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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
キョウト・ディザスター《上》
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古都京都 5

 三人でホテルに帰って来たころガルスは一安心したような表情を浮かべるが、素早くアンヌの両手一杯に持っている食べ物のオンパレードを見てため息を漏らす。

 額に手を当てて俯き悩ましいような表情を浮かべるが、アンヌは何も考えずガルスへと近づいて行く。

 祭り気分を最大まで堪能したアンヌは美咲との時間を楽しんでいたのだろうと思うが、ガルスからすれば嬉しい半分心配半分という感情を表情に出さないようにそっと心の押しとどめる。

 美咲は苦笑いを浮かべて袋に入っている食べ物をガルスに手渡す。


「これはガルスさんの分です」

「美咲様。お嬢様が申し訳ありません。友達何て作ったことも無いのでかなり浮かれているのでしょう」

「そうなんですか………私も親しい人なんて作ったことがないから……なんだか楽しかったです」


 ニッコリと微笑む美咲。

 ガルスは三人を連れてホテルの部屋へと案内していき、二人を同じ部屋へと連れていく。

 最上階に近い見晴らしの良い部屋へと案内していくとアンヌははしゃぎながら部屋へと入っていく。


「では美咲様。お嬢様をお願いします。あと、これで好きな物を購入してください」


 といいながらガルスは美咲に一万円を手渡すが、美咲からすればそんな大金を受け取れるわけがなく断ろうとした。

 しかし、ガルスは多少強引に美咲に渡すと部屋から出ていく。

 美咲は一万円を握りしめながら窓から覗き込むアンヌへと近づいて行くが、アンヌは振り返りざまに困り顔をしている美咲に「どうかしました?」と尋ねた。


「これ二人で使ってくれってガルスさんが」

「もう! 美咲もごめんなさい。どうも私に対する過保護な部分が抜けないみたいで……、でも何か買いに行きましょ」

「でも……大分買ったよ…」


 アンヌと美咲の前に積み重なった出店会場で購入した様々な料理のオンパレード、それを前にしてさすがのアンヌですら少しためらいを覚えてしまう。

 しかし、行くと決めたアンヌが今更止めるはずも無く、美咲を連れて一階まで降りていく。

 売店へと入っていくと様々な商品を前にして目移りしてしまうアンヌに、美咲としては観光客向けのお土産に「あるある」と思いながら見て回る。

 するとアンヌは美咲に向かっていい笑顔を作りながらあるキーホルダーを見せた。


「これ可愛いです!」


 そこにあるキーホルダーは京都らしくない熊の人形。

 美咲も可愛いと思うが京都らしくないなぁという想いを抱く。


「二人で買いましょ」

「え? 私も?」

「はい。色違いがあるからこれを二人で。白と茶どっちがいい?」


 美咲は少し驚きながら白を指さし、アンヌはそのまま二つのキーホルダーを購入し白い熊のキーホルダーを渡す。


「お揃いですね」


 笑顔で手渡すキーホルダーをゆっくりと受け取り右手の中に納まっている熊の人形、アンヌは茶色のキーホルダーを嬉しそうに握りしめて踊る様な仕草を取る。

 美咲は微笑みながらそっと抱きしめた。


「そろそろ戻ろうか?」

「そうですね」


 二人で戻っていく中、同じ時間ボウガンとカールが旅館へと足を延ばしていた。



 ボウガンはカールと同じ部屋で過ごす事になったことを内心本気で後悔していた。

 豪華な和室畳のいい匂いと広々と広がる空間、くつろげる空間は自然と過ごす人に安らぎを与えるだろうことは間違いないが、そこにカールが居るというだけでボウガンの不快指数が急上昇する。

 本来であればここにはボウガン一人で泊まるはずだったが、急遽二人で泊まる事になり、カールの能力上こういう時に強引に割って入る事が出来てしまう。

 内心忌々しいと思いながらもそれを表情に出さないようにしてカールから遠い窓際の椅子に座りながら月見にしゃれこむ。

 目の前の机に日本酒と盃が置かれており、ボウガンが飲みながら月見を堪能していた。


「で? 連中の作戦とやらはどうなっているんだ?」

「無知=ボウガン」

「おい………! 細かい作戦はお前が聞いておくという話だっただろうが! 俺は量産兵を用意したり、実行要員にまわっていくからお前が作戦を聞いておくって聞いたんだぞ!」

「明日一日をかけて会場の下見をして明後日実行=作戦。私達が本格的に動くのは明後日の作戦=量産兵を投入する」


 量産兵という言葉にボウガンは眉を寄せ、嫌な顔を造り月の方を見るのだが、それとは対照的にカールの表情はどこまでも惨酷な表情を浮かべていた。


「量産兵……神作りをモチーフにして作った簡易型の呪術兵器、まさか捕まえていた女達を使ってそんなものを造ろうとしていたとはな。ほんと抜け目がないというか」

「閣下のやる事に疑問=反逆?」

「それはそれで楽しそうだなぁ」

「ボスは本当に神出鬼没だなぁ………で? なんでいるんだ? 確かニューヨークで指揮を執るという話じゃなかったか?」


 いつの間にか部屋のど真ん中に不死皇帝が黒と白の縦じまのスーツと真っ黒なコートを羽織った状態で立っており、音も立てずにおらわれる様にカールが興奮を隠しきれないでいた。

 

「音も立てずに入室し誰にも諭されずに入り込む流石です=親愛」

「それを人は不法侵入という」

「人ではない我々にそれは適応できないから大丈夫だな。それより作戦準備は大丈夫だな?」

「勿論です閣下=完璧です」

「ならいい。こっちは大変だ。何というか動物園の飼育員の気持ちになってくるな」


 ボウガンは内心「分からないでもない」という気持ちを抱く。

 そもそも仲の悪いメメントモリとキューティクルの上に、二人はコミュニケーションというものをおろそかにする。

 なので平気で作戦が乱れていく。


「バケモノという動物を飼育している閣下=素敵です」

「そうか? 俺からすれば楽しんでいるように思えてならないがな。結局の所でどうやって侵入したのかを教えてもらっていないぞ」

「瞬間移動というやつを試してみたかったんだ………上手くいって良かった」

「そういえば俺が教えたな……早速悪用しているわけか」


 お酒を飲んでいるとカールが物凄い睨みをカールが向けてくる。


「少しは閣下に分けなさい=命令」

「断る。俺の金で買ったんだ俺のものだ」


 不死皇帝は「いらんさ」と言いながらスタスタと部屋から出ていこうとする。

 カールが心底寂しそうな顔をするが不死皇帝はさほど気にすることも無く部屋から出ていった。


「では作戦は順調にな。お互いにやるべきことを果たせ。特に双方邪魔をする者が現れる可能性がある。気を付けておけよ」


 そんな事はボウガンには分かり切っていた。

 少なくともボウガンの方は邪魔をする人間が確実に一人現れることは分かり切っていた。

 不死皇帝が居なくなった後、ボウガンは気になっていた事を尋ねる。


「そういえば今朝仕掛けていたのはなんだ?」

「術式=電波妨害」

「なんの役に立つんだ? 駅を中心に仕掛けていたが」


 カールは疑問を抱くボウガンに微笑みながら「秘密」だと答えた。

 しかし、ボウガンはそれ以上聞かなかった。というより……興味を抱かなかったというのが真実だった。


 不死皇帝は部屋から出ていった後瞬間移動で京都の清水寺の舞台の上に現れた。

 そこから見える京都の街並みを想い、そっと昔を思い出す。


「変わったな……昔はあんな建物は無かったが……時間とは無慈悲だな。それも全ては吹っ飛んでしまったみたいだが。ここも少し変わったか? どうだろうな………」


 不死皇帝が京都の地に訪れたのはこれが初めてではない。


「真っ赤に燃えろ………燃え尽きて見える真実を私に見せてくれ」


 不死皇帝は再び姿を消すなか京都の地に眠る力に触れようとしていた。


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