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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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潜む闇と蠢く者 9

 京都の東側にある清水寺へと向かう為会場から出ていった一行は、その道中美咲が思い出したことをそのまま口にした。

 美咲が告げる三年坂の噂を聞くと顔を青ざめるアンヌ、美咲が「噂だって」と言いながら前を歩き出す。

 レインは先ほどから抱きしめているダルサロッサを離さないように、同時にダルサロッサが逃げないように適度に飴などの与えている。

 清水寺まではまだ少しだけあり、皆で露店を見て回りながら歩いて近くのバス停まで急ぐ。


「じゃあ今の京都は市内にバス以外走っていないの?」

「うん。あっちこっちに難民住宅があってね、それもあって中々復興作業が進まないんだって」


 レインはダルサロッサのお腹をモフモフしながらそう答え、アンヌは近くに建っている建物を見ながらアンヌは「そうですか…」と呟く。

 京都もそうであるが、現在日本という国全体がこのようにクライシス事件の余波を受けているような状態で、どこもかしこも済む場所がない人で溢れかえっている。

 清水寺へと近づいて行けばその住宅街になっている仮設住宅が広がるエリアを通らなければならない。

 そんな仮設住宅のエリアがいたるところにあり、それが電車などの復興を妨げている。


「仮設住宅が隙間を埋めるように広がるから復興が妨げられているみたいだね……でも…ねえアンヌ。全国各地がこんな感じなの?」


 近くの屋台でアイスクリームを購入していたアンヌに尋ねる奈美、アンヌはバニラとチョコのアイスを受け取りながら「そうですね…」と記憶を探り出す。


「確かに全てという訳にもいきませんが……でも主要都市はこんな感じですね。主要都市のの重要施設が潰れているような状態なのでその重要施設の復興と住民が暮らせるように仮設住宅を素早く進めたことで交通手段が出来る隙間を無くしてしまったと…」

「そっか……早めに解決できればいいのに……? あれ何かな?」


 奈美が指を指す方向には人だかりができており、そこに向かってアンヌが近づいて行くと人混みの中から声が聞えてきた。


「これで何件目かしら?」

「また大量の血だけを残して亡くなったの?」


 その話を聞いてアンヌ達はここで今『例の事件』の被害者がいたという事が分かり美咲が怯えを見せる。

 アンヌの前に広がるのは大量の血と遺体の無い事件現場、仮設住宅と仮設住宅の間の細い道に大量の血が両方の壁を真っ赤に染めている。

 しかし、その中心には遺体どころか残骸すらも残っていない。


 人の血と思われる血痕が両方の壁を半分ほど真っ赤に染めているのに、その遺体が存在しない。


「遺体が無いっておかしいよね? これが本物の血なら遺体があるはずだし……」

「奈美ちゃんの言う通りよね。遺体を食べたわけでもないだろうし……」


 遺体を食べたという話にレクトアイムとダルサロッサは一人だけ心当たりが出来ていた。

 吸血鬼のボウガンは人を食べる。

 すると後ろから見られているという視界を感じ取り、後ろを振り返るイリーナだがそこには集まってきた人の波が見えるだけ。

 しかし、そんな時だった人の波がいきなりアンヌ達を囲んでいき、一気に周囲が見えなくなってしまう。


 アンヌとイリーナが直ぐにレインを発見したのだが、美咲と奈美が直ぐには見つからないまま周囲の人が消えていく。

 あっという間に元の静けさに戻っていき、そこまで来てダルサロッサとレクトアイムとヒーリングベルが舌打ちをしてしまった。

 特に空間に違和感を覚えなかったが、先ほどの人の波は明らかにおかしかったと判断できたし、何より周囲にいる人達は先ほどの人の波にまるで言及をしていない。


「やられましたね。てっきり先ほどの発覚から一旦手を出さないと思っていたので…」

「レクトアイム?」

「これは先ほどのカールという女性が引き起こしたことでしょう。拉致した目的はおそらく美咲でしょうが……」


 まさかここまで早く動くとはレクトアイムは考えていなかった。

 というより周囲にいる人間達が偽者なのか、空間そのものが歪んでいるのかがまるで分からなかった。

 それだけ高等レベルの力が働ないているのか、それとも認識そのものを阻害するような術が付与されているのかのどちらか。

 空間そのものに認識を阻害するような術が込められている場合、一個人とは違いバレにくい。


「早めに回収してしまいたいですね」


 最悪の事態だけは避けたいとレクトアイムは直ぐにでも捜索するべきだと発言すると、ダルサロッサは「どうやって探す?」と現実的な事を告げてきた。


「空間そのものを歪められているのなら簡単に出られんし、何よりどこに連れていかれたのかが分からない以上簡単には探せないぞ」


 するとダルサロッサを抱きしめていたレインがそっとある方向を指さし「こっち」と指摘した。


「そういえばこの子は力の流れが分かるのでしたね……」


 そこまで言った所でレクトアイムが「この子は何の力を見ているのですか」と疑問を抱いてしまう。

 それ自体はダルサロッサも同じことを考えたようで、何の流れを見ているのかを尋ねた。


「? この街に底にある……よく分からない物。それが美咲お姉ちゃんに流れていたから」


 よく分からないものは真っ直ぐに美咲に流れていると言い、それを思考しているうちに美咲の体に起きているある異変の正体もその力なのかもしれない。


「だとするとカールという女性が仕掛けた術式もその『何か』に仕掛けているのでしょうね……」


 あとはその痕跡へと走っていくだけだが、アンヌが先に気が付き通信妨害を美咲が発し始めていると気が付いてしまった。

 

「早めに追いかけた方が良いんじゃ……」



 カールは魔導兵が二人を回収したのを持っていたスマフォで確認しつつ、目的の建物へと急いで運ばせていると、それを真っ直ぐに追う人間をスマフォで確認した。

 意外と早い行動に流石に驚くが、どれだけ素早く動こうと走っての行動には限界があるう。


 スマフォを媒体にして魔導兵に「車を使って逃走せよ」と指示を出す。

 遠くからとにかく竜達に近づかないようにと心がけ、最悪接触するのは計画の最終段階だけでいいと考えていた。

 最悪連れ戻されてもいいと考え、あくまでもどっちが自分の標的なのかを知ることを優先し動く。


「対象二人を迅速に目的地まで移送する=最優先目的」


 スマフォ越しにアンヌ達から離れていることを確認しつつ逃走ルートを今一度確認する。


 目的の場所は京都駅近くの廃屋に設定してあり、そこは元々不死皇帝が術式を発生させるのに活用していた場所。

 それ故に魔導兵がカールの力を活用する上で一番有利な場所の1つ。

 本来であれば清水寺が一番良いが、特に問題の起きていない今の状態では観光客であふれかえっている場所は返って失敗の可能性を高めると判断した。


「確実に対象を絞り込む=絶対。その為には可能性を一%でも高める=必ず」


 術式の威力を最大値まで高めつつ時間をいかに稼ぐのかがこの勝負のカギになっている。

 車を用意するのに時間が掛かってしまったようだが、多少のロス程度で済み車に乗り込むと魔導兵は大通りから京都駅方向へと向かって移動して行った。

 念の為にと複数の車を用意してから周囲の空間の認識を歪ませるための術を解除してから行動を開始した時、アンヌ達が素早く動き出したと聞きスマフォで再び彼女達を確認すると、どこから調達したのか一台の車がその背後から追いかけていた。


「陽動の車を配置開始、分散地点はこの先の曲り角を曲がったところで」


 カールはスマフォを握りしめながら現場の状態を逐一確認しつつ指示を出す。

 天使であるカールの頭脳戦が始まろうとしていた。


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