運命の交差点ーアンヌー 1
異世界会場内で一人のスタッフの服を着た男性が会食会場へと入っていき、警備室へのドアをそっと開き中を覗き込むと、警備員が豪快に眠っており、男性は帽子を深めに被って中へと入っていく。
警備員の胸に入っている会場への出入口のカードキーを取り出し、それを腰につけてある小さな横長の箱の機械へと通していく。
バレないように音を立てないように後ろに立ち尽くしながら、男はその間に監視カメラの配置場所を確認し、そのデータをスマフォを通じてある場所へと送りつける。
その間にカードキーのデータをコピーすることに成功し、カードキーをそっと警備員へと返却し警備室から出ていく。
今度は近くの非常階段をへと足を延ばし、監視カメラに入らないように細心の注意を払いながら進んで行く。
階段を上る際も音を立てないように同時に上からくる人物に気を付けながら階段を上っていき、一階から今度も監視カメラに入らないように非常階段から出てき、豪華な真っ赤なカーペットへと足を踏み出す。
胸ポケットに隠しておいた偽名でかかれたスタッフのネームプレートをぶら下げ、男は廊下を堂々と歩いて行く。
明るい場所ではむしろコソコソしていた方が怪しまれると分かっている男、だからこそ男はそのまま歩いて目的地まで素早く移動して行った。
目的の部屋。
それは一階の端にある倉庫代わりに使われている場所、そこに入っていき男は近くの段ボールの中を探り出し、使っていない古いカードキーを見つけ出して先ほどの箱の機械へと通していく。
するとカードキーを上書きしていく過程で外から近づいてくる人影に気が付いて耳をドアに当ててその声に注意深く意識を向ける。
『はぁ……京都だって大変なのにさ何でこんな時期に…』
『何回その不満を言えばいいんだよ。こういう時期だからこそ将来を見据える必要があるんだよ。それより明日の朝食のメニューと数は合っているの?』
すると何かを渡す音が聞えてきた。
『ちょっと一つ数足りなくない?』
『はぁ? 大丈夫だって。アメリカの外務大臣だっけ? その人は来ないから数を減らして一つ分減るんだって』
『馬鹿! 代わりの人が来るから数は元に戻るんだよ!』
『やべ! そうだった……ああメンドクセェ。来た道戻るのかよ」
そういって二人は来た道を戻っていき、男はため息をつきながら一旦機械を確認しながら終了と同時に部屋を出ていき来た道を戻っていく。
「こちらアルファ目標を確保に成功しました。これより作戦の第一段階の準備に入ります」
アンヌ達が眠っている間にカールは北にある廃墟と化したビルディングにおり、カールは慈愛の盾を足蹴りにしながら苛立ちを解消させていた。
別の部屋には短く刈り上げた金髪の防弾ジョッキを付けた男、男はナイフを左に構えた状態でハンドガンを握りしめて銃弾を確認している。
「ハングリー隊長。アルファから連絡、目標のカードキーを確保したとのことです」
「対象物の確保は?」
肩までの茶髪のカールが掛かった髪の女性、その女性が男性を『ハングリー隊長』と呼び近づいて行く。
「まだとのことですが。やはりホテル内にあるものと推測できます。取り敢えずお昼の作戦と合わせて動くのが良いかと思います」
「分かった。しかし、お客さんは随分ストレスを溜めておられるようだな。今の所上手くいっているというのに。相手に我々の目的をばらしつつ本命に気づかせないようにする。上手くいっているというのに」
「恐らくですが相手にしてやられたと感じているのでは? それよりその壁に張り付いている鉄の板は何ですか?」
指を指す方向にはダルサロッサとレクトアイムが浮き彫りにされた鉄の板が張り付けてあり、その外装には何かで傷つけられた跡が付いていた。
ハングリーは肩を動かしながら「さぁな」とだけ口にした。
「おおよそ例の客人がストレス発散に的当てでもしていたんだろ? でも、かなり頑丈だぞ。お前も銃弾のチャックでもしていたらどうだ?」
「御冗談を。銃弾に限りがある中で使用できるわけないでしょ……まさか明日の作戦を前にして銃弾を無断使用したのですか?」
「まさか………それこそ冗談だ。明日の作戦は副大統領の今後が掛かっているんだ。それよりこの鉄の板を壊すなよ。なんでも人質らしいからな」
女性はどういう意味なのかがまるで分からず首を傾げていると、ハングリーはナイフを収めながら立ち上がり告げる。
「その鉄の板は『元竜』らしくてな。これでも生きているらしい。明日の戦いにおいて重要な要素らしいぞ。おっと客人だ」
ハングリー達アメリカ兵が潜んでいた部屋にカールがやってきて部屋の中にヒーリングベルの鉄の板を投げ捨てる。
ヒーリングベルの鉄の板はダルサロッサとレクトアイムの板以上に酷く痛んでおり、カールはストレスを発散しきったような顔をして部屋の中へと入ってくる。
「そちらの作戦は=確認」
「こちらは大丈夫だ。我々は上手く動けるさ。それより魔導兵だったか? それを貸してくれるというのは間違い無いのか? こちらとしてはそっちの確認をしておきたいのだが?」
「勿論=絶対。約束は違えない=約束する」
そういって立ち去ろうとするカールにハングリー三つの鉄の板を指さしながら「これをここに置いて行かれても困るんだが?」と告げる。
カールはそのまま綺麗に体を反転させて振り返り、仕方なさそうに三つの鉄の板を回収していく。
古臭い廊下を歩いているとそのまま足元が抜けるのではと思うほどに脆い、カールは全く別の部屋へと入っていきポケットから小さな箱を取り出して投げ捨てる。
「閣下=崇拝。こちらは予定通りに作戦を実行=明日の十四時」
小さな箱が発光したかと思うとそのままノイズが入りだすのを確認してから言葉を発したが、向こう側から返事が返ってくることは無かった。
その内首を傾げて待っていると答えたのはカールが忌み嫌うボウガンだった。
「おお。ご苦労さん」
「死ね=ボウガン」
「おい! 返事をしてやったのに何で殺意が高まるんだよ」
「私は閣下に連絡を取った=ボウガンじゃない。何故閣下は出られない=疑問」
向こう側からボウガンの「なるほど」という妙に納得の言った声、そこから一旦間が開き考え込むような素振りを見せるとボウガンはゆっくりと喋りだした。
「俺も詳細を知っているわけじゃないが、どうもニューヨークの担当をしていたメメントモリとキューティクルの協力者が契約を打ち切るといって逃げたらしくてな。ボスと一緒に新しい作戦を考えているらしい」
「使えない悪魔と機械=閣下可哀そう」
「用意したのはボスだって記憶しているがな。それはそうとしてその三つの竜達が浮き彫りになった趣味の悪い物体はなんだ?」
カールが疑問顔でその三つの鉄の板を見る。
「元竜だけだど=それ以外の何か? これは私に抵抗した報いを与えたの=当然の結果」
「まあいいさ。あまり任務の範囲外の行動をとるなよ。それでなくても少しずつではあるが作戦外の行動が目立っている状態だ。何か異常事態が起きる可能性があるぞ」
「無論そんな事にはならない=作戦は遂行する。そっちこそ間違いが無いように……わざわざ敵勢力を二手に分けた意味を考えるように=忠告」
ボウガンとの通信を切るとカールは不死皇帝と話が出来なかったと少し落ち込みながら三つの鉄の板を眺める。
近くのパイプ椅子に腰掛け三つの鉄の板に魔導の力を送り込み形を変形させるのを楽しみだす。
三つの元竜の表情は苦しみに満ちているような表情だった。




