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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《下》
289/1088

神 5

 広いフロアだがよく見ると薄っすらとだが遠くに壁が見える気がして、取り敢えず壁に近づこうと隣の柱へと渡る鉄の橋へと足を向けると二つの柱が交わる場所が見える。

 なるべく急いで行こうと鉄の橋を渡っているとジュリとレインちゃん以外が真上から襲い掛かってくる光の斬撃攻撃を避ける為に行動に走り、俺はジュリを担いでギルフォードはレインちゃんを担いで一気に走り出す。

 そうすると真後ろから屈強な蜥蜴のような化け物が襲い掛かってくるのをケビンとジャック・アールグレイが攻撃を捌く。

 俺は真上から襲い掛かってくる同じ姿をした蜥蜴の化け物、こっちは背中に翼を生やして着地と同時に周囲に衝撃波を発する。

 強さは俺とギルフォードが対峙している翼の生えた化け物の方が強そうだ。


「へぇ……あの初撃を避けるんだ。強いんだねぇ…」


 真上から声がするので全員が真上を見るとフリフリの黒とピンクのドレスを着たアイドル風の女性、まるで悪魔のような顔で俺達を見下ろしており、どうやってあの場所まで移動したのかがまるで分からない。

 ジャック・アールグレイの右繭がピクリと動く。


「まあ、どうでもいいけど……御免ねぇ! こっちのぉ……計画がまだ時間が掛かりそうでさぁ……この子達で遊んでいてよ」


 光の小人が俺肩まで移動するとまっすぐ右手を目の前にいる化け物へと向けると、俺の視界には大剣を持った状態で睨みつける父さんの姿が一瞬だけ見えた。


「ま、まさか……父さん?」


 ジュリが口を覆いショックを隠し切れず、他のみんなも目の前に現れた化け物の内一匹がアベル・ウルベクトだという真実を前にしてショックを隠し切れない。

 すると小人は俺の後方で暴れようとしているもう一匹に手を向けると、俺の視界には一瞬だけバルグスが見えた。

 こっちの化け物は目が見えるようだが、よく見ると両目の辺りにバルグスと同じ傷跡がかすかに残っている。


「こっちはバルグスか!?」

「あら? もしかしてアベルちゃんとバルグスちゃんの知り合い? この子達は私のオモチャ。あなた達にもみせてあげたかったなぁ………、魔物になりたくないって叫ぶこの子達の姿を」


 俺の堪忍袋の緒が切れる音が消えてきて、俺は興奮した状態で真上までジャンプして女目掛けて緑星剣を振り下ろすが、それを父さんが邪魔をする。

 両手から伸ばした光の剣で俺の斬撃を空中で受け止め、俺の体をそのまま鉄の橋まで叩き落し、それをレクターが受け止めつつギルフォードが父さんに斬りかかる。


「ギルフォード!」

「分かっている! 殺さないようにだろ!」


 両手に逆さ持ちした両刃剣に炎を纏わせてそのまま同時に斬りかかるが、両手に伸ばした光の剣で攻撃を弾きつつ押し返そうとする。

 腕力が違うのだろう徐々に押し返されていくギルフォードの援護にレクターがやってくるが、後ろから襲い掛かってくるレクターを尻尾で捕まえる。


 ケビンとジャック・アールグレイと海がバルグスへと襲い掛かっていくが、目が見えるようになったバルグスは恐ろしく強く、特に右腕の銃口から放たれるエネルギー弾は三人を苦戦させているように見えるが、俺があっちに行きたいところだが、父さんが先ほどから俺達の邪魔をしている。

 俺めがけてギルフォードが飛んでくるし、近づいても光りの剣が邪魔をするので余計に厄介だったりする。


 特に殺さないようにを心掛けるのが非常に苦手で、エアロード達が戦いに参加しようとしないこの状況では苦戦をしてしまう。

 でも、もう少しで父さんの攻撃に慣れそうな状況で、父さんは光の剣を両翼から合計六枚も作り出す。

 もう……ふざけるな!


 この状況でさらに強くなるのか!?

 この人!


「おい………お前の父親は魔物状態の方が強いんじゃないのか?」

「いいや。師匠から聞いたことがある。父さんは追い詰められたりすると我を忘れて暴れ回ると。今の父さんは自我を失っている状態だ。この状態が父さん本来の強さなんだろう。それに……魔物になったばかりでまだ成長の余地を残している状態なんだ」


 要するに今の父さんとバルグスはまだまだ成長の余地を残しており、どんな成長を見せるのかが分からないという事だ。

 これ以上下手に強くなられると物凄く困る事態になるが、だからといって打開策があるわけでもない。

 出来れば俺個人としてはあの女を殺したいところではある。


「ソラ君!」

「ジュリは駄目だ! そのままレインちゃんと一緒にいてくれ! 流石にこの状況で下手に動けば守り切れない!」


 俺とギルフォードとレクターが一気に走り出し、父さんの周りを囲む形で配置しつつ一斉に斬りかかる。

 取り敢えず邪魔な翼ぐらい切り裂きたいと俺は緑星剣を振り下ろすが、その攻撃を右腕の光の剣で受け止めつつそのまま右足で俺を蹴っ飛ばし、レクターからくる打撃攻撃を尻尾で受け止めるつつギルフォードに翼の光の剣を飛ばして牽制する。


 化け物みたいな動きで俺達三人を確実に追い詰める父さんと違い、実力の差が出てきたバルグスの方は次第に追い詰められつつあった。

 あの状況なら放置していても間違いなく負けるだろうが、問題は俺達の方だ。

 この馬鹿みたいに強い人を何とかしたい。


「ふぅん………バルグスちゃんは駄目か……アベルちゃん!」


 あの女は父さんを呼びつけ、父さんは顔だけをそっちに向けると女は悪魔のような笑顔を向けて冷酷な事を告げた。


「後で良い事してあげるからぁ………その橋落としちゃおっか!」


 ふざけるなと言いたくなる。

 この状況で何故そんな事を言えるんだこの女、バルグスの方は翼が無いからこの状況で橋を切り落としたら落下は免れないぞ!


「貴様! それでも人間か!?」

「ハァ? 私が人間!? キャハハ!!」


 女は馬鹿笑いをして笑い焦げると、父さんは空中まで飛びあがり両腕の光の剣で鉄の橋を細切れのように切り刻む。

 落下していく俺達の前で女は驚く事を告げた。


「私は………人間じゃない」



 落下しつつある状況で俺は何とかジュリを抱きしめ、エアロードの足を強めに掴んだ。

 エアロードは何とか滑空しながら下に広がる廊下と小部屋が広がる区画へと降りていき、俺達は適当な廊下へと降りていった。

 ジュリを一旦降ろしていると、足を掴まれていたエアロードが呆れた声を放つ。


「全く……突然足を掴むから驚いたぞ。お前だったらあの程度何とかなるだろうに」

「ふざけるな。ジュリを抱えながらではどうやっても無理だ。それより……元の場所に戻るべきか、それとも別の進行ルートを探すべきなのか」

「合流するなら戻るべきじゃないかな。どこに行くのか分からない状況だと皆元の場所に戻ろうとしているだろうし」

「ジュリの言う通りだな。なら戻るか……と言ったのは良い物のここがどこなのかを知る必要があるから目の前にある部屋に入るか」


 廊下を挟んで存在する左右の部屋の内、右側の部屋に入っていきパソコンのような端末機器がガラスの前に置かれているよくある実験室の前にある部屋というイメージ。

 薄暗く電気のつかないこの部屋、単純に電灯の切り替えをしていないだけだ。


「これ……何だろう? 培養器かな?」


 ガラスから見える広い空間にはジュリの言う通り培養器のようなモノが置かれており、暗くて中がよく見えないので出来れば向こう側の電気だけでもつけられないかと画面弄っていると培養器の中がよく見えるほどに明るく照らされる。

 ていうか中には皆同じ顔の人間が入っており、今この瞬間も呼吸をしているように見える。


「クローン……何が目的なんだ?」

「………魔動機兵? 要するに神が完成したあかつきに量産する予定の量産型の神の素体だね」

「ジュリ。これを消去する方法はあるか?」

「えっと……廊下をでて左側にまっすぐ進んだ先にあるこのエリアの管理室まで行けば」


 取り敢えずそこを目指そうと三人で歩き出し、目的の部屋前にある半円状の大きな廊下の先にある部屋に行くだけって所で後ろからバルグスがやってきた。


「ジュリとエアロードは急げ! 俺はバルグスを足止めする!」


 そう言って俺は緑星剣を抜いて走り出していく。

 俺とバルグスの再戦が突然始まった。


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