弔いは誰の為に 4
屋敷に入ったソラを見送ったままガーランド達はその足で近くにある宿に入っていくとエアロード達はそのままベットにダイブしていく。
バルグスを先ほどから周囲が多少気になるようで周囲を見回しながら反応を伺っているが、そんなバルグスにガーランドは小声で「キョロキョロしていると帰って目立つぞ」と助言を与える。
バルグスはガーランドと共に部屋の中に入ると用意しておいたお酒を取り出して二人分取り出しす。
お酒をバルグスに進めるガーランド、二人はお酒を飲みだす。
「あのまま二人だけでいいのか? まだ子供だろうに……」
「あれでも修羅場をいくつか掻い潜っているんだ。無理なら我々を頼ってくるはずだ」
二人でお酒を飲んでいるとレクターがスマフォを持って駆け寄ってきた。
「ソラから連絡! 共和国の残党が当主と繋がっているかもしれないから周囲を調べてほしいって」
「早速問題ごとを我々に持ってきたか………まあ、動けないのなら仕方がないな。簡単には動けないだろうし」
ガラスのコップを一旦空にするガーランド、バルグスも一旦飲み干すとコップを同じように置く。
「逃げるのならある程度手段が限られているだろうしな……少なくともこの街には地下に潜伏出来る場所が無いからな、通信できる範囲は限られているだろうからな」
「通信できる範囲を絞れればおおよその場所ぐらいなら分かるか。小型なら範囲はおおよそ…」
ガーランドは周辺マップをタブレットに写したままの状態を維持し、手で範囲を絞り込む。
大よその通信範囲は半径五キロと絞り込むことができた。
「この範囲だろうが空き家を一件一件探していると時間が掛かるな」
「それは無いな。ガーランド。この辺りは首相派の重鎮が住んでいるような家ばかりだ、なら間違いなく空き家は無いだろう。あるのならそれは……」
「裏切り者の家……確かガルスの家は」
ガーランドが事前に調べておいた場所、ガルスが住んでいたはずの家は屋敷から直ぐ近く、屋敷を出て直ぐの少しだけ古ぼけた三階建ての家。
「ここだろうな。今から殴り込みをかけるわけには……行かないな。ソラ側がどうなっているのか分からない以上は」
ガーランドは再びコップにお酒を入れ始めながら小声で「問題は脱出ルートだな」と呟く。
「ここからどうやって脱出するかだな。この街を出るには何か方法があるか?」
「………この街から出る方法は東西に分かれている出入り口ぐらいしかないが、強いて言うなら川を下る方法ぐらいだが……」
「そのためにはいったん西の住宅街へ移動するしかなさそうだな。それ以外に方法は……」
「無いはずだが…」
しかし、そんな時だった。
レクターが間に割って入りある場所を指さす。
「ここは? この場所は一体何?」
そこは帝国には存在しない建物が一点だけ構えており、ある意味内紛状態だったこの国らしい場所といえる。
そこは二人にとって盲点だったらしく、驚きながら口を開いていた。
夜になると俺はソファに身を沈め、寝たふりをしながらエコーロケーションで常に周囲を探索していると、屋敷の正面玄関とは違い、裏口から入ってくる六人ほどの武装集団を発見した。
詳細な服装までは分からなかったが、少なくとも武器はアサルトライフル系統を装備しており、腰辺りにグレネードタイプの武器を装備している事だけは分かった。
階段を上ってきてあっという間に俺の部屋の前までたどり着かれ、男たちは部屋のドアに銃を向け、ドア越しに俺を殺しにかかってくる。
足音を立てないように忍び寄る辺り、バレないように心が飼ているのだろうが、逆に言えばやはり俺達の様子はある程度監視されているらしい。
盗聴器の類は音で分かるので、この場合監視カメラがどこかに仕込まれているのだと予想する。
引き金を引くタイミングでこっちも仕掛ける為、俺は緑星剣をバレないように呼び出して息を潜める。
常に相手が引き金を引くタイミングで俺は緑星剣を思いっ切り横なぎに振った。
銃弾がいっせいに飛んでくると、俺は銃弾をジュリに当たらないように心掛けながら銃弾を全て捌く。
部屋中に砂煙のようなものが立ち込め、俺はジュリにジェスチャーで寝ていて欲しいと伝え、一気に走り出す。
敵は目の前に六人が並んでいる形になり、俺はまず二人をすれ違いざまに切り裂きそのまま体を捻ってまとめて四人に斬りつける。
あっけない戦いの終わり拍子抜けしていると、驚きのあまり近くの部屋から俺の方を見つめている当主が現れた。
この時間帯に起きているという事は間違いなく俺達の部屋を監視していたのだろう。
しかし、同時に俺達が泊まったこの部屋が誰の部屋だったのかを俺は知る事になった。
ここはアンヌが寝泊まりしていた部屋なのだろう。
そこを客人を止めるための部屋に使うとはと思い俺は怒りのまま歩き出す。
何より……そんな部屋に監視カメラを付けていた、それもきっと元々アンヌを監視する為だったのだろう。
暮らしているというのにその性格を常に監視し、周囲にいる人間は常に彼女を狙う刺客なのかと思うと余計に怒りがこみ上げる。
今頃師匠たちが共和国の残党を捕まえようとしているだろうし、そっちは任せるとして俺は俺が熟さなくてはいけない仕事をこなすことにした。
「さて………まだ策があるのかどうかだけ聞いておこうか」
「待ってくれ!」
「待たない。待った所でアンタがくだらない事を考えつくだけだってはっきりわかった。アンヌの部屋に監視カメラがあるのは急遽用意したのか? それにしては随分きっちり隠しているようだしな」
「そ、それは…」
言いよどむ中年男性に怒りが湧いてくる俺、目の前のこの男はこの状況でもまだどうにかできると考えている節がある。
その証拠に良い訳をするわけでもなく、ただ時間稼ぎをしようとしている。
「俺達を娘が使っていた部屋にいれ、かつ客人に刺客を送り込む。これが今日一日待った上の答えなんだな」
「そんなことは無い! 我々は……!」
否定しようとしているが、刺客の正体を隠そうとしておりその辺にいる民間人とか適当にでっち上げている。
あくまでも時間稼ぎ、おそらく共和国の残党が一旦この街を離れる時間を稼いでいるのだろう。
この街から去って証拠が無くなればまだ交渉の余地があると本気で思っている。
「どうせ共和国の残党がこの街から出ていくまで待っているんだろうが」
「……! な、なんの事だ」
俺のスマフォが鳴り響く。
「共和国残党をあんたの屋敷裏にあった武器屋で発見したって。正確には武器の輸出入を管理している場所だったかな? 帝国や共和国では武器の管理は国がきちんとしているからな。盲点だったらしいけど……それももう終わりだな」
男の目から希望が消えていき、唖然としたまま俺は緑星剣を真っ直ぐに男の喉元に向けた。
「で? 他に言うべきことは? この国を売り飛ばすのか、それともガイノス帝国と本格的な交渉を受けるか。このまま国が滅ぼされるのを待つか。ここで…今直ぐ…決断しろ」
「………何故だ!? あんな化け物をどうして庇い立てする!? あの女は化け物だ! あの女について行こうとするガルスもそうだ! 全てを滅ぼす事が出来るようなバケモノをどうして!」
「……あんたは違うのか? あんたの決断一つで国が消えるんだぞ。国を亡ぼす事が出来る人間がバケモノならあんたも十分バケモノだよ。それに……誰かの為を想う事が出来る命はバケモノじゃない。で? どうするんだ? このまま帝国と戦争するか? 何ならコッチは戦争をしてもいいんだぞ。俺達はお前達の国民を守り抜いて、お前達を滅ぼす!」
項垂れる当主が交渉の明確な答えだった。