れ、腹にレインの両腕が静かに沈み込むたびに苦しそうな顔をしている。

 ダルサロッサの「助けて」という言葉を表したような顔がギルフォードの方を向き、ギルフォードは顔で「知らん」とだけ返す。

 帰ってきたダルサロッサの顔は「薄情者」と訴えており、ギルフォードからすれば事前に注意し他にも関わらず腹一杯に食べたのはダルサロッサが悪い。


「レイン……頼むから……揺らさないでくれ………腹を」

「レイン。ダルサロッサの腹を強めに抑えてやれ。喜ぶぞ」

「裏切り者め! そこまでして私を苦しめるのか!?」

「あれだけ食べ過ぎるなって忠告したはずだ。それを無視して腹一杯食べたのは誰だ?」


 ダルサロッサはレインが強めに腹を抱きしめるし、ギルフォードから何度も責められるしで内心良い気持ちを抱けにいた。

 金閣寺へと歩いて行く渦中でさまざまな観光客を発見していく。


「やっぱり観光客多いね」

「それはな……特に異世界関係で繋がりが出来てからは増えたようだな。まあ、金色の建物って目が引くと思うし。でも、クライシス事件で多くの歴史的遺産もかなり失われたって話だし」


 クライシス事件での被害は京都では特に多く、京都市の中心から広がった爆心地は広く多くの歴史的遺産を吹っ飛ばされてしまった。

 貴重な物が失われたことは多くの人々の心に癒えない傷を与えた。

 京都の復興が中々進まない原因は失われた遺産の大きさ故。


「友達も言っていたよ。中々両親が復興作業の手が付かなかったんだって。その時に言ってた。王島聡って人が当時の政府に対して起こした事件なんだって」

「そうなのか。まあ………分からないでもない」

「そう言えば海洋同盟はどうしているのかな?」


 海洋同盟は夏に起きた事件で政府が付き続けてきた嘘が明らかになり、竜達の旅団が正した正義は彼らに変わるようにと訴える結果に終わった。

 ギルフォードがソラと出会ったのもこの事件でのこと、当時の政府に反抗していたギルフォードに真正面から戦いを挑んできたソラ。


「変わったと聞いたよ。少しづつではあるけど変わりつつあるらしい。最も国内の情勢がイマイチ安定しないから今回の交流会と会談は見送りたいと話が来たらしいぞ」

「そっか……少し生活が落ち着いたら見て回りたい」

「そうだな……お兄ちゃんが連れていってやるよ」

「ダルサロッサも一緒に行こうね! ………お兄ちゃんダルサロッサが顔を真っ青にしてる」


 ギルフォードが正面からダルサロッサのを覗き込むとダルサロッサの顔が真っ青に染め上がっており、今にも吐き出そうな顔をしている。

 ギルフォードは急いでレインからダルサロッサを預かり、トイレまで駆けこんでいった。

 レインは口に手を当てて疑問顔を造りつつトイレで行われている一連の行動に疑問を感じていた。


「はぁ……」


 ギルフォードが疲れ切った表情をしており、ダルサロッサはスッキリした顔をしておりレインは何が起きたのか兄であるギルフォードに尋ねるが、ギルフォードは「聞かないでくれ」と返した。


「何の話をしていたんだ?」


 ダルサロッサから尋ねられたレインは笑顔で先ほどの会話をそのまま返した。

 ダルサロッサからすれば懐かしい場所でもあり、同時に忌々しい場所の1つでもあったらしく、彼はハッキリと「あまりいい思い出は無いな」と告げた。

 かつてギルフォード達の一族の祖先と袂を分かった場所であり、あの嘘にまみれた国の内情にあきれてものも言えなかった。


「嘘にまみれていた国だが……今はどうなんだ?」

「ソラ達が変えたからな……少しずつ変わっていっているはずだ」


 歩いて行く中ようやくの思いで目の前に現れた金閣寺に見とれているレイン、笑顔ではしゃぎ回るレインは再びダルサロッサを抱っこし始める。

 刺激されたトラウマを前に別の意味で顔が真っ青になっていくダルサロッサ、ギルフォードはその姿を後ろで微笑みながら眺めていると、ダルサロッサが突然周囲を見回し始める。


「どうした? 何かあったのか?」

「いいや……同胞の気配を感じ取ったのだが……この街のどこかにいるようだな。近くにいるのかと思ってな」

「あまり気にしていても仕方がないんじゃないか? それより今度はあまりはしゃぎ回るなよ」

「ダルサ! 向こうにアイスクリーム売ってるよ!」


 一瞬で興奮し始めるダルサロッサあれだけ腹一杯食ったに関わらずこりておらず、ギルフォードが怒りを滲ませてダルサロッサに怒りを向ける。


「お前は懲りるという言葉を知らないのか!? さっき吐き出したろ!?」

「吐き出したから大丈夫だ!」

「そう言う意味じゃない! いい加減食べ続けるのを止めろって言っているんだ!」

「嫌だ! もっと食べる」


 レインに頼み込んでバニラとチョコレートのソフトクリームを注文するダルサロッサ、レインはバニラのソフトクリームを注文する姿をギルフォードは何も言えない表情で見守る。

 近くのベンチに座って食べ始める二人、ギルフォードはスマフォの画面を確認しながら時間を確認する。


「もう時間?」

「いいや。まだ少しありそうだからゆっくり食べてもいいぞ。でも、寒くないか?」

「大丈夫だよ! そうだ…」


 レインはベンチから立ち上がりギルフォードへと近づいて行ってアイスクリームを近づける。

 「食べていいよ」という言葉に従う形でソフトクリームに一口だけ食べる。

 甘いソフトクリームで体が冷えそうになっていき、それを耐えながらも笑顔を造り返す。


「お兄ちゃんは大丈夫?」


 レインが顔を覗き込みながら心配そうな顔をしており、ギルフォードは最初にソフトクリームを食べたことを心配しているのかと思っていたが、レインの目はそれでは無い事を告げている。

 レインが心配している事、それはギルフォードが今の生活を苦にしているのではという事で、レインは今の生活に楽しみを得ているが、逆にギルフォードは毎日レインを養う為に必死に働いているのは事実で、それがレインは心配でならなかった。

 ギルフォード自信はそれを苦に感じたことは無かった。

 かつて諦めたレインとの生活、両親の写真の前で誓ったのはレインを幸せにするという事は彼の本心だったから。


「大丈夫だよ……」


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