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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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試練を超えていけ 2

 アンヌ達が目的の階に辿り着くと空気が変わったような気配を感じ取り、左右に広がる廊下に顔を覗かせて確認しても誰もいない。

 廊下に足を踏み出すと後ろでお姫様抱っこをしてもらっていたレインが首を傾げた。

 左右に広がる廊下をキョロキョロと確認しており、それが何を意味するのかをアンヌは深く考えなかったが、レインが呟く言葉でその理由を知る。


「どこか分からなくなった」


 レクトアイムが「気配が途絶えたのですか?」と尋ねるが、レイン曰く力の流れが完全に途絶えたわけじゃなく、流れが感じられなくなったらしい。

 正確には流れが不透明になったとのこと。

 それを聞いたヒーリングベルが空間に聞こえないレベルの音波を流してみた所、この空間が現在迷宮化していると断定した。


「迷宮化しており、この空間は現在出口が存在しないと言ってもいいでしょう……」


 ならどうするかという結論にアンヌはしっかりと考え抜き、その上での結論は実に簡単な物だった。


「出口が無いのなら作ればいいのでは?」


 その答えを聞いた途端レクトアイムは微笑み「好きになさい」と告げた。

 アンヌは目の前にある壁目掛けて自分の持てる力を最大まで高め、それを真正面に放出する。

 すると目の前に大きな壁が出来るだろうと誰もが予想したが、それは予想外の風景によって打ち砕かれた。

 正面の空間がひび割れて粉々になったかと思うと目の前に広い空間が現れた。


 廃墟の一室と言えばそれだけだが、周囲に点在する柱は所々ひび割れており広い空間のど真ん中に奈美と美咲が寝っ転がっており、その周囲に見慣れない天使のような姿をした存在が六体が囲んでいる。

 美咲と奈美が横になっている床も仄かに発光しているように見え、アンヌは追いかけようと駆け寄っていくがその前に激しい閃光が走り全員が足を止めた瞬間、ダルサロッサ、レクトアイム、ヒーリングベルに鋭い針のような物が飛んでいった。

 三人の首元に着弾すると、三人の竜の体が黄金に変わり果て、そのまま「ドスン」という者音を立てて落ちていった。


「レクトアイム! ヒーリングベル! ダルサロッサ!」

「落ち着きなさい=制止。一時的に無力化しただけ=生存」

「何をしたのですか? カール」

「体の構築式を一時的に変更=強制的に黄金に変換。しかし竜は強靭な生命力を持っている為精々封印が限界=私に殺すのは無理」


 カールは三人の竜を強制的に黄金像に変えてしまったと説明、アンヌは他の人に下がっているようにと指示を出す。


「安心して人間には使わない=無理。この術式は閣下が開発=竜の無力化が理由。人間用には作られていない=残念」


 心底残念そうにしており、カールはその表情だけで多少いらりとしてしまった。

 それは表情としてカールにも届き、カールは術式の邪魔をさせまいと背中から天使の羽を出現させながら右手を前へと突き出す。

 すると後ろで鎮座していた三人の竜の黄金像が浮かび上がりカールの周囲に漂い始める。


「彼女達に何をするつもりなのですか!?」

「全力を出して不要に目立ちたくない=重要。安心しなさい=殺さない」


 カールが「ただし…」と言いながらアンヌを睨みつける。


「元に戻せるかはあなたが私に強烈なダメージを与えられるかどうかにかかっています=やってみなさい」


 そういうとカールはまずダルサロッサの体に右手を伸ばす。

 アンヌはそれを邪魔しようと熱の一撃を放つが、カールはそれを新たな魔導兵を召喚して防ぐ。

 魔導兵は見えないシールドをカールとアンヌの間に広く展開、アンヌ達もこれでは接近することが出来ないとはっきりと判断。

 勝負はアンヌに預けられる形になった。

 アンヌは見えないシールドを破壊しようと攻撃を浴びせる。


 ダルサロッサの黄金像がまばゆい光を放ちながら形を変えていき、ダルサロッサは自らの尻尾を噛み体を回転していくとダルサロッサの名残が無くなって一つの黄金の輪っかに変わってしまう。

 しかし、竜の旅団のマークと契約の象徴だけは消えずに残っているところをアンヌが確認するとカールが言っていることが今の所嘘では無いと理解した。

 ダルサロッサの輪っかが今度は黄金の延べ棒へと変貌し一本のマグナムへと変貌したと同時にアンヌは見えない壁を魔導兵事吹っ飛ばした。


「そこまでです!」


 アンヌはカール目掛けて熱の一撃を放つがそれをカールはダルサロッサの銃を使って相殺してしまう。

 問題はアンヌは攻撃をするたびにチャージしなくてはいけないのに対し、向こうはその必要が無いという点である。

 アンヌは再び思考を働かせてどうすればいいのかを考えていくと、遠距離から攻撃を浴びせてくるカールを常に視界に捉えながら右に走っていく。

 するとカールは今度はヒーリングベルの体を輪っかに変えていき、そのまま黄金の延べ棒へと変えるとヒーリングベルを黄金の盾に変えてしまった。


「これでは遠距離攻撃は…」


 舌打ちしながらアンヌは熱を一本の杖の形状に変えて作り出し走り出す。

 切るという動作自体がアンヌは苦手だと思っているし、そんな事は出来ないからこそアンヌは杖という形状を選んだ。


 カールは接近するアンヌにダルサロッサの銃で牽制しつつ距離を一定に保つように努力し、その間にレクトアイムの体を黄金の延べ棒へと変貌させる。

 接近してくるアンヌに対してレクトアイムの剣を作り出しそれを思いっ切り振り下ろす。


「彼女達を弄んで何が楽しいのですか?」

「弄んでいない=誤解。私にとって全てが等しく武器というだけ=真実。名前を付ける必要がある=重要」


 カールはアンヌの攻撃を捌き蹴り飛ばして再び距離を取る。

 ダルサロッサの銃を『炎竜の銃口』と名付け、ヒーリングベルの盾を『慈愛の盾』と、レクトアイムの剣を『慈悲の剣』と名付けてしまう。


『我々を無理矢理扱うとは……気に入らん。まさかこんな存在が居たとはな』


 空間にダルサロッサ声が響き渡り、レインが「ダルサ!」と叫ぶが、カールは忌々しそうな表情に変わる。


「意識がある=想定外。その辺も変更する=強制」

『アンヌ。私達が貴方の敵にまわりますが容赦なくカールを討ちなさい。最悪彼女にダメージを与えることが出来れば元に戻ります』

「物体の精神構造にアクセス=進行中。天使カールに忠実=強制」

『『『強制アップロード中』』』


 三人が揃えて機械のような口調で喋り出し、それを怒りに変えたアンヌは思いっきり杖を床につけて熱の斬撃をカール目掛けて飛ばすが、三人は『アップロード完了』というとそのまま慈愛の盾がアンヌの攻撃を受け止めた。


『カール様命令を下してください。私は慈愛の盾。いかなる攻撃も防いで見せましょう』

『カール様命令を下してください。私は慈悲の剣。敵を切り刻んで見せましょう』

『カール様命令を下してください。私は炎竜の銃口。敵を撃ち抜いて見せましょう』


 カールは自分に忠実になった竜達を見て悪く微笑み、アンヌはそれを見て更に苛立ってしまう。


「大切な仲間が敵になる=どんな気持ち?」

「あなたは………最低です」


 鋭い睨みを向けてアンヌは一旦後ろに下がって体勢を整えながら杖を造った要領で全身に白いローブのような物を作り出す。

 アンヌの中に存在する命を弄び、自分の友人に酷い目に合わせているという現実に怒りを抱き、それが彼女に次の領域へと導いていた。


「私は絶対に許しません。あなたを倒すまで戦います!」

「やってみなさい=挑戦」


 アンヌは杖を強く掴み相手を睨みつけ、カールは静かに時間を確認する為に懐中時計を持ち上げて確認。

 データが取れるまであと十五分。


 アンヌとカールの最初の一戦が始まろうとしていた。


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