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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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運命の交差点ーアンヌー 8

 アーモルド社という会社は昨日の夜中から朝方にかけてソラ達が潰した会社で、その際に沢山の違法兵器を売り飛ばしていたと発覚し、バウアーが戦闘した相手が使っていた兵器も売り飛ばされていた違法兵器の1つ。

 この状況から今回の相手を絞る事自体は失敗し、お昼時を超えていよいよ十四時を迎えようとしていた。

 アンヌと美咲が車に乗って移動しようとしていた際、異世界交流会場から外務大臣クラスの要人たちを載せたリムジンが清水寺へと移動する為にゲートを潜っているところだった。

 それを一人の外国人風の観光客が見届けると耳に付けていたワイヤレスイヤホンにそっと触れる。

 周囲に聞こえない様な小声をイヤホン越しに連絡を取る。


「ターゲットの車が清水寺へと移動しているのを確認、五分後に作戦を開始する」

『ラジャー。作戦通りに……』


 観光客に紛れながら移動して行く男性、同じ時間リムジンが清水寺へと移動しているタイミングでアンヌと美咲を載せた車が五台の車と共に出発しようとしていた。

 移動して五分が経過した時、遂に相手が動いた。


 ドカンという派手な爆発音と同時にリムジンの前方にロケットランチャーの爆撃が襲い掛かり、複数のリムジンが急停車して衝突してしまう。

 その音は離脱しようとしていたアンヌと美咲の元にも届くぐらいの大きな音で、美咲とアンヌは車のガラス窓越しに爆発が起きた方向を見つめる。

 車を運転していたバウアーもバックミラー越しに状況を確認しつつ、二人を安全に移動しようとしていた。

 同じ時間、カールも又動き出そうとしていた。


 予め仕掛けておいた魔導兵の自爆装置、派手で京都の地を燃やす尽くすほどの大火放ち、それを大阪方面に狼煙としての合図を送る為に。

 京都中から爆発と火災が連鎖的に起きていく現状をカールが少し高い場所から見下ろしながらジッと見守っていた。


 バウアーの車もその火災と爆発から急いで逃げるように車のハンドルを切り、移動ルートを大きく外れてしまった。


「こちらバウアー! 秋山警部! こちら攻撃を受けました!」

『今京都中で同じ攻撃を受けている! もはやどこにも安全な場所なんて存在しない! 今日とから脱出した方が良い!』


 バウアーの中にどうやって脱出するのかというアイデアを張り巡らせるが、京都中で火災と爆発が鳴りやまぬ状況で逃げるというのは相手に居場所を伝えているような物ではと予想したアンヌはそれを制止した。


「待ってください! 今逃げたら相手に居場所を伝えるのでは?」

「警備。俺も同じ気持ちです。今逃げたら相手に居場所を伝えて下手をすれば囲まれる可能性が高い。このまま清水寺にいる国防軍と合流した方が良いかと」


 秋山は少し考えたような声を漏らし小さく「分かった」と声を発する。


『私はこのままこちらに向かっている国防軍と合流する。今国防軍がこっちに向かっているという話が上がっている。それまで持ちこたえてくれ!』

「了解です!」


 そう言って通信を切って車をUターンさせて清水寺へと急行するルートに入り、急いで逃げていく過程を遂にカールが発見した。

 此処から逃がさないようにとカールは真上に手を掲げ、京都中に不可視の結界を張りいよいよ行動に移す。


 それを京都から一旦脱出した秋山は目撃していた。


「しまった! これでは内部に侵入することも…」


 秋山はどうするべきかと悩んでいるとスマフォから着信音が鳴り、結界をどうにかする手段を考えながら電話に出る。


『大阪の国際空港と大阪湾にアメリカ軍の空母の侵入を確認! 今回の相手はアメリカ軍だ!』


 最悪のシナリオをたどりつつあった。



 アメリカ陸軍はロケットランチャーでリムジンの動きを無力化させ、ガイノス帝国から横流しを受けていたウルズナイトを二機両サイドから挟み撃ちする形で出撃させた。

 リムジンに隠れていた要人達は壊れたリムジンから飛び出して国防軍の道案内で逃げていく。


「あのウルズナイトもアーモルド社からの違法取引で手に入れたものか! ウルズナイトは関節部を攻撃しろ! 清水寺まで撤退する!」


 軍用車両がウルズナイトの後方から現れて装備されているガトリングで脱出ルートを塞ぎ始めるが、そのタイミングでバウアーの車が現場に乱入した。

 ウルズナイトの足元で複雑な動きを見せ、翻弄しつつ国防軍の攻撃でウルズナイトの一機が沈黙し清水寺へのルートが出来上がった。


「こちら警察のバウアーです! 協力いたします。ここで押さえながら要人を清水寺まで誘導した方が良いかと思います」


 バウアーは急いで国防軍の三佐と合流し、三佐の男性はバウアーの意見に黙って頷き部下に指示を出し始める。

 この状況下で美咲は責任感に捕らわれそうになっていた。

 アンヌは走り出し怪我をしている要人を治療し始め、バウアーは車を盾にしながら足止めに徹している。


 この状況も全ては自分を狙ってのもの。


 そう思うと居ても立っても居られない、震えてしまう体が行動を抑制してしまい、結果何も出来ない。

 汗が噴き出ていき、動揺から体調がドンドン崩れていく美咲を抱きしめたのはアンヌだった。


「大丈夫? 顔色が悪いけど」

「だって……これ全部私の所為だし…」

「違うよ! 襲っている人達が悪いの、そこに生きている人が悪いなんてことは無い! 何より幸せに暮らしたいと願っている人が迫害される理由なんて……」


 迫害され、除け者にされていたアンヌだからこそ幸せに暮らしたいと願う人々が苦しめられる現状が許せない。

 何よりも自分の所為だと責めている人が居る事が許せない。


 しかし、そう言う状況に対して何もしないカールじゃない。


 カールは真上から美咲目掛けて炎の一撃を叩き込もうとするが、アンヌはそれを杖から発した不可視の盾で防いで見せる。

 カールは一旦アンヌから距離を取り近くの車の上に着地する。


「楽にしたのに=死を与えたのに」

「私の親友を手に掛けるのなら誰であろうと許せません。私の大切な人も………返してもらいます!」


 三日月の杖を横なぎに振ってカール目掛けて燕の形をした熱の塊を放出し、カールはそれを右手で防いで見せる。

 これで倒せると思っていたわけじゃないが、全くダメージになっていないという状況に多少なり傷ついてしまう。


「昨日とは別人のような振る舞いですね。あの時は余りにも覚悟が足りない顔をしていたのに………」

「あの時とは違うのです。あなたこそ今度は動揺して逃げないのですか?」


 カールはその言葉に反応しつつも無表情を崩さないで佇み、戦闘が続く周囲に目を逸らしながらもう一度アンヌと美咲をジッと見つめる。


「前日の出来事はおおよそ当たっていると思われる=予想。私がそれを忘れている=閣下の仕業」


 それを聞いていたヒーリングベルはやはりという気持ちが高まっていく、天使と言ってもいい存在の記憶を弄る事が出来る人間なんて一人ぐらいしか考えられ無かった。

 だからこそ「嘘だ」と思いたかったというのは存在している。


「私に精神干渉を教えてくれた人=閣下。当時はまだ不死皇帝ではなかったはずだが、当時からずば抜けた才能を持っていた閣下なら可能=推測の領域を出ない」

「あなたはコントロールされたままで良いのですか!?」

「理解不能=意味不明。私は閣下に忠誠を誓っている身、閣下の行動が全て=絶対」


 絶対の忠誠心を胸にカールは戦う。

 不死皇帝がした事を許し、その為ならどんなことでも出来るカールを素直に凄いと思ってしまうアンヌ。


 誰にでも出来ることではない。

 無条件の信頼も、それを受け止める度量の深さ。

 ある意味恐ろしい人物がアンヌの前に立ち塞がろうとしていた。


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