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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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潜む闇と蠢く者 8

 大興奮で終わったライブで美咲は息を漏らしながら余韻に浸っていた。

 アンヌもどこか興奮したまま歩いてスタッフ関係者の出入り口からイリーナのいる楽屋まで移動して行く。

 スタッフの案内で楽屋の前まで来て中へと入っていくと、中ではイリーナが疲れた顔をしながら奈美に膝枕してもらっていた。

 和やかな雰囲気と共に部屋に入ってきた美咲とアンヌの前で何とか体裁を取り繕うとするイリーナだが、疲れ切っているイリーナは動くのも辛そうにしており、アンヌと美咲に止められることでそのまま膝枕をしながら落ち着く。


「この後どうする? イリーナもあと五分である程度回復するから移動しようか?」

「そうですね。そういえばレインちゃんが来ているんです。このまま一緒に行動してもいいでしょうか? なんでもお兄さんが忙しくここに預けてきたと」

「? そうなの? どうしたんだろう?」


 奈美が疑問顔をしてアンヌは外で待機していたレインを呼ぶと中へと元気よくレインが駆けこんできた。

 レインはアンヌの足元まで近づいて行き見慣れない奈美やイリーナに改めて挨拶をした。


「レインです! よろしくお願いします」


 綺麗でかつ元気のいいお辞儀を前にしてイリーナが起き上がりしゃがみ込んで目線を合わせ「こんにちは」と答え、奈美も同じように目線を合わせて「こんにちは」と告げた。


「そうだレインちゃんはどこか行きたいところある?」

「お姉ちゃん達と一緒ならどこでもいいよ! どこでも楽しそうだもん!」


 レインの笑顔を前にすると皆が朗らかな笑顔になってしまい、そんな空気の中レクトアイム達竜が三人入ってくる。

 するとレインが「ダルサ発見!」と言いながら思いっきり抱きしめ、ダルサロッサはそれを「仕方がない」と言いながら抵抗しない。


「あなたダルサと呼ばれているの?」


 レクトアイムの素朴な疑問にダルサロッサは「まあな。嫌いなニックネームっじゃないしな」と言うとレインは「私好き」とはしゃぎ回る。

 イリーナが目の前で着替え始めるのをヒーリングベルが素早く行動し、ダルサロッサの視界が急に塞がり「何事だ?」と声を発する。


「女性の着替えですよ。あなた性格的性別で言えば男性でしょう?」

「竜に性別など無いだろうに……、それに人間の着替えに逐一興奮的感情など存在しない」

「そんなのだからモテないのですよ。それよりイリーナ着替えるのなら早くしなさい。そのような下着姿でウロウロしない」

「べ、別にウロウロはしてないし……え? 何レインちゃん」

「イリーナお姉ちゃん………胸大きいね」


 レインの何気ない一言にイリーナが顔を真っ赤にして胸を両腕で隠しながらコソコソと着替え始める。

 すると、イリーナのほうを睨みつけるような視線を向けられ気まずそうにしているイリーナ。


「なんで私の周りは皆胸が大きいかな……」


 自分の胸を触ってぺったんこな胸とイリーナの胸を見比べている。

 そのまま頭の中でジュリエッタの大きな胸を思い出して真っ青になってしまう。


「ジュリお姉ちゃんなんか何着ていても大きさが分かるんだもん! それはジュリお姉ちゃんみたいな大きさからすれば貧乳って思われてもおかしくないけどさぁ」

「奈美ちゃん? 独り言というには少々ヤバ気な精神状態な気がするけど……大丈夫?」


 イリーナが心配する中着々と着替えを進めるイリーナとは別にアンヌ達はこれからどこに向かうかを話し合っていた。


「私は清水寺に行ってみたいです」


 そんな事をアンヌが告げるとレインが「私が案内する!」と元気よく声を上げ、美咲が「イリーナの着替えが終わったら…」と言ってイリーナの方を見るとそこには見るも絶えない光景が広がっていた。

 ていうか奈美がイリーナの胸を揉みしだいており、アンヌは顔を真っ赤にさせ美咲は急いでレインの両目を両手で優しく塞ぎ、レインは混乱のままに「何?」と声を漏らす。


「奈美は止めなさい。そのようにイラついたらイリーナの胸を揉むのはあなたの駄目な所よ……」

「だって……見て! こんなに柔らかくて包み込むような……まるでお餅!」

「せ、せめて他に言い方がぁ~!」

「止めなさい」


 流石にヒーリングベルが奈美を止めている間に素早く着替えるイリーナ、その素早さはまるでオオカミに睨まれている動物である。

 怯みながらなんとか素早く着替えきり、ライブの時のようなフリフリのドレスでは無く裾の長いロングスカートと温かそうなカーディガンを羽織っていた。


「何か顔を多少形隠す必要がありますね……」


 ようやくの思いで視界が解放されたダルサロッサの前でヒーリングベルが考え込みながら呟き、イリーナは「別にいいよ」という。


「良い訳ないでしょう? 何かせめて変装する努力をしなさい」

「だったらレインが良い物持ってるよ!」


 そう言いながらレインは持っていた子供用の鞄から綺麗な髪留めをを取り出した。

 シンプルでかつ水色の綺麗な髪留めをで後ろ髪を束ねてそのまま髪留めで止めるが、ヒーリングベルは「まだ足りませんね」と呟く。


「だったら帽子で良いじゃないですか? ほらそこにあるつばの広い帽子」


 美咲が指さす方向に無造作に置かれている帽子、それをそっと持って帽子を被るとチラチラ見える髪留めと一緒に様になっている。


「でも、そのような帽子いつから置いてありましたか?」


 少なくともヒーリングベルには心当たりが存在しなかったが、怒られていた奈美が「私が勝ったもん」と不貞腐れながら告げるとイリーナは「そうなんだ…」と照れくさそうにしている。


「これ……奈美ちゃんが…」

「イリーナ……」


 アンヌが突然のように始まった謎の空気を前にして戸惑いを覚える。

 まるで運命の相手に出会ったという空気を前にして怯む面々、ヒーリングベルが「いつもの事よ」と言いながら横に飛び去る。

 先ほどまで胸を揉みしだいていた人たちの空気とは思えない。


「さて行きましょうか……こんな場所でいつまでもウロウロしていても暇ですからね」


 謎の仲直りをして立ち上がる奈美、二人はまるで付き合っているかのように仲良く歩き出していく。


「このままズボンでも穿いて男装しようかなぁ」

「先ほどまで胸を気にしていた人の発言ではありませんね……全く」


 呆れながら小さな帽子を被るヒーリングベル、不思議そうな顔をするダルサロッサ。


「何故お前は帽子を被る?」

「? おしゃれをしているだけですが?」


 不思議そうな顔で返すヒーリングベルに彼女の不思議な感性に疑問を抱くダルサロッサ。


 本来竜に性別は存在しないし、そういうおしゃれをするという考えなども存在はしない。

 なのでヒーリングベルのように帽子を被るという意味がイマイチ理解できないダルサロッサ。


 レクトアイムは「どっちでもいい」と考えているのであえて口を出さないでおり、竜達の奇妙な空気に今度はアンヌと美咲が疑問を覚える。

 次々と楽屋から出ていき、スタッフにイリーナが感謝の言葉を告げていき、そのまま楽屋から出ようとしたところでレクトアイムが制止する。


「止めましょう。そとで沢山の人が出待ちしています」


 奈美とイリーナはなんとなくその理由が分かっていたし、次に美咲も少しで遅れる形でその意味を理解した。

 イリーナは今では有名人、それに直後にライブを終えたあという事で、ファンが出てくるのを待っているのだろうと予想する。


 ファンの前に出ていく事は簡単だが、それでは何時間かかるか分かったものではない。

 そんな事で時間を喰いたくないイリーナは出来ることなら他の出入り口を探す為にスタッフに尋ねると、裏に搬入口があると知りそっちから出ていく事にした。


 その現場をカールがずっと見ていた。


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