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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《下》
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未来を掴め 2

 俺は師匠たちにCSEと名乗る存在を告げてみたが、物凄い頭のおかしい奴みたいな顔で返されたが、その中でジュリとレインちゃんだけが信じてくれたのが唯一の救いだった。

 しかし、どれだけ告げてもあの出来事の結果俺はジュリとレインちゃんを救う事が出来たのは事実で、これにはこれ以上の説明なんて出来そうにない。


「だから…! 本当なんだって。そいつにジュリ達が襲われる事を教えてくれて、今回の事件だけ協力してくれるって!」


 まるで信頼が得られない状況で俺が困り果てていると師匠が突然熱々のコーヒーの入ったコップを持ち上げる。

 何をするのかと俺は小言で『CSE起動』と呟くと、俺の頭の中に師匠が何の疑いも無く、そして一分の隙も無く、その上予告なく部屋に入ろうとしている父さんに投げつけようとする。

 この人真顔で惨酷な事を無関係な人間に出来るなと感心しつつ、俺はドア越しにいる父さんに「ガーランドがコーヒーを投げようとしている」と告げる。

 しかし、途端に師匠はコーヒーのターゲットをおれへと変更したので、俺は素早く動き師匠の腕をつかむ。

 とたん父さんがドアを半壊させながら這入ってくるビジョンが浮かんだ。

 しかし、もう遅いと判断し師匠に「父さんがドアを破壊する」と告げると全くその通りにドアを豪快に破壊して入ってくる。


「何事だ!?」

「どれだけ言い訳しようとお前がドアを破壊したことは許さんからな」


 俺はそっと腕を離すと師匠が俺の背中目掛けてコーヒーを投げるのが見えたので俺は体を横にそっと移動させるだけで回避した。


「なるほど……お前には未来が見えているようだな」


 ようやく俺が未来が見えていると判断してくれたが、CSEについては未だに信用してくれない。

 俺はいっその事本人に説明して欲しい所だが、どうやって説明させるのだと内心悩ませる。

 声を出して頼み込めばいいのだろうか?


「お前が呼び出せ」


 また無慈悲な命令を下す師匠に対し俺は「簡単に意思疎通が出来たら苦労しない」とだけ言っておいた。

 無論さっきから弾の中で何度も出てきてほしいと告げているが、まるで反応が無いのだ。

 声に出してしまえばいいのか?


「出てきてくれないか? 話があるんだ」


 無反応かと思われたが以外にも空中に淡い光が現れると俺達全員の頭の中に声が響き渡る。

 無論途端にレインちゃんがジュリの後ろに隠れ、ジュリも少しだけ怯えた様子を見せるが流石に経験を積んでいるだけの事はあり、直ぐに場に対応して見せた。


「反応してくれないと思った」

『反応すべきと判断。その方が今後の未来誘導が簡単と推測』


 相も変わらず分かり難い喋り方をしているが最初の時よりましなので無視。

 師匠たちですら唖然とする存在。


『我は因果律監視機関。今回の事件のみ介入を許可した。現在の状況は本来であれば今の時間では起こりえないイレギュラー。解決には介入が必須と推測』

「要するにお前は未来を観測する者という事か?」

『似て異なる。あくまでも監視が我の使命』


 師匠が口元に手を当てて考え事をしている。


「では、何故今回に限って介入した? その理由はなんだ?」

『……我は契約を行っている身。その契約主の一族に危機が迫ろうとしている。その危機は本来であれば起こらなかった出来事。それ故に我の介入が必須』

「起こらなかったとは? 具体的には?」

『それ以上の介入は必要がないと判断。既に答えの一片を得ている。あくまでも我が介入するのは未来を見る力のみ』

「答えも提示しない。解決策も提示しないのか? 少々解決というには協力が少なすぎないか? 既に我々で解決できるかどうかの範疇を超えていると思うが?」


 上手く情報を引きずり出そうとしている。


『必要ない。あくまでも人間が引き起こした問題は人間のみで解決する必要がある』

「では人間が滅んでもそれはそれで良いはずだ。なのにお前は『ある一族』の存亡にかかわり、それを回避しようとしている。これは監視という役割から逸脱している」

『していない。これは契約。一族と『ある者』との間に交わされた約束である。その約束が果たされるまで、その結果次第では我は介入を続ける』


 約束という内容に少しだけ気にはなったが、たぶん聞いても教えてくれないので黙っていることにした。

 ていうか師匠とCSEの会話劇になっているので全員が黙っている。


「約束については問わない。しかし、なら……契約した一族だけでも押してくれないか」

『―――――家ろ―――――家である』


 やはり聞こえない。

 俺達に問題があるのかもしれない。


「聞こえんぞ」

『それはある者が関係していると推測』


 ここでも登場するのか……ある者。

 いったい誰なのだろう?

 師匠が「一体誰だ?」と尋ねるとあっさりと答えてくれた。


『人間が『災い』と呼ぶ存在。その名は………不死皇帝』



 不死皇帝。

 その名をここで聞くことになるとは思わなかった。


 千年以上前に現れたとされる竜達が最も恐れたほどの人物だが、その実態は全てが謎になっている人物。

 何故不死皇帝と呼ばれていたのか、それすら竜達は語りたがらないが、どうもその辺の理由が不死皇帝が『災い』と呼ばれている理由な気がしてくる。

 結局の所でCSEはそれ以上語ろうとは思わなかったらしく、さっさと姿を消してしまった。

 師匠が終始苛立っていたので俺達は素早くその場から離脱することで逃げ出す。

 すっかり夜も老けていきすっかり星の綺麗な星空が光り輝いているように見える。


 何か難しい話になっているような気がするが、不死皇帝に関しては関係ないと思うので一旦無視。

 レインちゃんをホテルまで連れていく必要がると考えているとガイノス帝国の施設前にギルフォードとケビンが歩いて現れた。


「レイン。迎えに来たぞ」

「お兄ちゃん!」


 駆け寄っていくレインちゃんを黙って見守っているとケビンが逆に近づいてくる。


「そちらの調査はどうでした?」


 そう聞かれるのだが俺は師匠たちに言った報告をそのままケビンとギルフォードにしておき、俺はその報告の中に先ほどの襲撃を意図的に外した。

 その報告をすれば面倒な人間が騒ぎかねないと判断したからだ。


「航空機……十年前………まさか」


 ケビンが俺の報告を聞いて何か心当たりがあったような顔へと変貌する。


「少し心当たりがあるのですが明日まで待ってもらえませんか? たしか昔見た資料の中にそれっぽい内容があった気がして」

「別にいいよ。師匠今日は機嫌が悪いから俺達はこのまま退散しようと思っていた所だし。急いで解決してもいいこと無いしな。今の所俺達が襲撃されたという事以外に問題は起きていないしな」


 ギルフォードが「俺達?」と気になった部分を呟き、俺は内心「ヤバ」と思ったがギルフォードは過ぎに気にしないことにしたらしい。


「何か心当たりがあるんですか?」


 ジュリ問いにケビンは考え込みながら頷いた。


「前に確かドイツ辺りで開発された『ある機械』が輸送中に航空機ごと行方不明になったという事件を聞いた気がして」

「? 西暦世界ではそこまで珍しい事件でもなくないか? そりゃあ航空機の事故なんて昔に比べたら多少はましかもしれないけど」

「そうなんですが。この事件確か……航空機の残骸が見つから無かったと聞いたんです。それに確かアレは積み荷が……特殊だったと」


 ブツブツ呟くケビン。

 どうしたのかと尋ねてもケビンは「いいえ。なんでも」と答えるだけ、それ以上聞いても教えてくれない。


 もしかしてあの航空機の残骸が見つかったとかいう事件、俺達が思う以上に重要な事件なのか?


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