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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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古都京都 6

 真夜中にうなされてしまい美咲は目を覚ましてしまうと、隣ではぐっすり眠っているアンヌがおり美咲はうなされていた悪夢をハッキリと覚えておらず。

 もう一度ベットに入ろうと思い布団をかけて目を閉じると、頭の中に突然「見つけた」という不気味な声が聞えてきた。

 その声が聞えてくると体が飛び起こし、周囲を見回して不安な気持ちが込み上げてくる美咲は両手を胸に起きながら毛布を体に纏って部屋中を探して回る。

 洗面所やバスルーム、ロッカーの中まで探し出し声の主が見つからないまま不安な気持ちで廊下へと出ていく。

 あの声は何だったのだろうかという不思議な気持ちで歩き出し、廊下へと顔を出して左右を確認すると長く暗い廊下が更に不気味さを感じさせる。

 しかし、確かに聞こえたあの声がどうしても気になってしまい廊下に出ていく。

 さほど歩いたわけでもないのに迷ったような錯覚を受け、不安に泣き出しそうになると誰かが突然美咲の右肩に手を置いた。

 驚いて振り返るとそこには眠たそうにしているアンヌが立っており、小さな声で「大丈夫?」と尋ねる。


「ど、どうして?」

「美咲が……不安そうに出ていくから」


 アンヌが帰りましょといいながら美咲の手を取り歩き出す。

 部屋まで戻るとアンヌは美咲にどうかしたのかと尋ね、美咲は先ほどの声の事を説明した。


「そうですか………なら」


 アンヌは美咲と一緒のベットの中に入っていき、そっと美咲の手を握りしめる。


「これで大丈夫ですね」


 温かく先ほどまで感じていた不安が吹っ飛んでいき、美咲は襲い来る睡魔に身を委ねていった。



 美咲のお祖母ちゃんが目の前に降り、美咲はどうして自分がこんな場所にいるのか分からず少しだけ考えて「夢か」と気が付いた。


「美咲……昔この京都にはね化け物が居たんだよ」


 そんなのいるわけがないと今ならはっきりと分かるが、当時は怖く涙を浮かべながら祖母の話を聞いていた。

 怯える美咲に祖母は優しく微笑みながら「大丈夫だよ」と語り掛ける。


「昔一人の剣士様が化け物を斬ってくださったんだよ。そのまま化け物をこの地に封じ込めたんだ」

「じゃあ大丈夫?」

「そうだよ。私達はその剣士様の一族の血を引いているんだ」


 化け物とはなんなのか、剣士様はどんな人だったのかと思い口を開こうとするがこれはあくまでも美咲の記憶に基づいた夢、変わる事はありえない。

 美咲は安心して微笑んでいると、ここから記憶は美咲の知らない記憶へと変わっていく。


「あれがその剣士様だよ」


 美咲は驚きと共に祖母が指さす方向に体を向け、本来であればただのキッチンがあるだけの場所には昔の京都の町が再現されており、まるで現実のような場所に自分がいることに驚いた。

 京都の地を襲った化け物……まるでエネルギーが実体化したような体をしており、虎を彷彿させる化け物は家を簡単に踏みつぶせるほどの大きさをほこる。

 美咲は驚きのあまり悲鳴を上げるが、その化け物に立ち向かう一人の剣士がいた。

 刀のように片刃であるが大きさは刀どころか西洋風の剣にも見える。

 特徴を言うならその剣は握り口に小さな盾のような物が付いている事ぐらい。


 大きな身の丈の大男で如何にも和風な服を着ているが、周囲に隠れている人々と比べると明らかに背が高い。

 当時の水準レベルがどうなのかは美咲にも知りようがないが、百八十センチはあろうかという巨体、和服の上からでもわかるほどの筋骨隆々な体が特徴的な人間。


 エネルギー体の化け物は大きな咆哮を上げて襲い掛かろうとするが、剣士はそれをバックステップで回避しつつ化け物の腕を切り裂く。

 綺麗な太刀筋でそれだけで何かしらの流派を感じさせ、大男はそのまま苦しむ化け物の体をよじ登っていく。

 美咲は逃げなければという想いを抱くが、何故か体が動かない。

 ようやく気が付いた。


 これも美咲が見ている夢という名の記憶であり、祖先が実際に感じた記憶なのだと。

 

 最後に剣士はとどめにと縦に斬りつけエネルギー体の化け物はそのまま霧散してしまうが、空を覆うほどのエネルギーが舞い今にでも復活しそうになってる。


「また不死か………うん?」


 地面に降り立った剣士は美咲の方へと近づいて行き顎を掴んで少し持ち上げ顔を覗かせる。

 日本人だといえばそういう顔つきをしているが何かが決定的に違うと美咲は違和感に似方感覚を覚えた。


「お前………封印体だな。どうだ? この化け物からこの街を救う人間に……救世主にならないか?」


 それに祖先がどう答えたのか美咲には分からなかった。



 目を覚ますと美咲はまた見た夢を忘れてしまった。

 覚えていることも断片的な言葉のみで、それも一つ一つからは思い出すきっかけにはならない。

 悩みながら洗面台へと急ぎ顔を洗っていると眠たそうに洗面所に入ってきたアンヌと鉢合わせた。


「おはようごだいます……」


 今だ寝ぼけているアンヌに美咲は洗面台を譲る。


「そうだ。アンヌは『封印体』って知っている?」

「はい………封印する鍵の要素を持った人間ですね。土地や物体に何かを封印する際にその人の命を封印材料とするんです。でもそれがどうかしましたか?」

「夢でそんな感じの言葉が出てきたような気がして……でもはっきりとは覚えていないの」

「そうですか。でも、封印体にはならない方が良いですよ。私が見た本では封印体に一度選ばれれば二度と解くことは出来ず子孫にずっとその重荷を背負わせることになると聞いたことが」


 顔をタオルで服アンヌは寝ぼけていた思考が少しだけ整っていったのか美咲の方へと焦点のあった目を向ける。

 アンヌが美咲に向ける笑顔を見ると美咲は夢の事なんてどうでもよくなってきた。


「そんな事を知らなくても良い事です。それを知らないでいられることが幸せな事です」

「そうだよね。御免ねなんか昨夜の事をまだ引きずっていたみたい」

「いいえ。怖い夢を見たり変な声を聴いたりすると誰だって怖いものです」


 アンヌと二人でベットの方へと戻っていき、着換えていく最中美咲は夢の中の剣士を思い出した。


「そういえば不思議な剣士だったな……」

「剣士? 夢の話ですか?」

「うん。はっきりとは覚えていないんだけど………変わった剣を持った人」

「そういえば日本には日本刀という武器があるですよね。私戦うとか苦手なので知らないんですよね………日本刀ではないんですか?」


 美咲は何とか思い出そうとしたが「違う気がする」程度の記憶でしかなく、形もはっきりと思い出せない。

 何だろうと顎下に手を当てて考えるが思い出せない。


「御免思い出せないや」

「剣士か……」


 美咲に言われた剣士という単語を聞いた時何故かアンヌはソラ・ウルベクトを思い出してしまった。

 二人でガルスが迎えに来るまでテレビでも見ていようとテレビの電源をつけると、テレビではニューヨークに到着する飛行艇がジャックされたというニュースが流れていた。


「怖いね。でも直ぐに解決されてよかった……どうかしたの?」

「いえ……なんとなくソラさんが関わっているような……いないような…」


 なんとなくではあったがソラが事件解決に尽力しているような気がしたが、気にしないことにした。

 ソラという聞きなれない名前に美咲は昨日の夜に聞いた人なのだと気が付いた。


「そういう人なの? なんていうかトラブルに巻き込まれやすい人っていうか…」


 そう言われてしまうと少し考えてしまうが確かにそんな感じのする人だと思い頷く。

 しかし、それだけでは語りつくせない様な人ではある。

 明日から行われる異世界会談に向けてニューヨークでは盛り上がりを見せようとしていた。


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