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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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潜む闇と蠢く者 1

 アンヌ達が出会ってから一時間が経過したころカールは西暦世界のエリアまで逃げてきており、大きなため息を吐き出して鬱陶しそうに髪の色を金色に変えてしまう。

 勿論誰も見ていないという事を確認しての事、まさかの事態を前にカールは頭を悩ませ、小さくしまったと呟いた。

 彼女からすればなんなことになる予定ではなかった。

 昨日寝る前に通信妨害が解除されていると気が付いたが、肝心の目的が達せられていないことに気が付き、誰かが術式に更に細工を施したと気が付くことに。

 その日は眠たかったので寝てしまったのだが、その際にボウガンから「確認しないでいいのか?」と尋ねられた。

 しかし、それを一切無視して寝たことを今となっても後悔している。

 あの時調べて置けばこんな風に面倒になる事は無かったと、簡単に近づくことが出来なくなった以上竜達をどうにかする術をまずは考える必要があった。

 事前に用意した戦力では竜達に対抗することは出来ないし、分離しようにも簡単には分かれてくれないだろう。


 そうなると色々と考えることが生まれていった。

 正直に言えばボウガンに頼むのが一番楽ではあるが、それはカールのプライドが拒絶している。

 金髪に変えたことで異能を使用している事へのストレスが軽減し、清々しい表情を浮かべるがそれと同時に周囲への影響力が半端ではなかった。

 隣を歩く人々に注目されているが、本人はまるで気にしていなかった。


 実際カールは顔立ちは良い方で、普通に歩いている程度ではその辺の人間には美人な外国人程度にしか思えない。

 顔立ちは西洋風な方で綺麗な金髪をしているせいもあって外国人風になっており、服装を記者用の服からミニスカートとタイツに上は革のジャケットに少し派手なTシャツを着ている。

 その所為もあってあるヤンキー面の男性がナンパをしようと近づいて行く。

 カールの肩を抱いて顔を近づけてくるのを完全無視していた。


「なあなあ……俺達と良い事しようぜ」


 無視をつづけるカールに痺れを切らすのにさほど時間はかからなかった。

 それ故にヤンキー面の派手な男は仲間の男達を呼びだし、カールを強引に会場から連れ出す。

 連れ出した場所は京都がクライシス事件の際に被害を受けた廃屋であり、無人の区画に連れていくと十人ほどの男性がカールを囲む。

 思うようにいかなかったという苛立ちが存在するカールにとってここにいるヤンキー達はストレス発散の相手に過ぎない。

 ここなら多少暴れてもいいだろうと思いカールは目の前にいる男性の顎先を思いっ切りアッパーで打ち上げた。


 『ドゴン!』という音と共に男の首から上が吹っ飛ばされて即死、周囲にいる残り九人のヤンキー達の顔面が蒼白するのはあっという間だった。

 逃げ惑い、ある人は悲鳴を上げて助けを乞うが自分達で人が全く近づかない区画を選んだのだ人が来るわけがない。

 無論逃がすつもりの無いカールこの一帯に見えない壁を張り、空間を歪ませる。

 出口の無い迷宮の完成だった。


 太ったヤンキーは建物と建物の間を潜り抜け壊れた建物の下の隙間を強引に通り過ぎて出ていこうとするが、服の裾が端っこに引っ掛かり焦りながら服を破いて逃げていく。

 しかし、出てきた場所は出口では無くむしろ先ほどまで居た廃屋の真ん前だった。


 殺したヤンキーの返り血を浴びて現れるカールはストレスから背中から片翼の天使の羽を呼び出し、太ったヤンキーの体中に羽を突き刺して殺し、同じように逃げていたはずのやせ細ったヤンキーを片手のパンチで上半身を吹っ飛ばす。


 一分もするとカールの前にヤンキー達の死体の山が築き上げられており、それを一人の男性が現れるとドン引きしてしまう。


「あ、あの………何が?」

「気にしなくていい=報告優先」

「は、はい! 副大統領派! 作戦のための準備約八割まで完了しました」


 カールは「あっそ」と言いながら近くにある遺体を全て焼き尽くすために光の玉を召喚し綺麗に証拠を抹消した。

 その姿に顔面が青くなっていく口をパクパクさせるアメリカ男性。

 軍人という事もあり体は鍛えられている為かガタイがそこそこ良く、旅行客に紛れている為か分かり難いがアメリカ陸軍に所属していると言われたら納得しそうな身体つきをしている。


「それでそちらの準備の方は?」


 そう言われるとカールの苛立ちに満ちた表情が男性の方を向き一瞬殺されるのではないかという殺気を向けられたが、カールはその殺気をおしとどめる。


「上手くいっていると思う=疑問」

「で、ではそちらの準備はまだという事ですね。こちらはなるべく早く片付けていつでも作戦開始の合図としておきます」


 そう言って逃げるように走り去って行く男性の背中を強めに掴むカール。

 男性からすれば突然のようにやってきた死の使者に汗を掻きまくり、振り返ると瞬間的に男の意識は消えてしまった。


 その数秒後廃屋の屋根の上にボウガンは人知れず現れ、カールが引き起こした新たな死体にドン引きした。


「おいおい! そいつアメリカ陸軍だろ? 大事な戦力の、しかも取引相手をストレスで殺すって……どんだけストレスがあったんだ」

「五月蠅い=黙れ。問題ない=蘇生する」

「お前な……後で生き返らせるからって殺すなよな。しかも面倒な事に殺した記憶を化身だから厄介だよな」


 宣言通り死んだアメリカ陸軍の兵士を生き返らせ、服も元取りにしてからまた殺すを繰り返す。


「そいつも気の毒にな……お前に目を付けられるとは。で? お前の身に何があったんだ? まさかとは思うが正体がバレかけて逃げてきた挙句対象を絞り切れず、その上目を付けられそうになっているなんてことは無いだろ?」


 ドスのきいた目をボウガンに向けるがニヤニヤしながら見下すような目をしており、この時ボウガンが情報の共有をしていなかった事を思い知った。


「睨むなよ。まさかあの娘に聞かないなんて知らなかったんだから」

「あえて教えなかった=わざと」

「だから………偶然だ偶然。まあ、俺の方は監視しているだけだしな、お前の作戦が成功しないと俺も動けんしなぁ…」


明らかにわざとプレッシャーをかけようとするボウガンにカールは今朝聞いたある事件を尋ねた。


「今朝資産家の男性が殺された=何かした?」

「まあ………俺達を探ろうとしていたからボスが手を下したんだろ……アンヌという女との会談中に上手く唆してガイノス帝国に組み入ろうとしていたらしいし」

「閣下を敵に回した=愚か」

「ていうか俺が殺したんなら遺体が残るわけがないだろ」

「確かに=常識。不良吸血鬼=ボウガン」

「お前な……せっかくフォローにでも来てやったのにな……」


 カールは冷血に「いらない」と告げると立ち去ろうとする。


「ならお前はあの中から対象を絞り出せるのか? お前が成功しないと他のメンバーが動けないんだぞ」

「分かっている=責任重大」


 カール達に命令されている作戦は全てカールが成功しないと誰一人動けない。


「お前の作戦に全てが掛かっている。厄介な事に聖女と呼ばれた奴が相手と来た……。上手くいくのかね……?」


 ボウガン挑発にカールはやる気を取り戻していき、羽を仕舞いそのまま歩き出す。


「あれは大変だな………なあボス」

「お前はもう少しうまく動けよ……先ほどから見ているがお前の方も危なかったぞ」


 突然現れた不死皇帝は立ち去っていくカールを見下ろしており、ボウガンに背を向けて立ち去ろうとする。


「最悪の場合お前がサポートしてやれ。あいつの精神状態苦戦すると追い詰められやすくなる」

「へいへい……ああ、結局俺が尻拭いをするのか」


 笑いながら不死皇帝が立ち去るを見届けたボウガンだった。


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