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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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運命の交差点ーアンヌー 15

 アンヌは現れた竜達より美咲の方へと走っていき氷の棺を解除して抱きしめる。

 冷たく冷めきった体はもう既に温もりなんて存在しなかった。

 それでも取り戻す事が出来た安堵と死んだのだという事をハッキリ自覚してしまう悲しみが込み上げてくるとそれは涙という形で現れる。

 ヒーリングベルは重たそうに二人の元竜の鉄の板を引きずりながらアンヌに近づいて行き、改めて美咲に向き合う。

 その表情は申し訳ないような表情になっており、アンヌは涙を拭い改めてヒーリングベルの方に向ける。


「もう良いのですか? まだ……」

「いいえ。まだ完全に終わったわけじゃありませんから。大阪方面の確認をしないと……」

「そうですね……?」

「どうかしたんですか?」


 会話をしている最中にヒーリングベルは異世界交流会場の方を見たまま固まり、その顔は疑問を現している。

 何か起きたのかと一瞬そう思うとヒーリングベルはアンヌに一つの疑問を尋ねた。


「確かレインちゃんは大阪に行ったという話でしたよね?」

「はい。ギルフォードさんについて行きましたから……でもどうして?」

「いいえ。レインの気配を異世界交流会場内で発見しましてね。探ってみるとやはり本人としか思えなくて」


 レインは現在ギルフォードにつれられて大阪方面に行っているはずで、この京都にいるはずがないと思ったが、ヒーリングベルがこのような状況で嘘をついていると思わなかったアンヌ。

 アンヌは合流してきたバウアーに美咲の遺体と二人の元竜達を任せて一旦レインの元へと急ぐことにした。

 走っていては間に合わないと感じたアンヌだが、京都中が混乱の真っただ中であり、どこもかしこも人手不足の状況で人員を回せるわけがない。

 バウアーも移動手段を確保次第追いつくといわれて二人は走ってレインの元へと走っていく事に。

 走って三十分という速さで会場までたどり着き、息を切らせながらヒーリングベルの案内のままイリーナが歌ったライブ会場の正面玄関を潜っていく。

 無人で寂しささえ感じるライブ会場、その一番奥の舞台の上だけがライトで明るく照らされており、そのど真ん中にレインが横になって倒れており、それを見下ろすようにボウガンが座っていた。


「招かれざる客って所か。全くカールが計画をずらしてしまうからこっちの行動までもがずれたというのに……」


 呆れるような顔をしているボウガンだが、アンヌは彼がレインに何かをしていると直ぐに気が付いた。

 あのギルフォードからレインを奪ってこの地まで来ている理由、ボウガンが現れたときからボウガンにも遂行するべき計画があると分かっていたが、そこにレインが関わっているとは全く想像していなかった。

 しかし、今思えばギルフォードがレインを連れていったのはボウガンから守るという建前があったのだと気が付いた。


「レインちゃんから離れてください!」

「こっちの用事が終わったら開放するさ……それまで黙っていてくれないかな? あと十分なんだ」

「関係ありません! レインちゃんの身の方が重要です!」

「それこそ俺の方が関係ない話だな。この子を今開放する方がこっちとしては困るし…」


 アンヌは話し合いにならないと判断して二つの杖を召喚して走り出していき、三日月の杖を横に振って十個近くの氷の槍を作り出して一気に飛ばす。

 その攻撃方法に流石に驚いたボウガンは後方に大きく跳躍して回避、アンヌはその隙に近づいて行こうと走り出すのだが、ボウガンは右腕を大きく振ってアンヌの進路上に血の斬撃を飛ばして制止する。


「驚いた。熱量を使った攻撃は最初の時点で想像していたが、レクトアイムは低温までは操作できなかったと思うが………そうか白虎を体内に入れたのか…通りでカールが押し負けるわけだ。油断して普段から鍛えていないから負けるんだ…」


 驚きはするが決してそれで油断や警戒状況うが変わるわけじゃない。

 あくまでもボウガンからすればアンヌを足止めできればそれでいい状況、カールが回収しに来たというのなら返却するだけだが、今は駄目だった。

 ボウガンが施している術式を完成させるためにもここでアンヌに邪魔されるわけには行かない。

 ボウガンはそっと出入り口の方を見ると少し疲れているヒーリングベルを発見したが、疲労故に戦いに参加できないと判断してあえて無視を選んだ。


(昔っからボスは竜達に無駄な犠牲を強いることを嫌がるからな。カールはその辺の理解が疎いから仕方がないがな)


 アンヌは血の斬撃攻撃を回避した後すぐに走り出していき、ボウガンはアンヌに近づくために両足に力を込めて一瞬のような速度で距離を縮める。

 ボウガンの強烈な蹴り攻撃をしゃがみ込んで回避するアンヌだが、ほぼ偶然の回避行動に冷汗が止まらない。

 蹴り攻撃だけで一般人の頭部を粉砕できるような攻撃力、下手をすればカールなんて目では無いぐらいに強いのではと想像してしまう。


「言っておくがお嬢さんが戦ったカールが本当の意味で全力だった事は無いと思うぞ、我々の中で一番非力だが、同時に特殊な力という一点ではあいつはずば抜けているからな」


 カールはアンヌとの戦闘中常に通常状態では無いぐらいに精神的におかしかった。

 それ故に彼女は全力が出せていなかった。


「分かっているつもりです。時の運で私は追い返す事が出来た。だからこそ……もう二度と美咲のような不幸を経験しない為にも強く成ると誓ったんです! だからこそ……レインちゃんを返してもらいます!」


 その強い覚悟を前にしてボウガンは素直に感心してしまった。

 同時に内心「これはカールが負けるわけだ」と素直にその敗因を理解できた。


 強い覚悟を待って挑んだ者と狂おしい忠誠心とその中にある矛盾に気づけない者では勝負にならないだろう。

 いくらその中に実力の差があったとしても、そんな差ですらあっという間に覆ってしまうほどに。


 少し本気で戦ってもいいだろうな。

 と感じて両足を床に付けながら自分の影を操作して周囲の床を粉砕してアンヌの走る足を完全に止める。

 しかし、アンヌは一瞬だけ驚きながらも三日月の杖を打ち付けて床を凍り付けせてしまう。


「ほう……確かに白虎は温度を操る力を持っているが、君の力と相まって周囲を一瞬で凍り付かせることが出来るか……ならこれはどうだ?」


 そう言いながらボウガンは自分の両腕に傷をつけて大量の血を流し始める。

 吸血鬼は再生能力が高いはずだが、この傷だけは全く治る化外がしない。

 アンヌは警戒をしながらもレイン目掛けて走っていき、ボウガンは血だらけの両腕を思いっ切り氷の床に叩きつける。

 すると血があっという間に広がっていき、アンヌ目掛けて血で真っ赤に染まった氷の粒がまるで弾丸のように襲い掛かっていく。

 太陽の杖で熱量のシールドを作り出して防御するがその分足が一旦止まってしまう。

 もう一度走り出すがボウガンは進路上に常に氷の弾丸を何発も叩き込み、アンヌはなるべく避けながら走る足を決して止めないようにしつつ、確実にレインに近づいて行く。


 ボウガンは氷の弾丸の攻撃を一旦止めて再び跳躍しレインとアンヌの前に立ち塞がりアンヌ目掛けて思いっきり右ストレートを叩き込もうとするが、アンヌは攻撃を二つの杖を突きだして相殺しようとする。

 普通なら押し負ける所だが、アンヌは熱攻撃と氷攻撃を併用することで押し勝とうと試みる。

 ボウガンの方は体の再生能力を最大値まで高めながら押し勝とうとする。


 するとレインの術式が完成してボウガンは一気に跳躍しながらライブ会場の屋上へと逃げていった。


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