研究都市の闇を暴け 4
この機械兵器が一体何なのか、俺が屋上に上がったことでセキュリティに引っ掛かったのか、それとも屋上に上がって欲しくないと感じたからこその手段だったのか。
ならもう少し穏便な手段があったはずだし、それを取らなかったという事は排除目的で人のいない場所に俺はおびき寄せたと言った所なのだろうが、俺としては人がいない方が気楽に戦えるので良いとして、目的がイマイチパッとしない。
四つ足の機会兵器、顔がピエロのように見え長い脚は足の足りない蜘蛛のように見えるが、それ以上にカタカタと音を立てる様は気持ちが悪い。
俺は緑星剣と星屑の鎧を一旦召喚し臨戦態勢を作る。
この辺一帯は多少派手に戦っても問題は起きないだろうという判断を咄嗟に下し、被害がこのビルの屋上から出ないように心掛ける。
かなり広い屋上だが、多少の高低差がある場所なので立ち回りに気を付ける必要があるだろう。
緑星剣の剣先を真直ぐ機会兵器に向け、腰は多少低めに構えて全身の神経を尖らせながら警戒体勢を造る。
まずは相手の出方を見る必要があるし、何よりこっちから仕掛けるのは流石に危なすぎるだろう。
何より敵がこの街から放たれた刺客なら間違いなく大会中のデータは反映したはずだ。
ならここで『太陽の鏡』を使用したくない。
この後の事を考えれば温存しておきたい所だし、『ラウンズ』や『刺殺の束』も出来る限り温存。
大会中に使った技を使いこなして戦うしかない。
重撃移動術である『飛永舞脚』でいつでも高速移動できるようにして置き、敵の四肢にまずは注目する。
長い脚がそのまま移動手段であるとは思えないので、おそらくこれがメインウエポンだと判断してまずは動く。
無論敵の動き一つ一つに神経を尖らせると、敵の右前足がふと持ち上がるが、敵全体に常に目を向けておく。視界には常に敵全体を捉える。
するとエコーロケーションで敵の後方に動きを捉え、俺は右前足から来る振り下ろし攻撃を冷静にバックステップのみで回避し、後方からやってくるワイヤーが俺めがけて突っ込んで来たのが見えた。
俺はワイヤーの先端が槍のように尖ているのが見え、その攻撃を緑星剣で弾き一気に地面を蹴って距離を詰める。
すると俺からの突撃攻撃を阻止しようと後方から複数のワイヤー攻撃が上から襲い掛かってくる。
こんな攻撃を一個一個阻止して回っていたらきりがないので、基本避けて回っていると、ワイヤーがワイヤーにぶつかって軌道が変わってくる。
変則的な動きをするワイヤーに四つの足から繰り出される攻撃に翻弄されそうになるが、俺は頭の中を常に冷静な状態を維持しつつ敵の攻撃を捌きながら距離感を詰めようとする。
しかし、攻撃が激しすぎてまるで話にならないし、ワイヤーを切り裂こうとしても別のワイヤーが邪魔をしてきて攻撃に転じられない。
こうなれば竜撃を使うしかない。
竜撃風の型……風見鶏を繰り出すと、風の刃は一本のワイヤーを切り裂いてしまう。
俺は内心ガッツポーズを決めるが、敵は素早く対抗先を講じたのかワイヤーを収納し別の武器に変更した。
簡単に言えばワイヤーからミサイル武器。
なるほど……あれは風で切り裂くには少しばかり難しいな。
出来ないわけじゃないけどさ。
風の遠距離斬撃能力は飛ばせば飛ばすほどに拡散しやすくなるし、ミサイルを切り裂くには至近距離まで近づく必要がある。
て言うか……いよいよ誤魔化す事をしなくなってきたな。
ミサイルがこの辺で爆発したら流石にバレる可能性が高いのだが、と考えている間に俺の近くにミサイルが三発近づいてくる。
ミサイルの大きさこそ小さく缶詰程度の大きさしかないが、ミサイルの爆発によって視界がふさがれるし、何より敵の攻撃のパターンを絞りづらくなってしまう。
俺はミサイルをなるべく切り裂いて視界を開いていき、今度はつがいの風を使って敵の右前足の関節部目掛けて飛ばす。
敵は関節へと向かう斬撃を回避する為に移動するが、俺はその移動上に今度は風を圧縮した風の斬撃『風見鶏』を向ける。
右前足が吹っ飛ぶと敵は動きが一気に悪くなる。
ここは一気に攻める時だと飛んでくるミサイルを二つ切り裂き、一旦バックステップで距離を取り飛永舞脚の準備に入る。
同時に緑星剣に風の斬撃を纏わせ、一気に走り出す。
ミサイル攻撃を回転斬りで切り裂き、足により攻撃を体の捻りのみで回避しつつ左前足を切り裂きつつ再びバックステップで距離を取る。
素早く左右に動きミサイルが今度は十本ほど射出すると、これを市街地に落とさせるわけにはいかない俺は一気に空中に跳躍する。
ミサイルを足場にしつつミサイルを体の捻りと共に繰り出す連続斬撃攻撃『風見鶏【演武】』で全て叩き落す。
そのまま空中で一回転しそのまま敵の頭上で全関節目掛けて全力の攻撃を叩き込む。
「竜撃風の型! つがいの風【飛永演武】」
素早く敵の体をバラバラにしてしまう。
うまく着地しつつエコーロケーションで周囲に被害が向かっていないことを確かめつつ敵の機体の一番熱量が籠っている場所を剣で切り裂いてしまう。
そこまで戦って俺はパーフェクトソルジャーの後に現れた無の出現に疑問を抱いた。
「研究都市はパーフェクトソルジャーの存在に気が付いていながら、無が現れる可能性を何故無視しなかった?」
無が現れると分かっていたのなら、どうしてそれを阻止しないで放置したんだ?
賢者の石は永遠のエネルギーを持っており、それを造る事が出来る錬金術師が滅んでしまったのも元をただせば無が全てを滅ぼしたからだ。
そうなる可能性を知らなかったわけじゃないだろうし、知っていて放置していた理由はなんだ?
もしかして……最悪この街が滅んでも結果から見れば自分達の計画を進められると判断した為だろうか?
今思えば俺達とパーフェクトソルジャーが争う事自体はまるで意に返していなかった風だったし、最悪研究都市が吹っ飛んでも構わないのだろうか?
「う~ん。なんか追えば追うほどに疑問が増えていくような気がする。無が現れた時と言い……こう人間を理解しきれていない気がするな」
いっその事この街の全てが機械によって管理されていると言われてしまえば信用してしまいそうだ。
しかし、そんな事を判断できるほど判断材料があるわけじゃない。
「計画の進行を優先して、それ以外はどうでもいいと判断したのか、はたまた別の策が存在しておりだから無視をしたのか」
無と呼ばれているあの現象は簡単に処理できるものではなかった。
俺達五人がかりでどうにか追い返したのに、この街が簡単に処理できたのならもっと早くに動いただろうに。
そんな俺達すら処理するのに死を覚悟するレベルなのに、まあ試合会場は少し離れた場所にあったし、最悪下にある研究室が無事なのかもしれないが。
そう思った時俺は俺はこの街の造りに違和感を感じてふともっと高い場所へと走って移動する。
壁を昇っていき、一番高い建物を上から見下ろす。
東西南北に広がった街だが、よく見るとこの街に多様な造りの場所が多すぎる。
大きな通りも東西南北にまず広がっており、そこから決まった距離で通りが伸びていて、中には全く同じタイプのビルが距離を大きく開けて見えてくる。
「この街………人間が作ったわけじゃないぞ。人間が作ったらこんな造りにならない。全く同じビル。全くそのままコピーしたような建物や道路。気持ちが悪い。機能性を重要視したんだろうが……その分人間が住んでいるという感覚を薄めようとする逆の努力が見えてしまう。何なんだ? この街……」