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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《下》
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未来を掴め 8

 目的の樹海が俺達の目の前にあり、辺り一帯は草原地帯のように平らで静かなのにここ一帯だけが高い木々で覆い隠されている。

 真上から見ると本当にその広さと深さがよく分かり、目的地である中央一帯は特に酷いと言えるだろう。

 この樹海に明確な出入り口など存在しない。

 というのもこの樹海何度出入り口を造っても何度でもなくなってしまうのだそうで、その理由は木々が竜結晶から受ける粒子の影響で成長速度が半端ではないというのが理由。

 エアロード達から聞いた話と一致させると、癒竜は元々高い治療能力の為に細胞の活性化する力があり、それが周囲の木々に影響を与えているのだろう。

 その力は本来林でもない場所に樹海を作り上げるほどの力があり、周辺国はこの樹海相手に非常に苦戦を強いられており、数年に一度ガイノス帝国が魔物討伐部隊を送り込むぐらいだ。


 俺を先頭にジュリとレクターと海の順番で並んでおり、特にジュリの後ろに隠れているレクターは樹海の方をジッと見つめて警戒をしている。

 虫嫌いであるレクターからすれば虫の化け物の巣窟であるこの場所は出来るだけ避けたかった場所なのだろうが、こんな所で俺達がジッとしているわけにもいかないので俺はレクターを無視した状態で歩き出そうとした。

 が、それは樹海の奥からやってきた三メートルの蜘蛛の化け物によって阻まれた。


 口がパカパカ開いて如何にも今から俺達を食べようとしている事がよく分かり、俺はジュリを担いで、海はレクターを担いでその場から大きく跳躍する。

 俺と海の予想はある意味的中し、俺達がいた場所には紫色の如何にも毒ですって粘液が周囲の草原の土や草を溶かしながら消えていく。


「酸性の毒か……海! 蜘蛛を正面から斬りかかるな!」

「常にサイドを意識するんですね?」

「ああ! どこに毒袋があるのか分からんが、最悪糸にも毒があると想定して動く! 俺が奴の標的になるからお前は奴の足を切り裂け!」

「とどめは!?」

「酸性の毒がどこにあるか分からないから俺がする! 俺の緑星剣なら止めがさせる!」


 俺が周囲の土に剣で切り裂きながら持ち上げていき、海は素早く動いて刀をを一旦鞘に納めて何時でも抜刀が出来るように準備に入ったのを俺は確認した後、土の斬撃を蜘蛛目掛けて飛ばす。


「竜撃土の型! 土流撃」


 そのまま立て続けに三連撃を叩き込み、蜘蛛は後ろに大きく飛びながら距離を開けるが、その瞬間に海が電流を全身に走らせる。


「牙撃我流! 狼一閃!」


 海の体が狼のように見え、海は痕跡を残さない様な速度で走り出し、空中で俺めがけて酸性の毒を吐き出そうとしていた蜘蛛の右足四本を全て切り落とす。

 地面に着地しようとする蜘蛛だが、足が四本無いと流石にそれは出来ない。

 俺は蜘蛛の正面から風の斬撃を浴びせようとするが、それ以上に早く、風邪の斬撃よりも威力のある空気の大砲のような一撃が蜘蛛の体がペチャンコにしてしまう。


 その際にレクターの悲鳴のような声があったという事を記載しておく。


 ジュリが驚いた表情をしており、俺と海もある意味感心したような顔をしてレクターの方を見る。


「あのレクターさんからは考えられ無い悲鳴でしたね。僕驚きました」

「まあ………虫嫌いだし。だからホテルで大人しくしておけって言ったのにさ。付いてきた以上は逃げるなよ」


 俺は釘を刺して置き、再び入れる場所を探し出した。

 流石に蜘蛛がやってきた場所から入るのは止めておくとして、少し横に元々の道の痕跡を発見。

 おそらく前に師匠と一緒に入ったのは間違いなくこの場所だろう。


 俺が先頭に順番に入っていくと、一気に周囲が薄暗くなっていく。

 太陽の光が木々の間から漏れている程度で、まだ外の方だから太陽の光が届くのであって奥へと進めば光は指してこない。


「ソラ。これ奥の方に行けば暗くなっていくんじゃ」

「まあな。でも、奥の方には光るキノコとかがあるから大丈夫だって。それでも多少は暗いから気を付けておいた方が良いな。足元は特に気を付けておけよ。木の根っこにつまずくことが」


 俺が指摘しようとした瞬間にジュリとレクターが盛大にコケ、小さな悲鳴を放っているが俺はそっと後ろを振り返ると海と共にゾッとする光景がそこにはある。

 ジュリとレクターは気が付いていなかったようだが、五メートルを超える熊のがそこにいた。

 海が二人を担いで素早くその場から離脱したのは熊が右腕を振り下ろす三秒前だった。

 本当にギリギリの行動に合わせるように俺は緑星剣を振りぬいたのだが、熊の皮膚は鋼のように堅く弾いてしまう。

 熊の左腕のふり回り攻撃を俺はしゃがみ込んで回避し、もう一度今度は体重と重力を活用した一撃を横なぎに叩き込んだ。

 端っこの方が微かに切れるのだが、その微かなダメージを当てる為の俺は両手に痺れを受けていた。

 本当に鋼の塊を切り裂こうとしているようなもので、普通の剣なら切ろうした段階で真っ二つである。


「ソラ! こいつ背中に針様なものが生えてる!」

「背中にまわるな! 多分跳び道具だ。まずは弱点を探すぞ! 虫じゃないから戦えレクター」


 レクターが黙って頷くと拳を強めに握りしめ最大まで高まった一撃を容赦なく熊の胴体を捕らえるのだが、熊はほんの数センチ下がった程度のダメージでしかなかったようだ。

 なんというか……ここの魔物って本当に厄介だな。


「ソラ。魔物って全部こんな感じなの?」

「いいや。死んだ竜の亡骸と環境に影響されて変わってくるさ。例えば幻竜の亡骸のある『幻の都市グランドアサム』は亡霊みたいな奴が多いと聞くし」


 基本魔界と呼ばれる場所はその場所の環境や死んだ竜の力が影響して変わってくる。

 ここは癒竜が死んだ場所なので魔物種類はこんな感じで屈強な竜が多い事になる。


「風の型だと勝てる気がしないな。レクターあれ以上に強力な一撃を放てるか?」

「出来るけど……溜め時間が」


 それは俺と海で稼ぐしかない。

 俺が飛永舞脚で走り出し、海も熊の体に斬撃を与えながら攻撃を掻い潜るように移動して行く。

 俺も敵の目を引き付けようと土の型を使って攻撃を仕掛け、海は熊の視界を潰そうと両目に刀を横に斬りつける。

 片目が海の一撃でつぶれてしまったが、熊はまるで気にしないまま重い一撃を加えていき、周囲の植物が熊の右腕に巻き付いて行く。


「ソラ君! 海君!」


 ジュリが魔導機で押さえているのだろうが、熊はそんなものを力だけで解決するという相手をしている方からすればいっそ清々しいまでの脳筋で解決。

 しかし、結果からすればレクターは最大の力を籠めることに成功し、俺と海が同時に視界を完全に覆いつくすほどの攻撃で埋め尽くし、レクターが地面が抉れるのではと思われるほどの一撃を叩き込んだ。

 最初こそ本当にダメージを与えているのか分からないぐらい無反応だし、何より衝撃もくそも感じなかったのだが、五秒ほどの時間差で突然吹き飛ばされそうな突風を全身で感じ、俺は急いでジュリを抱きしめる。


「時、時間差がすごいですね」

「ああ……それだけ重い一撃なんだろうが。一撃で相手を倒す事を想定された一撃の型。サクトさんはあれをレイピアで使いこなすんだよな………」


 つくづく感じる事だがやっぱりあの人たちは人間じゃない。


「それより海は俺が教えた『飛永舞脚』を扱えていたな。まだまだおぼつかない感じだが、この調子で実戦を重ねていけばお前は師匠と同じくらい扱えるようになるさ」

「そうですかね? まだ自分は実感がわかないというか。初めての実戦なのでよく分からないんです」

「皆そんなものだと思うよ、ソラ君もレクター君もそんな感じだったし。今からだよ。まずは自分が相手に勝てるようになることから始めなきゃ」


 ジュリの言葉に海は元気よく答えるが、レクターが俺の腰回りに引っ付いて雰囲気を台無しにしてしまう。


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