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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《下》
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未来を掴め 6

 ケビンはソラから話を聞いた時から航空機の事故を聞いた時から頭の中で引っかかるものを感じており、それが何なのかとずっと悩んでおり、ソラから呼び出された時からどうしてもモヤモヤしていた。

 実際彼女が昔大統領が大統領では無かった時代、ふと聞かされた事がずっと頭に残っており、当時からすればどうしてあの時あんなことを言われたのかが不思議だったが、そんな話をシャインフレアに話すと彼女は「そうですか」とどこか適当に相槌を打つだけ。

 シャインフレアと共に過ごすようになってから知ったことだが、彼女は本が大好き出ると知った。

 昨日書類越しに調べ物をしている時でさえも、半分楽しみながら読みふけっており、書類を調べる事が苦手なケビンからすれば苦行だったが、全く同じ思いをしていたとソラから聞いたら内心「書類仕事も悪くないかも」と思ってしまう。

 因みにその隣ではシャインフレアがやれやれと呆れかえっていたわけだが。


「で? 何が気になるのですが?」

「前に大統領から行方不明になった航空機の話を聞いたの」

「先ほどソラが言っていたではありませんか、航空機が事故を起こすなんて昔はよくある事だと」

「それは二十とか三十とかなら分かるけど、十年前となればそれなりにちゃんと整備していれば事故になる事は……それにあれは事故じゃ」

「? 事故でなければ何ですか?」

「行方不明? 神隠し?」


 ケビンは頭の中にある記憶を探り出しながら詳細を思い出す。


「ヨーロッパの……確かドイツで開発された当時高性能のスーパーコンピューターのプロトタイプが万博会場へと運ぶ飛行機が行方不明になったんです」

「ならどこかで事故になったのでは?」

「いいえ……移動経路をいくら探しても破片一つ見つからなかったんです。搭乗員を含めて誰も……」

「? 移動経路を大きく外れたのでは? 別段驚く事でも」

「いいえ。飛行機というのは移動経路をある程度調べることが出来るんです。確かに三十分前までは予定通りの移動経路で移動していました。事故があったと思われる範囲を一週間以上徹夜で探してもみつかりませんでした」

「それが十年前だと?」

「確か……それにあのコンピューターは」


 そう言いながら自分の部屋のパソコンを開きアメリカの書類を調べ始め、シャインフレアは暇そうに持ってきた分厚い辞書のような本を開いて読み始める。

 ケビンは「たしか…」といいながら慣れないパソコン作業をし始めるが、途端に眠くなるのは彼女の修正でもあった。

 眠気と戦いながらケビンは十年前の航空機事故の調査報告を見つけ出した。


「やっぱり航空機の残骸は見つからなかったみたい。じゃあ、その前にある航空機の完全な姿でもあれば」


 ケビンが悪戦苦闘しながら調べてみるが、調べるのに時間がかかり過ぎている事に呆れたシャインフレアがそっと手伝う。

 そして調べた結果出てきた航空機の姿とソラが見つけてきた航空機の残骸の写真を向こうの調査機関に調べてもらった結果、送られてきた書類に目を通すケビン。


「やっぱり。航空機はこっちの世界に移転してしまった。でも……竜の咆哮でもないと開かないのに」


 少なくとも西暦世界側からでは当時存在していたはずの「呪詛の鐘」でもない限り無理だが、あれは日本政府が持っていたはずで、少なくとも海外では存在しなかったはず。

 もしあったのならアメリカ政府が黙っていなかったはずだ。


「竜に似た強い力を放つ咆哮でなら開くかもしれませんね。例えば竜結晶を体内に入れてある人間の咆哮とか……」

「!? 要するにサブジェクト・レクイエムの実験体なら出来ると?」

「恐らくですが。無論一人二人では無理だと思いますが、それが何十人規模なら可能でしょうね」

「サブジェクト・レクイエム中に戦闘実験が行われており、その際に興奮状態だったサブジェクト達。そんな彼らが叫んだりしていると空間が乱れると?」

「小さな波紋が空間を振動し、それが連鎖的に引き起こされると空間が開くことが極まれに、元々それ故に竜達は同じ場所で複数の竜の子供を育てません。それは竜の子供が複数体いる場合竜の声が波紋として空間を振動するからです。ある程度育てば制御は可能ですが、子供は無理ですからね」

「じゃあ、それと同じことが……それならこの転移にも説明が……でも、だからってこの一件が何の役に立つのか」

「あなたが言っていたじゃないですか。スーパーコンピューターを運んでいたのでしょう? それが悪用されたというのは?」


 ケビンは少し考えながら出展予定だったスーパーコンピューターをしらべてみたが、たしかに当時高性能ではあるが、これ一つで問題視されるとは思えなかった。


「そういえばあなたが前に言っていましたが、二本での戦いの際にいたヴァースという機械の女性がドイツ出身だと言っていませんでしたか?」

「ええ、あれはあの後調べて………もしかして」


 ケビンは出展内容をもう少し詳しく調べていると、そこに気になる項目を見つけ出した。


「AI展示………要するに人工頭脳の開発を当時のドイツは進めていたんですね。それも一緒にこちら側に飛ばされたとしたら……」

「一緒に回収された可能性はあるでしょうね。それもスーパーコンピューター付きで改修され、それが研究都市の研究対象になればどうなるかなんて嫌でも想像できますよ」


 研究都市はサブジェクト・レクイエム終了後だったに違いないと考えた。

 少し考えこんだシャインフレアがゆっくりと口を開いた。


「これは私の予想です。サブジェクト・レクイエムなる計画を進めていた研究都市の上層部、しかし研究成果はあまり芳しくないものだったのでしょう。それこそ共和国に報告を入れるようなことではなかった。研究都市としてはこれ以上に方法が思いつかなかったうえ、試している時間も無い。そんな時高性能でかつある程度の演算ができる機械を手に入れた。幸いにそれをある程度操作できるAI付きで。あなたならどうしますか?」

「……使います。だってその方が成功確率が上がるはずですから」

「そうでしょうね。私が同じ立場なら同じことをします。そこで質問ですまだ生まれたばかりのAIに計画を進めるよう命令した場合どうなりますか?」


 ケビンは少し考えてみた。

 もし自分がAIの立場だったらと考えだす。

 計画の全容を知り、素体の情報を知った場合効率のいい方法を演算し始めそれを実行するだろうと。


「先ほども言いましたよね? 竜の魔導を育てるにはストレスを当てるのだと。そして、サブジェクト・レクイエムの実験ではそれを模した」

「ですが失敗したんですよね? 適合自体は出来たけど……」

「そうですね。ストレス何て一朝一夕でどうにかなる話じゃありません」

「だから十年待ったのでしょう? 十年もあれば下準備が出来ると踏んだ。あくまでも確実にかつ果然に完成させることを優先したのでしょう。最もこの十年というのはかなり短縮されたのだと予想しますけどね」

「どういう意味?」

「この世界は二つの世界が繋がったことで新しい秩序が生まれている状態です。それが無い場合研究都市の技術はありえましたか?」


 無かったと断言出来た。

 この高い技術力はあくまでも二つの世界が繋がった事で完成された。


「だから計画を早めることで出来たのでしょう。この場合機械にとって人命など優先すべきことではないのだと思いますよ。そもそも研究都市の人間はあまり人道的という言葉は薄いようですし。その素養を受け継いだコンピューターですからね」


 ケビンはこの街の水面下で起きている出来事に誰よりも早く気が付いた。


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