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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《下》
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崩れ始める毎日 4

 レインが完全に寝たであろうことを確認してギルフォードはバウアーからもらったここ最近の失踪事件の詳細を目の前に置かれているノートパソコンに表示して口を右掌で覆いながら少し考え事。

 一番街と三番街でしか今まで事件が起きていないのかと思ったギルフォードだが、死領によると事件自体は仮設住宅地から離れた場所で起きており、被害者も様々で共通点が無いという事に気が付いた。

 被害者に共通点が無いという事に気が付き、再び頭を抱えてしまうギルフォード。


「被害者に共通点が無いし………襲われた場所にも共通点がまるでない…」

「諦めたらどうだ? そんな事より寝るまでここでテレビでも見てみないか?」

「そんなわけには行くか……ボウガンが居るのなら探せばいいだけなのか……でもボウガンの話を聞く限りだとあいつ自身は種を繁栄出来ないみたいだしな」

「戦闘型と眷属型の違いだったか?」

「ああ。話だとあいつは戦闘面に特化している分眷属が増やせないという話だった。その分戦闘型は日光が弱点じゃないとか色々あるみたいだが」


 吸血鬼は伝承上色々な弱点を持っており、十字架やニンニクや太陽など様々でどこまで本当の事かまるで分らなかったが、少なくとも太陽が苦手というのは本当の事らしい。

そこまで思い出したところで先ほどの人間モドキを思い出していた。

 吸血鬼にしか見えないほどに化け物じみた身体能力、再生能力も相まって吸血鬼じみていた。


「時刻は夜にのみ集中している……だがこれだけでは吸血鬼の犯行だと断定できないな」

「断定してしまえばいいじゃないか。可能性をいくつも考えて無駄な思考を張り巡らせるよりある程度思考を絞った方が良いかもしれんぞ」


 本気で考えたが不安が増すだけだと思いやめた。


「そんな事より喉が渇いたから麦茶くれ」

「少しぐらい自分でしたらどうなんだ? これでも仕事をしているんだぞ」


 と言いながらダルサロッサのコップに麦茶を入れるギルフォード、自分のコップにも麦茶を入れて再び悩みだす。

 いくら考えても答えがまるで出ない状況に頭を痛めているとギルフォードは「止めた」と言ってノートパソコンをそっと閉じる。


「明日になってから考えればいい」

「だから言っただろうに。そんな事より新しいミカンを取ってくれないか?」

「お前……少しぐらい自分で働け…太るぞ」


 奇妙な沈黙が流れコタツの向こう側で何が起きているのかまるで分からないギルフォード、しかしダルサロッサが体を起こしミカンを取りに来た。


「太っているかどうかを気にするんなら我慢すればいいじゃないか?」

「太っていないから大丈夫だ」

「そう言う問題じゃない。そう言う生活をしていたら自力で飛べなくなるぞ……お前四肢で歩くと言っても背中に翼があるわけだし」

「大丈夫だ。竜は太らない」

「太ったという前例が無いだけでお前がその前例になるかもしれないんだぞ」


 それでもなお「大丈夫」と言い切るダルサロッサに「勝手にしろ」と言って呆れるギルフォード。

 テレビでやっている番組を適当に見ているとこんな事でも幸せな事だと感じるようになった。

 しかし、親方の一件と言いその幸せが崩れ始めようとしているのは事実、それを阻止するためにも明日以降の行動に注目しなくてはいけない。


「なら早めに寝た方が良いのでは?」

「とはいってもまだ十時。明日は遅めに出立だからな……レインは学校で上手くやっているのか?」


 ダルサロッサには普段からレインの側で見守ってもらっており、学校生活も四六時中常に一緒にいる。

 それ故にギルフォードは学校で何かあったのかダルサロッサから定期的に聞いておくことにしていた。

 ギルフォードから言葉に「そうだな…」と言いながら考えているのか考えていないのか分からない様な反応しつつ答える。


「学校で友達は出来たようだぞ。と言ってもまだ周囲との距離感が微妙なんだが……」


 日本に来たばかりでも周囲に迷惑をかけないように常に笑顔を絶やさないレイン、それは同時に周囲に対して常に気を配っている証拠であり、それをしている間は常にレインは心が休まらない毎日を送っている。


「周囲の人間に気を配っているのは確かだし、先生とか言ったか? あの人達もなんとなく気が付いているがどうしようもない感じだな」

「そうか……レインは昔っからそういう所があるからな。本来アンヌのように簡単に心を許す方が珍しい」


 アンヌとだけは心から接していたようで、それも彼女の優しさゆえだろう。


「アンヌ……か。お化け……レクトアイムと一緒に過ごしている女か」

「お前レクトアイムの事をお化けと呼んでいるのか? 本人が聞いていたら怒られるぞ」

「本人が居ないから良いんだ……それよりもお腹空いたぞ」

「まだ何か食うのか?」


 呆れながら立ち上がりキッチンへと入っていくと冷蔵庫を開いて中を確認する。

 どれも調理が必要な物ばかりで正直作るのが面倒だと感じて手が付かない。

 そう思っていると菓子棚に目が付き適当なお菓子を選んでダルサロッサに渡してやった。


「それでも食ってろ」


 そう言って再びコタツの中へと入っていくと今度はダルサロッサが体を起こしてギルフォードに尋ねてきた。


「そう言えば忍者の女はどうしているんだ? 一か月前に内に遊びに来ていた女」


 一か月間に遊びに来ていた忍者の女という言葉を考えてそれがメメを指していると気が付く。


「メメなら………どこだったか? 隠れ里になる場所を見つけ出して過ごしていると先月言っていたぞ。ようやくの思いで発見した場所で今後は国の要請で動く機密部隊として機能するらしい」

「機密部隊……まあ忍者とはそう言う者達だろうが」

「別にあいつら忍者じゃないけどな。まあ似たようなものだけどさ。元々は隠れた一族だし」

「そういうコソコソするという完成はよく分からん」

「そりゃお前は堂々としているほうだしな……だけどお前だって目立ちたいわけじゃないだろ?」

「それはな。だからと言って隠れていたいと思っているわけじゃないしな」


 偉そうにしているダルサロッサを見て多少苛立ちを抑えきれそうになかったが、ここは無視するとしてギルフォードは麦茶を一口飲んでから体を横にして考え事に入ってしまった。


(あの男は何者だったんだ? どうやって吸血鬼を殺したんだ? そもそもどうしてこの時期に襲ったんだ? 明日から行われる異世界交流会で警備が引き上げられているだろうに……)


 実際今日の朝方から警察のパトカーなどがあちらこちらを徘徊しており、少々親方が鬱陶しそうにしていたことを思い出す。

 サイレンを鳴らしているわけでもないのに何を警戒しているのかと呟いていて、それを料理を造りながらギルフォードは「そうですね」と適当に相槌を打っていた。

 実際鬱陶しいほどにパトカーを見かけていた。


「そう言えば学校の近くでもパトカー見かけたか?」

「そうだな……鬱陶しいほどに見かけたな。仕方がないだろうに……明日は異世界交流会で多くの来場が予定されているだろ? それに噂だが明日は来賓も来るらしいしな……そう言えば先ほどの事だが通信妨害が起きていなかったか?」


 ダルサロッサから言われ確認してみると丁度帰宅途中に起きていたらしいことを今知った。


「何で分かったんだ?」

「いや帰宅している最中に京都駅一帯から不思議な波長を感じてな。探りを入れてみたら妨害電波のように感じて」


 通信妨害の詳細はまるで分かっていない様で、スマフォのニュースには現在調査中とだけ書かれていた。


「まあ………関係のない話か」


 そう言ってスマフォを投げて再び横になったギルフォードに少しずつ眠気が襲い掛かってきていた。


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